「SITOM」 技術を起点に広がるブランドの挑戦《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》

精巧が手がける「SITOM」(シトム)は、プリント加工のカットソーを中心とするユニセックスブランドです。グラフィックデザイナーやイラストレーターと協業する絵柄をはじめ、大胆な全面柄や素材の特性を生かした表現によって視覚的なインパクトを出しています。
危機感が背景に
26春夏から本格的にコレクションを始めました。自社のプリントと縫製の技術を強みに、デザインプロダクトとして提案しています。合同展で卸先を開拓し、セレクトショップ、百貨店、美容室などでの期間限定店を通じて販路を広げています。

立ち上げた背景には、OEM(相手先ブランドによる生産)事業の先行きへの不安と精巧のリソースを活用した異業種への販路拡大がありました。
50年の創業からカットソーの縫製とOEMを主軸としてきましたが、「市場環境が激しく変化していくなかで会社として何をすべきか」という約1年にわたる議論で浮上したのが、プリントを軸とした新規事業でした。
転機は、生地にプリントを施す環境配慮型のコーニットの大型プリンターの導入です。補助金を活用して工場の改装から取り組み、24年11月に「DS-CYCLE」(デジタルシームレスサイクル)として特許取得しました。この設備と特許で可能になった表現や工程を事業として展開していく一貫として、自社ブランドのシトムを立ち上げました。

開発が得意な会社
異業種の開拓を目指してプリントとデジタルシームレスサイクルを活用した物作りで東京ギフトショーに出展し、推し活グッズの事業者との製品化にも取り組むようになりました。伝わりにくい特許の内容やプリントの可能性と自社の技術を、製品やパターンプリントとして提示することで、取引先や顧客との接点が広がっています。
これまではテキスタイルデザイナー、パタンナーを中心とした社内体制でシトムの企画を進めてきました。ただ、アイテム単体では成立しても、コーディネートやブランド全体の提案力に課題があると感じ、今春からファッションデザイナーを起用します。
「事業はやればやるほど課題が見つかる。それを乗り越えるためにどうするかを考えることで次に進めるきかっけになる」と取締役の近江祥子さん。アメリカやアジアを中心とした海外販売も視野に入れ、より認知を拡大し、売り上げを伸ばす体制にも力を入れます。国内の工場が自らの技術をどのように可視化し、市場に接続していくか。その一つのあり方として、既存事業との相乗効果を生みながら、ブランドとして、企業としてどのように発展していくのか、今後の展開にも注目したいです。
■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、新規事業開発の現場と経営に携わる。14年に独立しベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドを中心に、ブランディングと事業推進を軸とした支援を行い、デジタルやデザイン領域まで横断的に手がけている。
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