裏アカはなぜ人を惹きつける? 脚本家・寺田御子が語るドラマ「裏アカ教師」と次なる挑戦

2025.09.05 17:55
提供:anna

深夜のタテ型ショートドラマ枠『ドラマのシュララ』(読売テレビ)に登場する『#裏アカ教師』。“なりすまし”の裏アカを開設した女性の狂気を描いた原作と、ドラマ版の脚本も担当している寺田御子さんに、“裏アカ”を題材にした理由や、ドラマ版の魅力、さらに次回作の展望まで、たっぷりとお聞きしました。

( Index )

味わい深い、裏アカの世界 裏アカ×教師 相反する存在の掛け合わせ 自分を愛せるようになっていく過程は人それぞれ 次回作は“裏アカ男子”にフォーカス!?

寺田御子さん

1992年生まれ。岐阜県出身。2014年より俳優・タレントとして活動を開始。シナリオ作家協会と映画美学校で脚本を学び、2021年に配信ドラマで脚本家デビュー。好きなジャンルはファムファタール。

味わい深い、裏アカの世界

本作の出発点は、どんな発想からですか?

『#裏アカ教師』は漫画原作から作らせていただいているのですが、漫画の新企画打合せの際に「何か描きたいものはありますか?」とお話をいただき、私が今面白いと思っているものをいくつか上げた中に「裏アカ」があったんです。「裏アカ」には欲望が渦巻いていて、利用しているつもりが、振り回されるようなストーリーにしましょうという話に。それが創作の起点だった気がします。

裏アカに興味を持った理由は?

『漫画のシュララ』では、エッジの効いたストーリーが多いので、どうしたら新しいものが作れるのかを考えていました。私は普段から、現代的な職業をたくさんチェックするようにしていて、裏アカ女子という存在がすごく気になっていたんです。そんな職業があるのか! と知って、時代の隙間に現れる職業で、すごくおもしろいなと思いました。きっとSNSがここまで流行らなければ生まれなかった職業だと思いますし、アカウントを使って稼ぐというのも、すごく現代的だなと驚きました。何万人もフォロワーがいる方もたくさんいらっしゃいますよね。もしかしたら、裏の界隈ではアイドルや芸能人よりも有名な人がいるという現象が起きている気がします。

どうやって裏アカの世界を探ったのですか?

実際に自分で裏アカを作って、たくさんの裏アカをフォローしました。皆さんをウォッチングしつつ、友達や知り合いを通じて裏アカ男子・女子の方、それぞれとお会いしてお話して……、というのを何回か繰り返しました。私の場合はアカウントを知るよりも、先にご本人とお会いしたのですが、ご本人はとてもしっかりされた方なのに、裏アカではすごくぶっ飛んだ方で(笑)。中には浪人で失敗しちゃってどうしようかなと思っている時に、裏アカという存在を見つけたという方も。皆さん、いろいろな人生があって裏アカにたどり着いていることを知りました。そういう1人1人の人生も込みで考えると、味わい深さがあるなと感じましたね。お父さんお母さんにはまだ言ってなくて、いつカミングアウトしようか、そういう悩みも抱えていらっしゃる方もいましたね。

裏アカ×教師 相反する存在の掛け合わせ

裏アカと教師という職業をくっつけた理由は?

これまでも不倫モノを書いた時に感じていたことなのですが、やっぱり相反するものをくっつけるのがおもしろいと思っているんです。今回でいえば、裏アカというちょっとタブー視されている業界と、そういう場所に関わってこなかったであろう正反対の職業である教師を掛け合わせたら、きっとおもしろいんじゃないかなと思ったんですよね。

特に、密先生はすごく真面目な人生を送ってきた教師。裏アカ作成の疑惑をかけられてしまうのは、生徒たちに対するショックも大きいなと感じました。

唯一のまともなキャラクターですからね(笑)。ドラマ版で密先生を演じてくださっている水沢エレナさんを見ていると、心が痛くて…...。こんなことをしてしまった……と、祈ちゃんのような気持ちで罪悪感を抱いていました。

それぞれのキャラクターに、寺田さんご自身の要素がちりばめられている?

そうなんですよ。母がドラマを見てくれたんですけど、密先生と祈ちゃんとアリス、この3人ともあなたがいるって言われたんです。確かに、祈ちゃんのような極端な愛を持っている側面があると思いますし、密先生みたいに完璧な自分を見せなくちゃという部分もあると思うし。アリスみたいに周囲をかき回しておもしろがるところも少なからずあると思っています(笑)。

全員に感情移入しながら物語を作っていたので、各キャラとも自分の分身みたいな感覚なんです。インスタグラムで祈ちゃんのことを「とんでもない悪だ」とか「とんでもない女だ」というコメントを見ると、自分が攻撃されているような気持ちになってしまって。とんでもないことをしているんだと、客観視できるいい機会になりました(笑)。

ドラマ化され、役者が演じると、原作とは別の魅力が生まれると思います。ドラマ版を見て、原作者として感じたことは?

キャストの皆さん全員が本当にぴったりで! ショートドラマは表情の揺れが印象的だと思うんですけど、中村ゆりかさんのゾクゾクさせる表情が特に素晴らしくて。毎話おののいて見ていました。

例えば、密さんに「私はあなた。一度お会いしましょう」って送ったとき。私はなんとなくニタ〜と笑う姿を想像していたんですけど、中村さんはすごく無邪気な表情で笑っていらして。むしろそのほうが怖いんだなということに気付かされました。この無邪気さこそが彼女の愛なんだなと、ハッとさせられるシーンが多くて、私も一視聴者として楽しく見させていただきました。

自分を愛せるようになっていく過程は人それぞれ

祈は、裏アカのフォロワーが増えてきたタイミングで承認欲求が生まれてきます。彼女の変化を描く際に意識したことは?

祈ちゃんは元々すごく自己肯定感が低い子なので、憧れの人と自分が同一になることで自分を愛せるようになるんです。最終的に密になっていく過程は、彼女が自分を愛せるようになっていく過程だと思っていて。もちろん間違った方法ではあるんですけれど、そうやって自己を獲得していく祈ちゃんを描けたらいいなと意識しました。

寺田さん自身も「こういう自分になりたい」と思って努力したり、憧れの存在を目指した経験が?

私はものすごく自己肯定感が低くてメンタルが弱いので、「楽観は意思」をモットーにして頑張っているんです。すごく弱い人間だけど、何でも楽観視しようと思ってます(笑)。

自分を認めてあげる方法を教えてほしいです。

もう一人の自分と会話します。それも脳内ではなく、普通に口に出してしゃべっています。一人暮らしの部屋なのにずっとしゃべっているので、隣の人は恐怖を感じているかもしれませんが(笑)。ちょっと二重人格に近いのかもしれないですけど、「大丈夫、大丈夫」って言い聞かせています。ヘコむと、もう一人の自分が出てきて励ましてくれるんです。ある意味、honey先生的な存在になってますね。2人で会話することによって、なんとかバランスを取っています(笑)。

SNSでは、キラキラした世界ばかりが見えてしまい、祈の「憧れの人になりたい」に共感する人もきっと多いのでは?

そう思ってくれる人がいたら、私はすごくうれしいです。自分に似た人を作品の中で見ることが癒やしになると思うんです。間違った一例かもしれないですけど、こういうふうにしか愛せない、生きられない人もいるよねって思えることは癒やしになるんじゃないかなと思っています。どうしたらよかったのかなと一緒に考えることは、そういう自分と向き合えるきっかけになると思っています。

祈が立ち止まろうとするたびに、アリス先生の悪魔のささやきによって背中を押される展開も見どころです。

アリス先生はドラマのオリジナルキャラクターなんですけど、不思議の国のアリスのウサギのイメージで作ったんです。普通の女の子を異世界に誘う存在のようなイメージで描きました。

それは寺田さんの提案ですか?

漫画版はシリーズだったので、シリーズに続けて登場する人物がいたんですけど、お話が単体のドラマになった時、その人の代わりとなる人物をどう登場させるかを考えました。そこからドラマのオリジナルキャラクターが生まれ、監督やプロデューサーとお話をして、アリス先生の人物像を作りました。

私はウサギのつもりでしたが、監督は(「笑ゥせぇるすまん」の)喪黒福造みたいだっておっしゃってましたけど(笑)。そういうキャラクターが入ることで、物語におけるいいスパイスになったんじゃないかなと思いました。演じてくださった高田里穂さんもとてもぴったりで!

次回作は“裏アカ男子”にフォーカス!?

裏アカに続いて、寺田さんが今注目しているトピックは?

裏アカシリーズはもっといろいろ書けるんじゃないかと思っているんです。裏アカ男子も書いてみたいなと思ったり。最近、夫が裏アカをしていたというポストをXで見かけて。SNS上だけでなく、私の知り合いでも新婚で夫が裏アカをしていたという話を聞いて、すごく怒りに震えたんですよね。これはなんとしても自分が成仏させなきゃ!と思ってます(笑)。彼女のかたきを討つためにも、物語にしなきゃという強い意志を持っています。

作品にして女性たちの仇を討つ、ですね。

友人は証拠が足りなくて最終的には泣き寝入りみたいになってしまって……。これは私が制裁を与えなきゃと、すごい使命感を抱いてます(笑)。

結構いるみたいなので「あなたの婚約者や夫は、大丈夫ですか?」と警鐘を鳴らすためにも物語を作りたいですね。どうやって発覚したのか、発覚した後はどうすればいいのか、そういうことを伝える場所にできたらと思います。友人も初手を間違えたと言っていて、証拠を集める前にアカウントもポストも消されちゃったみたいで。「こう追い詰めろ!」みたいな感じで、不倫撲滅にかかろうと思っています。

こういうジャンルを書いていると、「実は不倫されている」みたいな相談を身内からされることも増えまして、なんとか私が成仏させねばと思うんです(笑)。そういう実体験も込みで、今後も書かせていただけたらなと。これを見てハッとして思いとどまる人が増えてほしいですし、自分のパートナーは大丈夫かなって、対処するきっかけにもなれたらなと思います。大きな野望が生まれました!(笑)

まずは『#裏アカ教師』をたくさんの方に見てほしいですね。

本作は、少し変わったラブストーリーだと思っています。手に入らない人に対して、自分はどうするのかという選択を迫られるお話なので、自分だったらどうするかという目線でドキドキしてもらえたらいいなと思います。

原作でもドラマでも、どっちから先に見ても楽しんでいただけると思います! ドラマで作品を知ってくれた方は、ドラマを見た後に漫画を見ていただいたら「こんなに再現度が高いんだ」ってびっくりされるシーンもあるはず。原作と見比べて、よりおもしろさを感じていただけると思います。

和やかな空気の中で原作者の寺田さんから語られた制作のウラ側には、ハッとさせられることばかりでした。

写真/しばたみのり

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