

“とんちんかん”と言われた少女が教えてくれた、SNS時代の「許す」の難しさ【僕達はまだその星の校則を知らない#4】
※本コラムは『僕達はまだその星の校則を知らない』第4話までのネタバレを含みます。
■“とんちんかん”と言われた少女の心の傷
第4話で、健治(磯村勇斗)が向き合うことになったのは、“個人情報漏えい”。副校長の三宅(坂井真紀)が、1年梅組の期末テストの点数や学習評価メモを誤って生徒全員が見られる共有フォルダに入れてしまったことから、騒動が巻き起こります。
なかでも、大きなショックを受けたのは、江見(月島琉衣)。彼女は、自分の成績が最下位だと周囲に知られただけでなく、学習評価メモに“熱心だがとんちんかんな面あり”と書かれていたことに深く動揺し、「世界中の人がみんなわたしに“とんちんかん”と言っている気がする」とネガティブスパラルに陥ってしまいました。
副校長に悪気がなかったのは、分かっています。個人情報の扱いは厳重にしなければいけないものだけれど、誤って共有フォルダに入れてしまう……というのは、誰にでも起こりうるミスです。しかし、たったひとつの失敗で、それまで築いてきた信頼が一気に崩れ、“叩いてもいい存在”として扱われてしまう——そんな風潮が、今の世の中にはあるように感じます。
今回は校内の問題として解決されましたが、もしもこれがニュースなどで報じられ、SNSなどの匿名空間に広がったら、「責任を取れ」「辞めるべきだ」といった過剰な言葉が飛び交っていたと思います。副校長の功績も、生徒がどれだけ彼女を慕っているかも知らない人たちが、たったひとつの情報を切り取り、それが“その人のすべて”であるかのように断罪をする。今の世の中には、それを“正義”だと勘違いしている人があまりにも多すぎます。
■“正義”という名の集団リンチで、許す権利まで奪われてしまう
たとえば、芸能人の不倫報道が出た時——。
直接関係のない人たちが、あたかも当事者かのように「最低」「テレビに出るな」「子どもが可哀想」など攻撃的なコメントを書き連ねていきますよね。もちろん、大前提として不倫はいけないこと。でも、それを“正義”という名のもとに寄ってたかって叩くのは、また別の話なんじゃないかな? と思うんです。
怒る権利があるのは、実際に被害を受けた人だけ。部外者が叩けば叩くほど、本来その人にあるはずの“許すかどうかを選べる権利”が奪われていく気がしませんか? 本当は心のなかでは許したいと思っていても、「このまま許したら、おかしいと思われるのかな?」とまわりの空気に押されてしまう。これは、被害者の心の自由を奪ってしまうことにもなりかねません。
今回、副校長が責任を取って自主退職をすることを聞いた江見は、「副校長先生がそんなことで辞めるなんて」「わたし、傷ついてないです」と副校長を“許す”選択をしました。たしかに、傷つきはしたけれど、彼女はそれ以上に副校長に対しての想いがあったのだと思います。
すると、最初は怒っていた江見の母も、「副校長を解雇することには、我が家は反対いたします」「腹も立ちましたけど、たった一度のミスで人生を狂わせようとまでは思いません」と娘の心に寄り添いました。
ただ、もしも今回の出来事がSNSで広まっていたら、2人はまた違った決断をしたんじゃないかな? と思ってしまいます。たとえ、被害者が本心で許していたとしても、「本当はしんどいんじゃないの?」「どうせ、丸め込まれたんでしょ」「ってか、そもそもこんなことされて許せるってやばくない?」といった声が飛び交い、「許すのがおかしいの?」とどんどん追い詰められていく。“被害者の正しさ”までを外野が決めようとする社会は、やっぱりどこか息苦しいです。
■部外者が“ムムス”を感じても、当事者が納得できるならそれでいい
だからこそ、第4話を通して、当事者間で解決することの大切さを再確認しました。ほかの声が入らなければ、許すにしろ許さないにしろ、自分の気持ちに正直になれる。また、案外その方があっさり解決することだってあるんです。部外者が介入しない方が、副校長の想いも伝わりやすいし、江見の心の傷も深くならずにすんだ。
ただ、正直なところ、今回の“個人情報漏えい”がニュースで報じられていたら、「副校長、クソ野郎なんだろうな〜」「許したとか、絶対嘘じゃん」と思っていたかもしれません。でも、詳しい事情を知ることで、見え方はまったく変わってきます。副校長先生は生徒想いのいい人だし、江見も“仕方なく”で彼女を許したわけではない。
また、「わたしにとって、とんちんかんは決して悪い意味ではないの。言っていることや、やっていることが人と違って面白い感性があるなって」という副校長の言い訳(?)に、わたしは“ムムス”を感じたけれど、当の本人である江見が「なるほど」と納得できているんだったら、それはそれでいいんですよね。
当然のことながら、部外者がすべてを知ることはできません。まずは、その前提をしっかりと認識すること。被害者を守るつもりで刃のような言葉を投げつける人もいるけれど、“静観”というのもひとつの優しさだと思うのです。何も言わず、ただそっと「頑張れ」と心のなかで願う。それが、誰かの心の自由を守ることにもつながるのだから。
■いよいよ、夏休みのスタート!
夏休み中にメンテナンスのため天文ドームが閉鎖されることになり、今年の天文部の夏合宿は中止……かと思われましたが、江見が「健治の家で合宿をできないか?」と提案。高瀬(のせりん)が言っていたように、この夏と同じ星空は二度と見られない! 生徒たちはもちろん、健治にとっても“良き夏”となることを心から願っています。
(菜本かな)
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