失恋はいじめ? 「法律」と「現場」の狭間で揺れる教員たちの苦労がリアルすぎる【僕達はまだその星の校則を知らない#2】

失恋はいじめ? 「法律」と「現場」の狭間で揺れる教員たちの苦労がリアルすぎる【僕達はまだその星の校則を知らない#2】

2025.07.28 17:10

※本コラムは『僕達はまだその星の校則を知らない』第2話までのネタバレを含みます。

■心身の苦痛を感じたら“いじめ” ならば、失恋も“いじめ”なの?

2013年に施行された“いじめ防止対策推進法”では、いじめは被害者の主観的判断に基づくとされています。つまり、被害者が心身の苦痛を感じる行為は全ていじめ。ここに、加害者の認識は関係ないようです。この法律が定められたことで、いじめに苦しむ子どもたちを守れるようになったのはたしかでしょう。

でも、健治(磯村勇斗)が働く法律事務所の所長・久留島(市川実和子)も言うように、生きていれば人間関係のトラブルは避けられません。とくに、集団生活を学ぶ場である学校では、大小関わらず苦痛を感じる場面はたくさんあります。それを全て”いじめ”だと定義してしまったら、教師や学校はパンクしてしまうのでは?

そんな“いじめ防止対策推進法”がスポットライトを浴びた第2話のサブタイトルは――「失恋はいじめか?」。

今回のメインとなったのは、同じクラスに彼女がいる藤村(日向亘)。「サッカー一筋!」という感じで生きてきた藤村にとって、堀(菊地姫奈)は初めてできた彼女だったんじゃないかな。だから、目が合うだけでドキドキだし、手を繋ぐのも一苦労。まさに、甘酸っぱい青春を送っていました。

ところが、堀は急に藤村に別れを切り出し、別のクラスの井上(山田健人)と付き合い始めてしまったのです! これは、浮気だと疑われても仕方がないやつ。「もっと、上手くやろうぜ」と言いたくなります。

ただ、ここまでは”よくある話”ではありますよね。彼氏の相談を聞いてもらっているうちに、「俺にしとけよ」となるパターン。大人になったら、「人のものを奪おうとする男は、あまりよろしくない」と悟るものだけれど、高校生の堀はそんなことを知る由もありません。「井上くんの方が落ち着く!」と乗り換えてしまいました。

でも個人的には、井上がいなくても藤村と堀は別れていたと思うんです。なぜなら、藤村は堀とたくさんメッセージのやり取りをすることで、「勉強を頑張れる!」と前向きになっていたのに対し、堀は「ペースが乱れる」と不満を感じていたから。

しかも、「たしかに、藤村ってしつこくLINEを送りそうだな〜(しかも、悪気なく)」と堀に同情していたら、なんと1時間に1回程度のことだったようで。そのペースで嫌気がさすって、そもそも気持ちが冷めていたのでは?

さらに、「テスト期間は勉強に集中したい」と本音を伝えられるほどの関係性を築き上げていなかったのも、よろしくない。藤村は、「井上さえいなければ……!」と思っているのかもしれないけれど、結局のところ別れる運命だったんです。

そして、ここからは“よくある話”では終わらない展開に。なんと、「浮気をされて、大勢の前で恥をかいた!」と感じた藤村が、「これはいじめだ!」と訴えて、不登校になってしまいました。健治も、「弁護士ですよね? 俺、いじめられました。助けてよ」と言われてしまえば、スクールロイヤーとして助けないわけにはいきません。

ただの失恋、ただの三角関係のもつれが、“いじめ防止対策推進法”に基づき、“加害者”と“被害者”が存在するいじめだと定義されてしまったのです。

■このドラマの方向性は、法律の“穴”を考えさせること

正直、失恋がいじめにあたるんだったら、ほとんどの人がいじめの被害者であり、加害者にも該当してしまいます。珠々(堀田真由)も、「高校の時、好きだった先輩に振られたことがあるんですけど、それもいじめにあたるんですか?」と健治に問いかけていました。

“いじめ防止対策推進法”の定義によると、心身の苦痛を感じたらいじめ。でも、珠々は心が張り裂けそうになるくらいの苦痛を感じたけれど、先輩にいじめられたとは思っていないんですよね。なぜなら、「先輩は振っていじめてやろうなんて気持ちは少しもなく、ただ生きていただけ」だから。

誰かを守ろうとすると、誰かを傷つけてしまう。健治が藤村のために奮闘すればするほど、堀や井上はいじめの“加害者”として、周囲から冷たい目で見られるようになってしまいました。「自分は被害者を増やしているだけなのではないか?」と思った健治は、藤村に問いかけます。

「何が正しいのかは分からない。だから、自分で決めてください。何があなたの本当の幸いなのか」

すると、藤村は自分なりの結論を見つけ出すことができました。「あの時、感じた気持ちの全部が汚いものだとは俺は思えない。だから、これはいじめじゃない。傷ついたけど、いじめじゃないです」と。ひとつの“黒”があったとしたって、全てが裏返るわけじゃない……というか、全てを“黒”にしないことが、藤村にとっての幸いだったんだと思います。

わたしは、第2話を観てこのドラマの方向性を確信しました。それは、誰かを守るために作られた法律やルールの“穴”を、視聴者に考えさせること。

例えば、第1話のテーマは“ジェンダーレス”でしたよね。近年、多くの学校でジェンダーレス制服が導入されています。しかし、女子がズボンを履くのは許されても、男子がスカートを履くのは許されない。また、女子がズボンを選んだだけで「あなた、そっちだったのね」と勘繰る人もいる。

「わたしは、多様性を認めるタイプだから! 大丈夫だからね!」という“善意の目”が、苦痛を与えることもあります。多様性を認めるという風潮のせいで、意味もなく傷ついている人だっている。

また、第2話では“いじめ防止対策推進法”の大きな“穴”にメスが入りました。この法律を詳しく知らないわたしは、「いじめが防止されるならプラスしかなくない?」と安易に捉えていました。でも、いじめの定義が曖昧なせいで、今回のように明らかにいじめではないものが、いじめだと認定されてしまう可能性もある。それって、とても恐ろしいことですよね。

もしかすると、わたしたちは、本当の意味でこの星の法律を知らないのかもしれない――このドラマを通して、法律の裏の裏までしっかりと考えていけるようになりたいなと思います。

(菜本かな)

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