

あのころと未来 都市の中の明るいくぼみ

昭和時代の風俗を「昭和レトロ」と呼んで、昭和時代の古着を若い人が愛らしく着こなしている。あの時代の服が思いの外すてきに感じられて、古着屋に立ち寄ったときに自分も試してみた。しかし、化学療法後に再生してきた短い癖毛もあいまって、鏡の中にはレトロならぬリアル昭和おばさんがいただけであった…。スタイルの整ったお嬢さんたちが、私たちよりセンスよく着こなしているのだということに気づく。
長く生きた役得
長い時を経たものに新しい価値を見いだす。すばらしいことだと思う。リアルタイムでの見え方と過去を振り返ったときの見え方の違いが楽しめるのも、長く生きてきた役得である。前回の大阪万博は行けず、現在の万博もまだ行けていないのだが、過去の万博が開催されていたころの世の中の熱気を思い出し、こんな短歌を詠んだ。
みらいという響きが楽し
かったこと遠い博覧会の
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発展していく未来を無邪気に夢みていたのは、子供だけではなかった。55年前の博覧会の明るくシンプルなポスターと比べ、今回のミャクミャクのポスターは少しまがまがしい。未来への不安要素を抱える現代を反映しているようだ。
どんな人も拒絶せず
先日、銀座ソニーパークに行ってきた。かつてソニービルがあった街角に新しく建った5階建てのビルである。スロープと階段で入っていける部分には窓もドアもなく、開放的。ところどころに置かれた黒い四角い椅子は柔らかく、いつでも休んでいいよ、と無言で伝える。そして、ガラスのドアで仕切られた部分の内部では、音楽や映画などのアートイベントが展開されている。
地下に潜ると、八角形の紺色のタイルが蜂の巣のように貼られた壁があった。階段の手すりも少し懐かしいようなデザインである。これらは昭和41年に建てられたソニービルの一部をあえて残したもののようだ。
過去と現在が一つの建物の中で融合して、おしゃれで心地よい空間を形成している。古着と最新のトレンドを組み合わせておしゃれを楽しむ文化に通じる。
灼熱(しゃくねつ)の光が降り注ぐ簡素な屋上は、エルメスや東急プラザ、不二家などの個性的な高いビルに囲まれている。階数がそれらのビルより低いので見上げるかたちになり、その先の青空も目に入る。地球にいる、ということを思い出させてくれる、都市の中の明るいくぼみ。どんな人も拒絶しないおおらかさを感じた。
このビル、銀座の数寄屋橋の目の前にあるのだが、街自体が古いものも新しいものも同時に共存しつつ、どちらも大切に受け入れているような風情がある。少しずつ変化していく様を見つめ続けたい。
(歌人・東直子)
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