穴場の郊外立地、狛江駅周辺 若手ファッション事業者が集まる
小田急線狛江駅周辺が盛り上がっている。ファッションのイメージが薄い住宅街だが、周りの商業地の家賃の上昇などもあり、若手事業者による新興の専門店やブランドが集まり始めた。事業者同士の横のつながりや地元客との結びつきも強く、ローカルなコミュニティーが作られている。
(高塩夏彦)
狛江の魅力は、乗り換えなしで新宿まで約30分でアクセスできる立地の良さだ。古着ブームと再開発で盛り上がる下北沢や、個性的な飲食店でにぎわう代々木上原にも近いことから注目され、拠点として選ぶ新興事業者が増えてきた。
駅から数分の雑居ビルにあるメンズ古着と服のリメイクサービス主力の専門店、グーフィーファットもの一つだ。オープンは23年10月。30代の若手店主の菊地勇太さんが一人で運営している。
個店が埋もれない
菊地さんはアパレルの販売員からキャリアをスタートし、古着のリメイクが好きだったことから、服のお直し店で数年間修業した。独立して自身のアトリエを開く際に、販売の経験も生かしたいと考え、古着も扱う業態にしたという。
商品は50年代のビンテージウェアから00年代の古着まで幅広い。仕入れ先は主に国内のディーラーだが、フリーマーケットなどに足を運ぶこともある。アメカジなどのジャンルにとらわれず、他の店では見かけないような珍しい物を探して仕入れるという。
自身で古着をリメイクしたアイテムも扱う。例えば、迷彩柄のミリタリージャケットは、今のファッションに合わせやすいようにシルエットをカスタムしている。
価格はアウターで約1万5000~5万円。学生も買いやすいよう抑えた。当初は近隣に住む古着好きが主な客だったが、口コミで他のエリアからの客も増え、年齢層も高校生から40代まで広がった。
「狛江を選んだのは、街の人同士の仲が良いローカル感に引かれたから。また、小さな店舗兼アトリエは、商業地では他の店に埋もれてしまうと考えた」と菊地さん。客との交流を重視し、クラフトビールなどを販売して店内で飲めるようにしている。「ちょっと一杯の気分で気軽に来てもらいたい。顧客の来店動機にもなる」
今後の課題は認知度の向上だ。地元に根差しながら、知り合いの飲食店などでの期間限定店といった他の地域での露出も増やす。EC販売も強化したい考えだ。
飲食店で受注会も
「イッチョウラ」は、狛江市を拠点に21年にスタートしたブランド。ディレクターの竹森友哉さんの宮崎県の実家にある畑で穫れた廃棄野菜や土などで作った、サステイナブルな染料で染めたスウェットやTシャツが主力だ。
土由来の染料で染めたスウェットには、綿100%の生地を採用。土の中に住む微生物が生地を分解することで、ランダムに穴あきなどのダメージが生まれる個性的なアイテムだ。このほか、手描きしたストリート系のオリジナルグラフィックをシルクスクリーンでプリントしたTシャツなども出している。
主な販路は個人経営のセレクトショップへの卸や期間限定店。グーフィーファットでも取り扱いがある。〝一点物感〟が受けて、徐々にファンが増えている。
竹森さんは狛江市について「住んでいる人の地元愛が強く、買い物や食事はなるべく狛江でしたいという意識がある」と話す。実際グーフィーファットで、地元のブランドを応援する気持ちでイッチョウラを購入する客も多いという。狛江駅近くの飲食店で受注会を行うなど、地域密着型の取り組みも好評だ。
将来的な目標は、大手セレクトショップへの卸や期間限定店で拡販すること。ダウンジャケットなど重衣料にも商品カテゴリーを広げて、ブランドを成長させたいという。
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