2人で生きることをやめた夏。気づけば始まっていた、海のはじまり【海のはじまり#最終話】

2人で生きることをやめた夏。気づけば始まっていた、海のはじまり【海のはじまり#最終話】

2024.09.30 11:10

※このコラムは『海のはじまり』最終話までのネタバレを含んでいます。

■食べ物に現れるたくさんの愛情

リビングに集う夏(目黒蓮)、水季(古川琴音)、海(泉谷星奈)の3人の姿。父母がそろい、広くてキレイで、笑顔が溢れる全てがそろった家……。本当はこんな家庭を築いているはずだったのに……と切なくなる理想の姿。

しかし現実では、一緒に暮らすはずだった夏と海が、バラバラに……。

そんな状況に落ち込み、食欲を失った夏と海を励ます人々の姿に愛が溢れていました。

ご飯が食べられない海に「お箸持つ元気がない時はおにぎり食べるの。おじいちゃんおばあちゃんねぇ、水季が亡くなった日でもご飯食べたの。海のために生きなきゃいけないから。元気がない時はお行儀が悪いの許す」と、どんな形でもいいから食べて生きるのだと海を気にかける祖母・朱音(大竹しのぶ)。

きっと食欲を無くしているだろうと、夏の好きな食べ物をたくさん作って家まで訪れ、「食べな」の一言で元気づけようとする夏の母・ゆき子(西田尚美)。

ゆき子の作るロールキャベツを一眼見て、「夏の(好きな)ご飯だなー」と夏への差し入れであることをすぐ判断できる父(林泰文)の視点にも、また感じられる愛。

何が好きかを当然のように知っているって、相手に関心や愛情のあることの表れですから。

水季の生前のシーンで、水季のために父・翔平(利重剛)が大量の鳩サブレーを購入していたのもまた、愛でした。

■水季と生きていく、ということ

「ママは夏くんの話たくさんしてくれたから、会ったことがない時から夏くんのこと好きだった。だからママいないけど夏くんとママの話をしたかった」

弥生(有村架純)から得た、この「海が打ち明けた本音」という援護射撃を胸に、夏は海の元を訪れ、もう一度対話の時間を設けます。

「水季の死=悲しい出来事」として、水季の全てに蓋をして2人の生活を歩もうとしていた夏は、その考えを改め、海とこれからについてを話し合います。

「海ちゃんよりずっと短いけど、おれも水季といたからいなくなってさびしいよ」と、海に伝えると少しびっくりしたような顔をする海。水季のことをなかったことにして生きようとしていた夏の中にも、「ちゃんと水季がいた」ことに驚いたのでしょう。

夏は「自分の中にも水季の思い出があること。水季がいた事実を大切にしながら生きていこう」という気持ちを伝えます。

そこから始まる水季との昔話。夏といても感じなかった水季の面影を、海は感じ始めることができました。

その後、部屋に飾られた「水季と海の写真」と「水季と夏の写真」。これは、それぞれの心の中にある水季と共に生きて行くことの表れだったのでしょう。その写真に「いってきます」と声をかけて出かける2人の姿。水季と夏と海、3人で生きていくことで2人の本当の家族が始まりました。

■2人で生きることをやめた夏

「2人で生きること」をやめた夏は、「それでも寂しい時は、津野(池松壮亮)や弥生、海が会いたい人に会えばいいし、いくらでも待つ。どうしたら寂しくないか考えよう」と、さらにたくさんの人を巻き込んでいきます。突然の休日出勤も「甘えよう!」と津野を自宅に招き、海の面倒を見てもらうことに。

水季が残したのは海だけでなく、そこから生まれた人間関係。それをそのまま受け継ぎつつ、さらに自分の持つ人間関係を加えることで、たくさんの人と共に海を育てていくという考え方にシフトし、「海との家族のあり方」をまた一つ見つけたのでした。

それにしても、夏がいなくなったのを足音で確認してから、ツンデレかのようにキャラ変し、海をデロデロに甘やかす津野がまた尊い……。

それに加えて、海のコミュ力によって召喚されるお友達1・弥生とお友達2・大和(木戸大聖)。海が寂しさを感じる暇はなさそうです。

■弥生との新しい関係のはじまり

弥生と夏の交際が始まる時の回想と、「あんまりそう見えてなかったと思うんだけど、俺も一緒にいて楽しかったんだよね」という夏の今の言葉。弥生との交際への感謝の意味を込めたこの言葉は、夏が弥生との交際にしっかり気持ちの区切りをつけたことと、「海の友人・弥生とその父・夏」として、弥生との新たな関係がはっきり構築されたことの表れだったのでしょう。

転職や海との関係など、夏が壁にぶち当たった時には、実は職場の先輩や津野などがいつも正しい助言をくれていたのですが、夏はその時点では納得ができず、後日弥生が噛み砕いて優しく説明することで腹落ちし、毎回自分の行き先を決めることができました。

これからも海の友人としての弥生の存在は、夏の心強い味方になることでしょう。

■気づけば始まっていた、海のはじまり

水季が夏に残してくれた手紙。

「海はどこから始まってるか分かりますか? 始まりは曖昧で、終わりはきっとない。今までいなかった夏くんはいつからか海のパパになっていて、今そこにいない私はいなくなっても海のママです。父親らしいことなんてできなくていいよ。ただ、一緒にいて。いつかいなくなっても一緒にいたことが幸せだったと思えるように」

ラストには1話の冒頭で海辺を歩いていた水季と海のシーンの対比のように、海辺を歩く夏と海の姿。

前を歩く海を、後ろから見守る夏。ふと振り返る海に「いるよ!」と笑顔で返す夏。

気づけば夏は海の父になっていました。死が2人を分かつまで共に生き、今この瞬間も一緒にいた全てが幸せだったと思える時間になり、ずっと海の父であり続けるのでしょう。

(やまとなでし子)

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