突然の巻き込み事故と、真実を知ると残酷に一転する告白【海のはじまり#2】

突然の巻き込み事故と、真実を知ると残酷に一転する告白【海のはじまり#2】

2024.07.15 17:10

※このコラムは『海のはじまり』2話までのネタバレを含んでいます。

■突然現れた自分の子どもと、彼女への対応と

突然自分の前に6歳の実子・海(泉谷星奈)が現れた夏(目黒蓮)。そして「夏くんのパパいつはじまるの?」と、海は問いかけます。

まだ自分が父親であることや、中絶したはずの子どもが目の前にいることを理解しきれない夏は「ごめん、分かんない」と答えるのが精一杯。

突然尋ねてきた海を、海の祖母・朱音(大竹しのぶ)に迎えにきてもらう間、彼女の弥生(有村架純)が無邪気に面倒を見ます。弥生はまさか、海が夏の実子であるとも知らずに。

その後、海は自分の子どもであり、亡くなった元カノ・水季(古川琴音)が中絶したはずだったことを告げると、「妊娠を知らされずに別れたのなら、それはどうしようもない」とまた優しく夏の心に寄り添ってくれるのです。

朱音が言っていたように弥生にとっては巻き込み事故でしかなく、弥生にとっても受け入れがたい事実であり、辛いはずなのに……。

■溢れ出る、ずっと押さえ込んできた夏の本音

今度はきちんと手順を踏んで夏に会いに来ようとしてくれた海と朱音。

しかし、弥生に誠実にありたい夏は、今後海と会うために、一旦海と会うことは断り、弥生に全てありのままを話すことを決意します。

水季の妊娠は知っていたこと、その上で中絶を同意したこと、その後水季とは音信不通になり、中絶をしたはずが今になって海が現れたこと。そして、自分が殺したという罪悪感を持ち続けていたので、生きててくれてホッとしたこと……。

それに対し弥生は「殺したなんてことは……その頃二十歳とかでしょう? そういう選択すること、珍しくないと思うし」と変わらず、夏を優しくフォローをします。

しかし、優しい言葉に甘えることはなく、夏はずっと抱え続けてきた強い思いが溢れ出します。「歳とか関係ないし、自分の意思で同意したし、もっと話し合えばよかった。できることを考えていれば一緒に育てることだって……」と堰を切ったように弥生に自分の後悔を吐き出すのです。

それを優しく受け止める弥生は、「よかったよ。ずっと罪悪感抱えてるより。話せたから(海に)会えそう?」とどこまでも夏に寄り添い、味方であり続けます。

■もう一つの真実と重ねると一気に残酷になる告白シーン

しかしこのシーン、明かされたもう一つの事実を知ってしまうと、なんとも残酷なシーンに一転します。実は弥生も中絶を選択した過去があったのです。偶然にもそれは水季と同じ、2016年12月。弥生はやむを得ない事情で中絶を選んだわけですが、もしその子どもが生きていたら海と全く同い年の子どもだったわけです。

弥生が夏にかけていた「殺したなんてことは……その歳でそういう選択をすることは珍しくない」という夏に寄り添う言葉は、自分へ言い聞かせ、自分の選択が間違っていなかったことを再確認しながら心を守るための言葉でもあったのです。

しかし、それに対する夏の自戒を込めた言葉の数々は、知らず知らずに弥生への言葉のナイフとなって降りかかります。

「歳は関係ない」「自分の選択」「もっと話し合って考えれば一緒に育てることができた」という全ての言葉は、夏に寄り添ってくれているはずである弥生の過去の選択を否定する言葉になってしまうという皮肉。

弥生も中絶を選んだ時には「相手も同じ考えだし、父親がいないのも、仕事も……」と自分にたくさんの理由づけをして、選択を自分の中で正しいものにしたはずだったのに。

初対面の海とも全力で遊ぶような弥生でしたから、本当は子どもがとても好きで、どこかに子どもを諦めたくないという気持ちもあったのでしょう。

押さえ込んでいたはずの過去の気持ちを意図せず引っ張り出された弥生はトイレにこもり、夏にバレないようひっそりと涙を流すのです……。

■弥生の提案と偶然のタイミングの出会い

ある日弥生は自分の子どものお墓参りをした後、夏に一つの提案をします。「月岡くんがお父さんやるってなったら、私がお母さんやれたりするのかなって」これが言える弥生は本当に強くて優しく、懐の深い女性です。

「決めるのは海ちゃんだけど、選択肢の中に入れてくれたらなって」と、海が幸せになることが大前提であることを踏まえながら、夏にも押し付けがましさなく提案できるこの配慮。

弥生にとって、中絶を選択したあの時は状況的に子どもを育てることは難しかったけれど、今は育てることもできる状況。そんな中、突然やってきた自分の子どもと同じ年齢だったはずの海は、自分の子どもが帰ってきたように感じ、自分がお母さんをしてあげるべきなのだと運命を感じているのかもしれません。

お墓参りに行っていたのも、自分の子どもに「別の子どものお母さんになってもいい?」と、ケジメの一つとして問いかけてきたのでしょうか。

■初めて家族3人が揃った瞬間と海の意図

弥生にケジメをつけた夏は、改めて海のもとに会いに行きます。小学校から帰宅すると自宅で夏の姿を見つけ、夏に駆け寄り抱きしめる海と、それを抱きしめ返せずにいる夏。

「今日ね! 学校で色々あったの! 聞いて? 聞いて!」「いてね! そこにいてね!」と興奮しながら手を洗いに行く夏。

海が夏を抱きしめたのは水季の遺影の前。まさに今、お互いを家族であると認識してから、初めて家族3人が揃った瞬間なのです。

海が「聞いて? 聞いて!」と2回繰り返していたのは、夏と水季それぞれに呼びかけていたから? 「いてね!」と念押ししたのも、お母さんである水季と、お父さんである夏、全員が揃うこの部屋で二人にお話をしたかったからなのかもしれません。

■悪人が一切いないこのドラマ

このドラマのいいところの一つに、悪人がいないことが挙げられます。人間関係として好き、嫌いの感情は生まれることはあっても、一つ一つの行動に悪意といった負の感情から生まれるものはなく、みんなが自分の正義のもとに、自分や周囲の人間にまっすぐ誠実に生きているのです。

そして、人への配慮と優しさを忘れずに、お互いの気質の違いを理解し、受け止め合っています。違いを「間違い」だとか、「おかしい」と押しつけたりせずに、互いを尊重しあっている様子が恋人、家族、同僚など様々な関係で見てとれるのです。

だからこのドラマが余計に心を打つのかもしれません。また次回。

(やまとなでし子)

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