

<ズートピア>“誰でも何にでもなれる”、多様性の尊重…夢を諦めない大切さを学べる物語

「アカデミー賞」長編アニメ賞、「ゴールデングローブ賞」長編アニメ映画賞を受賞した大ヒットアニメ映画「ズートピア」。その続編となる「ズートピア+」が本日11月9日から配信開始。舞台は引き続き、動物たちが人間のように暮らす場所<ズートピア>。前作の映画ではウサギの新米警官・ジュディとキツネの詐欺師・ニックの友情物語というニュアンスもあったが、今回の短編シリーズでは、ジュディとニックが楽園の真実を追い求める裏側で起きていた出来事にパワフルに迫っていく。6年ぶりとなる新たな物語に胸を弾ませる人たちが大勢いると思うので、あらためて「ズートピア」の魅力について紹介する。(一部ネタバレを含みます)
主人公はウサギの新米警官
映画「ズートピア」の主人公は、ズートピア内のバニーバロウという田舎町に暮らすウサギの少女・ジュディ。日本版声優を上戸彩が務めたことも話題になった。とある出来事に接し、自分の正義感を意識した彼女は、やがて警察官を目指すようになる。しかし家族や友人の反応は「それはウサギのやることではない。一緒にニンジンを育てよう」。それでも彼女の決意は変わらず、警察学校を優秀な成績で卒業して初のウサギ警察官になった。
最初に命じられた仕事である駐車違反の取り締まりをしていたとき、ゾウが経営するアイスクリーム店でアイスの販売を拒否されるキツネの“親子”を見かける。ゾウには売るがキツネには売らないというのだ。ジュディは売るように命じたが、考えてみたらゾウ用の巨大なアイスをキツネが食べつくせるわけがない。この親子はそのアイスを何十匹用にも細かく分けて、転売して儲けていた。しかも「親子」は犯罪用の設定で、実のところは違った。この「親」にあたるのが詐欺師のニックである。
ある日、女性のカワウソがズートピアの副市長(女性のヒツジ)と共に署にやってきた。夫が行方不明だというのだ。ジュディはぜひ事件を解決したいと立候補するが、それが署長には面白くない。“若い女の子である君は交通違反を取り締まる仕事を粛々とやっていればいいのだ”ということだろうが、最終的に「48時間以内に事件を解決しなければクビにする」という無謀な条件をつけてジュディに捜査を任せる。
“相棒”ニックはやがて初のキツネ警察官に
ニックは“裏事情”に詳しいということで、彼の協力を得て、山あり谷ありの展開を経つつも事件は解決。だが「キツネは狡猾で、いやな動物」という大衆の偏見は相変わらずで、そうは思っていなかったと自身で信じ込んでいたはずのジュディまで、署で行われた記者会見でつい動物差別にもとれる発言をしてしまう。
そこからジュディの内省が始まり、故郷に戻った末に「ウサギも凶暴になった」歴史を知る。署に戻ったジュディはニックと和解し、事件の解決に再び動き出す。事件最大の肝は副市長だった。彼女はもともと肉食動物を嫌い、言い換えれば“草食動物至上主義”だった。「肉食動物は凶暴で、ズートピアを恐怖に陥れる。肉食は出ていけ」的な風潮に世間を誘導し、やがてはズートピアを自身の支配下に置きたいと考えていた。もちろんこんなやつは映画の世界ではすぐに逮捕されるのだが…。ジュディに触発されたニックの表情や発言がどんどん穏やかになり、ついには警察学校に入るあたりの描写も実に楽しい。結果、ニックは初のキツネ警察官に。全編を通して夢を諦めない大切さや、“誰でも何にでもなれる”というメッセージが込められていた。
他にも見どころはいっぱいだが、特に笑いが漏れたのは、物語の比較的前半に登場する「肉球アイス」の場面。英語では、いわゆるアイスキャンディーのことを「popsicle」という。ニック親子はゾウから買った巨大アイスを肉球型の容器に入れ直し、「pawsicle」という名前で売っていた。「paw」は肉球のこと、カタカナで書くとしたら「ポー」が発音に近い。英語版の映画を見ていて劇中に「ポー」という言葉が聞こえてきたら、ほぼ100%肉球関連の話題であると考えていいはずだ。あと、トガリネズミの男性“ミスター・ビッグ”の語り口が、まるで映画「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドだったのにも、飲んでいた茶を吹き出させるインパクトがあった。
映画「ズートピア」が公開された2016年は、アメリカ合衆国大統領選挙の年でもあった。二選を務めたバラク・オバマ(アメリカ初の有色人種の大統領)の退陣が決まり、ドナルド・トランプと女性初の大統領候補ヒラリー・クリントンの間でつばぜりあいが繰り広げられていた頃だ。本作は、そうした時期に「多様性を尊重しよう」「差別や先入観を捨てよう」「広く歴史を知ろう」といった考えを、動物(哺乳類)に仮託して子ども世代にも伝えようとした作品であったのかもしれない。
時代は移って2022年現在はバイデン政権、そして世界的に値上げが著しく、それに伴い、日本以外ではガンガン賃金も上がっているようだ。パンデミックも暴れまくるこの混迷の時代、映画だって勝手にまとめられた“ショート動画”で内容だけさらりとつまもうとする人も多い。そういう時代背景もあってか、6年ぶりの続編は短編アニメーション全6話一挙配信。短編とはいえそこは世界のディズニーだけに、新作「ズートピア+」に込められたメッセージにも関心が高まる。
ちなみに、短編といえばディズニープラスでは「ズートピア」のメーキング映像も配信されており、バイロン・ハワード監督、リッチ・ムーア監督が泣く泣くカットしたという未公開シーンや、劇中に登場するはずだったキャラクターについて、動物園やアフリカで実際に生きた動物を見てアイデアを膨らませていたというリサーチの模様まで9本のミニ映像が収められている。これを見てからもう一度「ズートピア」を見てみると、また違った味わいがありそうだ。
「ズートピア+」は、11月9日よりディズニープラスで独占配信。
◆文=原田和典
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