「名探偵コナン ゼロの日常」第1話より

古谷徹、「名探偵コナン」安室透は“男の理想” 爆発的人気も「キャラが生きているからこそ」

2022.04.08 20:00
「名探偵コナン ゼロの日常」第1話より

「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイを筆頭に、50年以上にわたり第一線で活躍し続けるレジェンド声優・古谷徹。そんな古谷が演じる代表的キャラクターの一人が、アニメ「名探偵コナン」の安室透だ。探偵・毛利小五郎の弟子として喫茶ポアロで働く一方、バーボンと名乗って“黒ずくめの組織”で潜入捜査を行い、その真の正体は“降谷零”という公安警察の捜査官。“トリプルフェイス”を持つ安室の人気は2016年の劇場版「純黒の悪夢(ナイトメア)」で火がつき、2018年には安室をメインに据えた劇場版「ゼロの執行人」も公開。そしてこのたび、安室の“日常”を描いたスピンオフアニメ「名探偵コナン ゼロの日常(ティータイム)」がスタートした(毎週月曜深夜1:20-35ほか、TOKYO MXほか)。本作をもって、昭和・平成・令和でテレビアニメ主演を務める偉業を達成することとなった古谷に、安室透というキャラクターへの思いをたっぷり聞いた。

アニメデビューから56年…「はっきり言って脇役の方が難しい」

――「ゼロの日常」で、テレビアニメでは14年ぶりに主演を務められるそうですね。

古谷:おかげさまで今年アニメデビューから56年になり、主役をやった作品も100近くあるんですね。脇役より圧倒的に多いんです。14年前は「キャシャーン Sins」(2008年)で、監督からのご指名で主役をやらせていただいて「この歳でもできるんだ」とすごくうれしかった。それが最後じゃないかと思っていたのですが、ここにきてこんな形で主演をやらせていただけることになって。物語はキャラクターの感情に沿って描かれるので、主役はとっても演じやすいんですよ。僕は主役に慣れているものですから、本当にうれしかったですね。はっきり言って脇役の方が難しいです。

もう一つ思ったのは、昭和、平成、令和で全てテレビアニメの主人公をやらせていただけたということ。劇場版アニメーションは、昨年「ジャーニー 太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語」(2021年)という作品で達成できたんですけど、テレビアニメに関しては今回でようやくそれが達成できました。そういう声優さんはほかにいないんじゃないかな。「やったな!」という思いがあります。

安室は「現代のヒーローで、男の理想。見習うべきところがたくさんある」

――数多くの作品に出演されている中、古谷さんにとって「名探偵コナン」という作品はどのような存在でしょうか?

古谷:僕は元々「名探偵コナン」のファンだったので、その作品で大きな役目を担うキャラクターとしてレギュラーで出させていただけたことは本当に自慢でした。安室が出てくるまでは、「探偵たちの鎮魂歌」(2006年の劇場版)などで犯人の役でしか出ていなかったんですね。それでもうれしかったのですが、こんなにカッコいいイケメンキャラクターをやらせていただけて、しかもコナンくんと相棒のように事件を解決したりするなんて、本当に“夢がかなった”という感じでした。

――では、安室透というキャラクターについては?

古谷:現代のヒーローであって、男の理想。僕にとっても理想形じゃないですかね。まずスキルが多過ぎる(笑)。何でもできてしまうのがすごいのと、老若男女、全ての人に対して気配りできるところは人間的にも素晴らしいですよね。見習うべきところがたくさんあると思います。

――特にここ数年で爆発的な人気を博したキャラクターですが、古谷さんご自身はその熱狂的支持をどのように受け止めていらっしゃいますか?

古谷:元は青山剛昌先生がこんなに魅力的なキャラクターを生み出してくださったからですし、「名探偵コナン」という人気作品の中でも一人のキャラクターにこれだけスポットが当たって、スピンオフ作品が作られるまでになったというのは、今の時代や送り手受け手の思いなど、全てが一致してキャラクターが生きているからこそだと思うんですね。そこに自分が関われたことが本当にうれしいですし、大人気の期待に添えるように、真摯に全力で演じていかなければならないという思いを新たにしています。

――古谷さんのキャリアをもってしても、演じるのが難しい役柄なのですね。

古谷:3役をやっているみたいなものですからね。いわゆる熱血ヒーローの部分もあるだろうし、悪役の部分もあるし。これまで僕はさまざまなキャラクターを演じてきて、演じたキャラクターの一つ一つから得たものが僕の中に蓄積されている。その部分を“トリプルフェイス”に生かせているのかなという自負はあります。

安室の“寂しがり屋”の顔はある意味ショックだった

――安室透というキャラクターがここまでに深く愛されるようになった理由はどこにあると思いますか?

古谷:最初は身近なお兄ちゃん、爽やかな青年探偵というイメージで登場して、とっつきやすい魅力があったのかな。しかも料理が上手だったり、楽器ができたり、人への気遣いができたりというところが、「彼氏にしたい!」という女心の琴線に触れたのかなぁ…なんて(笑)。そこから「ゼロの執行人」で「恋人はこの国さ」と言われて、「実際には恋人がいないなら、チャンスあるかも!」と思ってくださったのかなとは思います。

それとやはり、トリプルフェイス。コナンくんの敵である黒ずくめの組織のメンバーではあるけど、実は公安警察の捜査官だというところで、コナンファンの方々も「コナンくんを支えてくれる強い味方が増えた」と思っていただけたんじゃないですかね。

――そんな安室の“日常”が描かれている「ゼロの日常」のお話もうかがいます。本作では安室のどんな魅力が見られるでしょうか?

古谷:やっぱり普段着の安室透…降谷零なんですけど…の、「名探偵コナン」テレビシリーズではあまり見せない穏やかな表情ですかね。それは、“人に見られていない、一人きりの場面”が描かれているからだと思うんです。もしかしたらガッカリする人もいるかもしれないけど、僕からすると魅力になっているんじゃないかなと思います。

スキルに関しても、大型バイクに乗ったり、ギターの弾き語りをしたり。不眠症の対処法とか、柔道の技で片腕で相手を投げてしまうというのもそうですね(笑)。明らかになったさまざまなスキルも魅力になると思います。それから、やはり気配りも。新たな表情、スキル、性格で、降谷零という人物を深く演じられるようになった気がします。

――「ゼロの日常」で新たに知った安室の一面はありますか?

古谷:「寂しがり屋なのかな」というのが、今まで思ってもいなかった顔ですかね。一番はそれかなぁ。「やっぱり孤独を感じているんだな」という。それは警察学校組のことを思い出す描写でも明らかでした。ほかにも冷静さを欠いた顔とか復讐に囚われている顔、我を忘れて没頭している顔などいろいろ描かれていますが、寂しがり屋だというところが一番、ある意味ショックでしたし、共感もできるところです。

――安室の孤独を特に感じたシーンというのは…?

古谷:ハロ(作中に登場する子犬)との出会いです。僕もイヌ派なのでうれしかったです(笑)。すごくかわいく描かれているんですよ。潘めぐみちゃんがすごく気持ちを込めて演じてくださって、「ワン!」一つで気持ちが伝わるんですよね。僕も演じやすかったです。

――逆に、本編と「ゼロの日常」を通じて「ここはブレないな」と感じた部分は?

古谷:スキルが高いところと正義感が強いところ、人に優しいところはブレていないと思います。

降谷はシャープに、安室は高めに…“トリプルフェイス”を演じ分け

――公安・探偵・黒ずくめの組織と“トリプルフェイス”を持つキャラクターですが、演じ分けはどのようにされているのですか?

古谷:基本的な設定として、公安警察の降谷零が黒ずくめの組織でバーボンと名乗り潜入捜査をしている。そのバーボンが安室透と名乗り、毛利小五郎のそばで情報収集をするために喫茶ポアロでアルバイトをしている…という図式を絶対に忘れちゃいけないなと思っています。それぞれ“演じて”いるわけですよね。その演じ分けは、いる場所や立ち位置、触れ合う人々によって変わっていくわけです。

降谷零はやはりシャープに演じたいと思っていて、声のトーンも“デキる大人の男”を感じさせたいので、低い声をメインに使っていますね。で、黒ずくめの組織に潜入しているときは、ミステリアスな雰囲気を伝えたいので、声のトーンとしては幅広く使っていて、他の2人よりもあえて抑揚をつけるようにしています。そして、身近に感じてほしい安室透は“隣のお兄ちゃん”みたいな爽やかなイメージで、高めのトーンを使うようにしています。なんせ、「ゼロの日常」でも「3つどころか、100の顔でも演じ分けて見せるのに」と言っちゃってるんですよ(笑)。困ったもんですけど、言われちゃったからには上手に演じ分けしなきゃいけなくなってきました(笑)。

――それでは逆に、3つの顔に共通する“軸”はどこにあるのでしょう?

古谷:実体は降谷零なので、全ての行動においてエレーナさんを探し出すことと、赤井秀一を見つけることが大きな目的なんですね。どんな立場にいてもそこは絶えず思っているわけで、ふとした拍子に復讐の心がふつふつと湧き上がってきたり、懐かしさ、恋慕の情みたいなものを感じたりというのは、どのトリプルフェイスであっても思っていることだと思います。

――安室透・降谷零・バーボンの中で、古谷さんが好きな顔というのは?

古谷:やっぱりファンとして見ても降谷零が一番カッコいいじゃないですか(笑)。僕は元々警察モノ、特に公安が好きですし、憧れますよね。

――古谷さんとは苗字が同じという共通点もありますね。

古谷:本当にねぇ(笑)。最初の頃は、風見役の飛田(展男)くんから「『降谷さん』がすごく言いにくいんですよ、古谷さん!」って言われていました(笑)。長年「ガンダム」で共演していて、いつも「古谷さん、古谷さん」って言ってくれているので。

――「ゼロの日常」の中で、古谷さんがほかに気になるキャラクターはいますか?

古谷:まずはハロですね。本当に「ハロと出会えて本当に良かったな」と。降谷は一人じゃないんだと思いました。「ガンダム」の中に「人は守るべきもののために戦う」というセリフがありまして、アムロ・レイはそれに「守るべきものがなくて戦ってはいけないのか」と返すんですけれども、ハロとの出会いで身近な“守るべきもの”が増えた気がしますよね。大きな意味では「この国の人々を守りたい」という思いが強くあるわけだけど、それとは別に、身近に愛せる存在ができた。ハロのことは守りたいと思っているでしょうから、また強くなったんじゃないかなと思います。

あとは鶴山のおばあちゃまですね!おばあちゃん、メチャかわいい!(笑)彼は身内がいないので、そういう意味でも思うところがあるんじゃないかなと。

長く演じるほど、一人のキャラクターの人生を共有できる

――古谷さんは「コナン」をはじめ、ご長寿作品も多く出演されています。同じキャラクターを長く演じ続けることの醍醐味とは?

古谷:一言で言うと、たくさんの人生を共有できるところです。演じた数だけ、バーチャルではありますが、僕としては体験しているんですよね。普通の人では絶対体験できないようなことがいっぱいできる。「コナン」だけでも、モノレールの線路の上を走っちゃったり、観覧車の上で戦っちゃったり(笑)。それが一番の魅力であり、醍醐味じゃないですかね。それは短い作品もそうですが、長く演じれば演じるほど一人のキャラクターの人生に共感し、共有できる。それが声優ならではの醍醐味だと思います。

――それでは最後に、古谷さんから安室透にメッセージを贈るとしたら、どんなメッセージを贈りたいですか?

古谷:「あんまり頑張らなくていいよ」って言ってあげたいですね(笑)。「ゼロの日常」は“日常”と言いつつも何かしら起こって、そこに関わることになって、頑張らなきゃいけなくなる。しかも“90分しか眠らない”とか、“懸垂を500回やる”とか、やめたほうがいいんじゃないかなぁ(笑)。「もっと体を大切にしたら?」って思っちゃいますけど、徹底主義ですからね。だからこそ、ハロの存在があって本当に良かったなと思えます。

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