もしも冷蔵庫を作るなら「放射冷却を応用すれば電気はいらない」
2013.09.22 23:14
提供:マイナビウーマン
日本に初めて電気冷蔵庫が登場したのは1930年と聞くと、文明のありがたさを感じる。
もし電気冷蔵庫がなかったら、どうなるのだろうか? カシミール効果で負のエネルギーを作り出せば温度も下げられそうだが、残念ながら実用化のめどすら立っていない。熱を電磁波として宇宙に放出する放射冷却を利用すれば、なんとか冷蔵庫が作れそうだ。
■鉄より冷えるガラス?
物体の温度を上げるのは簡単で、エネルギーを与えれば分子が活発に動き回り高温となる。導体に電気を流せばわずかながらも発熱するし、こすって摩擦を起こしても温度は上がる。対して冷却は、他の物体にエネルギーを移す以外に手段がない。
電気ヒーターのように電気をエネルギーに変えることはできても、マイナスのエネルギーを作り出すことができないからだ。そこで放熱器を取り付けて空気に逃がしたり、その物体よりもエネルギーが低い氷や冷水に熱を移すのが一般的だが、空冷では気温以下に下げることはできないし、後者は時間とともに効果がなくなってしまう。
水道を出しっぱなしにすれば水温と同じに保つことはできるだろうが、水の無駄づかいも甚だしいので却下だ。
空気や水があれば熱を逃がすことができるが、宇宙はほぼ真空だから熱を伝える相手がいない。それではどうして地球の温度は上がり続けないのだろうか?
答えは放射で、熱は電磁波として放射できるため、他の物体に触れなくても伝えることができる。晴れ渡った冬の夜はいっそう冷え込むのもこの現象で、これは放射冷却と呼ばれ雲に邪魔されず宇宙に熱が逃がされるために起きる現象だ。
電磁波は光や電波などの総称だから、大気がなくても進むことができる。地球が太陽から受けるエネルギーを100とすると、大気/雲/地表で反射される量が30~31程度なのに対し、いったん吸収されたのちに宇宙に放射される量は69~70と格段と多い。この放射冷却を応用すれば、氷も電気も使わずに勝手に冷える冷蔵庫が作れそうだ。
物体は熱を赤外線として放射することから赤外放射とも呼ばれる。素材によって放射のしやすさが異なり、0から1の放射率で表される。身近な素材と放射率を挙げると、
・アルミ板 … 0.09
・光沢のある鋳(ちゅう)鉄 … 0.21
・光沢のない錬(れん)鉄 … 0.94
・コンクリート … 0.94
・レンガ(赤) … 0.93
・ガラス … 0.95
・黒色ラッカー … 0.98
で、意外にも非金属に高放射率のものが多い。色や密度によっても異なり、同じ鉄でも製造方法や色の違いで4倍もの開きがある。このデータをもとに放熱器(放射器?)を作るなら、重量やコストを考慮し黒色ラッカーで塗ったガラスが良さそうだ。
■宇宙につながる冷蔵庫
赤外放射を使った冷蔵庫は非電化冷蔵庫とも呼ばれ、先の材料で作った放熱器、断熱性のある容器(外箱)、金属製の食品保管箱(内箱)、それに水を用意しよう。
作り方もシンプルで、外箱の上部を切り抜いて放熱器を取り付けるだけだ。その後、放熱器に触れるまで水を入れ、食品を入れた内箱を収容する。
水が庫内の熱を循環させる冷媒の役を果たし、食品~内箱~水~放熱器と伝わり、宇宙へ放出される仕組みだ。夏は40℃近くに達するモンゴルで、日中でも庫内は4℃近くで保たれた例もあるので、氷も電気も使わずに冷え冷えのビールにありつけそうだ。
冷却性能を高め氷点下を狙うなら冷媒である水を噴霧するのが良いだろう。これは宇宙で使われる液滴(えきてき)ラジエーターと同じ理屈で、霧状にした水は表面積が増えるため、すばやく熱交換できるからだ。
もちろん放っておいても霧状にはならないので、水鉄砲のようなポンプを追加し、握力のトレーニングを兼ねた人間噴霧器と化す覚悟が必要だが。
■まとめ
玉砕が続くこのシリーズにしては珍しく、成功の二文字が見えるテーマだ。機会を見つけ試してみたいと思う。
ただし、放射率が高い物体は吸収率も高いので、日中に陽光を浴びると高性能加熱機へと変身する。食品がムダになる冷蔵庫ではシャレにならないので、置き場所が重要課題になりそうだ。
(関口 寿/ガリレオワークス)
もし電気冷蔵庫がなかったら、どうなるのだろうか? カシミール効果で負のエネルギーを作り出せば温度も下げられそうだが、残念ながら実用化のめどすら立っていない。熱を電磁波として宇宙に放出する放射冷却を利用すれば、なんとか冷蔵庫が作れそうだ。
■鉄より冷えるガラス?
物体の温度を上げるのは簡単で、エネルギーを与えれば分子が活発に動き回り高温となる。導体に電気を流せばわずかながらも発熱するし、こすって摩擦を起こしても温度は上がる。対して冷却は、他の物体にエネルギーを移す以外に手段がない。
電気ヒーターのように電気をエネルギーに変えることはできても、マイナスのエネルギーを作り出すことができないからだ。そこで放熱器を取り付けて空気に逃がしたり、その物体よりもエネルギーが低い氷や冷水に熱を移すのが一般的だが、空冷では気温以下に下げることはできないし、後者は時間とともに効果がなくなってしまう。
水道を出しっぱなしにすれば水温と同じに保つことはできるだろうが、水の無駄づかいも甚だしいので却下だ。
空気や水があれば熱を逃がすことができるが、宇宙はほぼ真空だから熱を伝える相手がいない。それではどうして地球の温度は上がり続けないのだろうか?
答えは放射で、熱は電磁波として放射できるため、他の物体に触れなくても伝えることができる。晴れ渡った冬の夜はいっそう冷え込むのもこの現象で、これは放射冷却と呼ばれ雲に邪魔されず宇宙に熱が逃がされるために起きる現象だ。
電磁波は光や電波などの総称だから、大気がなくても進むことができる。地球が太陽から受けるエネルギーを100とすると、大気/雲/地表で反射される量が30~31程度なのに対し、いったん吸収されたのちに宇宙に放射される量は69~70と格段と多い。この放射冷却を応用すれば、氷も電気も使わずに勝手に冷える冷蔵庫が作れそうだ。
物体は熱を赤外線として放射することから赤外放射とも呼ばれる。素材によって放射のしやすさが異なり、0から1の放射率で表される。身近な素材と放射率を挙げると、
・アルミ板 … 0.09
・光沢のある鋳(ちゅう)鉄 … 0.21
・光沢のない錬(れん)鉄 … 0.94
・コンクリート … 0.94
・レンガ(赤) … 0.93
・ガラス … 0.95
・黒色ラッカー … 0.98
で、意外にも非金属に高放射率のものが多い。色や密度によっても異なり、同じ鉄でも製造方法や色の違いで4倍もの開きがある。このデータをもとに放熱器(放射器?)を作るなら、重量やコストを考慮し黒色ラッカーで塗ったガラスが良さそうだ。
■宇宙につながる冷蔵庫
赤外放射を使った冷蔵庫は非電化冷蔵庫とも呼ばれ、先の材料で作った放熱器、断熱性のある容器(外箱)、金属製の食品保管箱(内箱)、それに水を用意しよう。
作り方もシンプルで、外箱の上部を切り抜いて放熱器を取り付けるだけだ。その後、放熱器に触れるまで水を入れ、食品を入れた内箱を収容する。
水が庫内の熱を循環させる冷媒の役を果たし、食品~内箱~水~放熱器と伝わり、宇宙へ放出される仕組みだ。夏は40℃近くに達するモンゴルで、日中でも庫内は4℃近くで保たれた例もあるので、氷も電気も使わずに冷え冷えのビールにありつけそうだ。
冷却性能を高め氷点下を狙うなら冷媒である水を噴霧するのが良いだろう。これは宇宙で使われる液滴(えきてき)ラジエーターと同じ理屈で、霧状にした水は表面積が増えるため、すばやく熱交換できるからだ。
もちろん放っておいても霧状にはならないので、水鉄砲のようなポンプを追加し、握力のトレーニングを兼ねた人間噴霧器と化す覚悟が必要だが。
■まとめ
玉砕が続くこのシリーズにしては珍しく、成功の二文字が見えるテーマだ。機会を見つけ試してみたいと思う。
ただし、放射率が高い物体は吸収率も高いので、日中に陽光を浴びると高性能加熱機へと変身する。食品がムダになる冷蔵庫ではシャレにならないので、置き場所が重要課題になりそうだ。
(関口 寿/ガリレオワークス)
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