

幻の太陽系惑星「バルカン」とは?
2013.07.22 18:54
提供:マイナビウーマン
現在、太陽系にはいくつの惑星があるでしょうか?
2006年に冥王星が太陽系の惑星から除外されてしまったため、「水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星」の8つが正解ですね。
しかし19世紀には、太陽に一番近い水星のさらに内側に、もう1つ未知の惑星が存在すると信じられていました。
その未知の惑星こそが、今回の主役「バルカン」です。
■幻の惑星「バルカン」とは…
冒頭でも紹介しましたとおり、バルカンは水星の軌道の内側を回っていると想定された幻の太陽系惑星です。
水星よりも太陽に近いところを回っており、とても高温の天体だと考えられていたため、ローマ神話で火と鍛冶(かじ)の神を意味する「ウルカヌス」から、バルカンと名付けられました。バルカンという読み方は、ウルカヌスの英語表記(Vulcan)がもとになっています。
…がしかし、現代のみなさんはご存じのとおり、実際にはそんな惑星は存在しないとされています。
それにもかかわらず、なぜ実在しないはずのこの天体の存在が人々に信じられてしまったのでしょうか。
そのきっかけとなったのは水星でした。
というのも、19世紀よりも前から、天文学者たちの観測によって水星の近日点(水星の公転軌道上で太陽にもっとも近づく点)はほんの少しずつ移動していることが分かっていました。
このように、水星の近日点が移動する主な要因は、「摂動(せつどう)」と呼ばれる周りの惑星の重力影響によるもので、このことは当時知られていたニュートン力学から求めることができました。しかし、これだけではどうしても説明がつかない、ほんのわずかなズレが解決されないまま残っていました。
そこで、当時の天文学者たちは、水星の内側を回る未知の天体が存在し、それがこのズレを生んでいるに違いないと考えるようになりました。
■バルカンと海王星
一方、同じ時期に、太陽系惑星の1つである「海王星」も発見されています。
海王星はもともと天王星の軌道のわずかな変化から、計算によってその存在を予言したことがきっかけで発見された惑星で、これを唱(とな)えた人物がフランスの数学者で天文学者でもあった「ユルバン・ルヴェリエ」でした。
そして、ルヴェリエが海王星に続いてこの未知の天体の存在も主張したことが、バルカンの信ぴょう性をますます高める結果となりました。
■やはり存在しなかったバルカン
ルヴェリエによってバルカンの存在が予言されてから、人々はこぞってその未知の天体を発見しようと試みます。
実際、望遠鏡の精度向上などにより、新惑星発見の報告がいくつも発表されました。けれども、どれも再現性がないことから、その存在の証明にまでは至りませんでした。
やがて、20世紀に入ると、アインシュタインによって一般相対性理論が発表されます。
すると、この一般相対性理論から、太陽に近いところではその大きな質量から生み出される重力によって周りの空間そのものがゆがみ、水星はそのゆがんだ空間の中を進むために近日点が移動しているという結果が導き出されました。
さらに、この理論から計算によって導かれる値が、それまでの観測事実に基づいた値とほぼ一致したことで、水星の近日点移動問題は解決に至りました。(それと同時に一般相対性理論が正しいということも裏付けられました。)
そして、この結果こそが、バルカンの存在理由を否定する決定的な材料となったわけです。
■まとめ
水星の内側を回っていると考えられた幻の太陽系惑星「バルカン」。
バルカンの存在は、水星の近日点移動問題を解決するものとして期待されましたが、20世紀に入りアインシュタインによって一般相対性理論が発表されると、たちまちその期待はしぼんでしまいました。
しかしながら、発見される前から名前まで付けられていたことを考えると、19世紀の人々がいかにこのバルカンの存在を信じて疑わなかったかが分かりますね。
(文/TERA)
●著者情報
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
2006年に冥王星が太陽系の惑星から除外されてしまったため、「水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星」の8つが正解ですね。
しかし19世紀には、太陽に一番近い水星のさらに内側に、もう1つ未知の惑星が存在すると信じられていました。
その未知の惑星こそが、今回の主役「バルカン」です。
■幻の惑星「バルカン」とは…
冒頭でも紹介しましたとおり、バルカンは水星の軌道の内側を回っていると想定された幻の太陽系惑星です。
水星よりも太陽に近いところを回っており、とても高温の天体だと考えられていたため、ローマ神話で火と鍛冶(かじ)の神を意味する「ウルカヌス」から、バルカンと名付けられました。バルカンという読み方は、ウルカヌスの英語表記(Vulcan)がもとになっています。
…がしかし、現代のみなさんはご存じのとおり、実際にはそんな惑星は存在しないとされています。
それにもかかわらず、なぜ実在しないはずのこの天体の存在が人々に信じられてしまったのでしょうか。
そのきっかけとなったのは水星でした。
というのも、19世紀よりも前から、天文学者たちの観測によって水星の近日点(水星の公転軌道上で太陽にもっとも近づく点)はほんの少しずつ移動していることが分かっていました。
このように、水星の近日点が移動する主な要因は、「摂動(せつどう)」と呼ばれる周りの惑星の重力影響によるもので、このことは当時知られていたニュートン力学から求めることができました。しかし、これだけではどうしても説明がつかない、ほんのわずかなズレが解決されないまま残っていました。
そこで、当時の天文学者たちは、水星の内側を回る未知の天体が存在し、それがこのズレを生んでいるに違いないと考えるようになりました。
■バルカンと海王星
一方、同じ時期に、太陽系惑星の1つである「海王星」も発見されています。
海王星はもともと天王星の軌道のわずかな変化から、計算によってその存在を予言したことがきっかけで発見された惑星で、これを唱(とな)えた人物がフランスの数学者で天文学者でもあった「ユルバン・ルヴェリエ」でした。
そして、ルヴェリエが海王星に続いてこの未知の天体の存在も主張したことが、バルカンの信ぴょう性をますます高める結果となりました。
■やはり存在しなかったバルカン
ルヴェリエによってバルカンの存在が予言されてから、人々はこぞってその未知の天体を発見しようと試みます。
実際、望遠鏡の精度向上などにより、新惑星発見の報告がいくつも発表されました。けれども、どれも再現性がないことから、その存在の証明にまでは至りませんでした。
やがて、20世紀に入ると、アインシュタインによって一般相対性理論が発表されます。
すると、この一般相対性理論から、太陽に近いところではその大きな質量から生み出される重力によって周りの空間そのものがゆがみ、水星はそのゆがんだ空間の中を進むために近日点が移動しているという結果が導き出されました。
さらに、この理論から計算によって導かれる値が、それまでの観測事実に基づいた値とほぼ一致したことで、水星の近日点移動問題は解決に至りました。(それと同時に一般相対性理論が正しいということも裏付けられました。)
そして、この結果こそが、バルカンの存在理由を否定する決定的な材料となったわけです。
■まとめ
水星の内側を回っていると考えられた幻の太陽系惑星「バルカン」。
バルカンの存在は、水星の近日点移動問題を解決するものとして期待されましたが、20世紀に入りアインシュタインによって一般相対性理論が発表されると、たちまちその期待はしぼんでしまいました。
しかしながら、発見される前から名前まで付けられていたことを考えると、19世紀の人々がいかにこのバルカンの存在を信じて疑わなかったかが分かりますね。
(文/TERA)
●著者情報
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
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