ドラマ「天狗の台所 Season1」より

駒木根葵汰、越山敬達の田舎暮らしが教えてくれる“生き方の選択肢” ドラマ「天狗の台所」が持つ現代人にこそ刺さる魅力

2025.07.04 08:00
ドラマ「天狗の台所 Season1」より

駒木根葵汰・塩野瑛久・越山敬達らが出演した田中相による漫画原作のBS-TBS系ドラマ「天狗の台所」。都会の喧騒から離れた自然豊かな田舎を舞台に、旬の食材を使った料理や四季折々の風景を通して描かれる人間模様が多くの視聴者の心を掴んだ。2023年のシーズン1に続いて放送された2024年のシーズン2が、2025年5月にBlu-ray&DVD BOXとして発売されたばかり。大興奮のスペクタクルではなく“静かな”グルメドラマが注目を集める昨今、さらにファンタジー×田舎暮らしのスローライフを織り交ぜた「天狗の台所」の魅力を振り返ってみる。

山奥で始まった“天狗”の兄とニューヨーク育ちの少年の生活

「天狗の台所」は2023年秋にSeason1が放送されたあと、2024年秋にはSeason2を放送。駒木根・塩野・越山といった若手実力派のホープが集い、豊かな自然のなかで暮らす兄弟たちの奇妙な生活を描いた。シーズン2はギャラクシー賞マイベストTV賞の2024年11月度マイベストTV賞月間賞にノミネートされるなど、原作ファンだけではなく多くの視聴者から注目を集めた作品だ。

物語は越山敬達演じる海外育ちの少年・飯綱オンが、父母から「14歳の誕生日を迎える1年の間は、天狗の里で隠遁生活をおくらなければならない」と聞かされるところから始まる。唐突に自分が“天狗”の家系だと知らされたオンはニューヨーク育ちの現代っ子。当然混乱極まるなか、日本にいるという兄・飯綱基(駒木根)のもとを訪ねることに。

“修行”を命じられたオンだが、基の暮らしぶりは実に穏やか。これまでほとんど会話も交わしたことがなかった兄との共同生活にはネットもテレビもなく、豊かな自然と静かな日常だけが流れていた。特に基は土地で採れた食材に目がないようで、さまざまな料理をオンに振舞ってくれる。

同ドラマ最大の魅力として挙げられるのは、「何もしない時間」の豊かさを教えてくれる点だ。利便性を求めて現代社会を忙しく生きる現代人にこそ刺さる、自給自足と地域で助け合う田舎スローライフ。朝起きて薪を割り、野菜を摘み、食事を作り、一緒に食べる。一つひとつの行為に手間をかけ、昔ながらの“丁寧な生活”を送る贅沢さはひどくまぶしい。

ちなみに本作は天狗がテーマということもあり、基の背中には羽が生えていたりといったファンタジー要素も含まれている。しかしこれらの異能はあくまで生活の一部として描かれており、超常的な力で日常を破壊して面白おかしく暮らす…ということではない。天狗の里の日常として馴染んでいる点も、視聴者が安心して楽しめる要素だ。

息を飲むような自然の美しい映像と豊かな食

本作においてもう1つの見どころは、旬の食材を使った美味しそうな料理。1話ごとに畑で採れた旬の野菜や川魚などの食材が登場し、それらを使った基の料理はどれも丁寧な手仕事が光る。食材の美しさ、調理の音、湯気の立つ瞬間、そして味わう兄弟の表情。まるで料理番組のように美しく、それでいて派手な演出や大げさな効果音もない。自然の恵みで作られた料理は、穏やかなストーリーのなかで日常の1コマとして生活を彩るのみだ。

都会っ子だったオンが、食を通じて少しずつ変化していくようすも見逃せない。将来はプロゲーマーになるのが夢だったオンは、いかにも現代を生きる少年の姿そのもの。自らの意思とは無関係に修行で訪れた当初は無表情で口数の少なかったオンが、自然の豊かさを教えてくれる兄と天狗の里の面々に対して徐々に心を開いていく。ゆっくりと時間が流れる田舎の共同生活を通じて兄弟の距離が縮まっていく過程は、現代社会に生きる私たちが忘れかけていた人間らしい本来の生き方や大切なものに気づかせてくれる。

「天狗の台所」は天狗の血を引く兄弟というファンタジーな設定を基礎としているが、その実は“現代社会の生き方”を描いたドラマとも言えるだろう。人と競争せず、自分の物差しで活きる。自然とともに生き、手をかけて育てられたものを丁寧に味わう。家族と顔を合わせて言葉を交わし、お互いを理解しながら絆を深めていく。これは簡単そうに見えて、実は難しい。便利でさまざまな情報が飛び込んでくる現代生活は、“そうでなくてもいい”という選択肢をあっさり忘れさせてしまう。

もちろん、田舎の暮らしだって理想郷そのものではない。オンは本作のなかでも野菜の苗に水をやり忘れ、枯れさせてしまう。嵐が来れば大切に育てた野菜はめちゃくちゃになり、生活費を得るために商売するのだってひと工夫が必要だ。

都会が最高でも、田舎が最高でもない。ネット環境がないことに不満たらたらだったオンは、シーズン2では友人をキャンプに誘うまでに変化した。それでいて海外の友だちとも連絡を取るなど、ネット社会の恩恵もしっかり受けている。どんなことにもバランスが大事で、それぞれに合う過ごし方があるはず。「天狗の台所」はそんな当たり前のことを、都会っ子なオンと田舎暮しを愛する基を通じて教えてくれる。

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