荒廃した”狭間の地”にもほのぼのとした交流があった…円卓に集まった仲間たちの日常に「こんなエルデンリングもいい」の声【漫画】

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は作者の春壱さんがX(旧Twitter)に投稿された『円卓に初めてやってきたローデリカの話』をピックアップ。

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本作は世界累計出荷本数2500万本を超え(2024年6月時点)、世界的大ヒットとなったダークファンタジーRPGゲーム『ELDEN RING』のコミカライズ作品だ。作者の春壱さんが第一話にあたる本作をX(旧Twitter)に投稿されたところ、3千件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、作者の春壱さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

ローデリカが円卓へやってきた日

緊張の面持ちで円卓へやってきた少女ローデリカ。殺伐とした壊れた世界の狭間の地で、ローデリカを迎えたのは円卓の仲間たち。女性の気持ちを分かちあいたいフィア、新人を支えてあげたいロジュール、祈祷を教えたい気持ちが暴走気味のコリン…。ゲームでは暗く荒廃しきった狭間の地。交わることさえ想像できなかった世界だが、実際には交流していたかもしれない…？

これは絶望の戦いの中でさえ、”もしかしたら”あったであろう日常や交流の可能性を描いた作品だ。ダークファンタジーのゲームから一転、世界観は残しつつもほのぼのとした彼らの会話やギャグに読者から「めっちゃいい」「幸せな気持ちになれた」「見ごたえがある」など多くの反響が寄せられている。

作者・春壱さん「NPCたちがどこか地続きの世界でちゃんと"生きている"というのを想像して」

――『ELDEN RING 遠き狭間の物語』でこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

ゲーム本編がとても重厚で緊張感のある世界観なので、それを共有しつつも肩の力を抜いて気軽に読んでもらえるような絵柄・ストーリーにするというのは常に意識しています。

プレイヤーの皆さんはボス戦のたびに手に汗握りながら全身力んでると思いますので…笑

あとは、「遠き狭間」に限らずですが、自分たちと同じように、漫画に登場するキャラクターたちにもなるべく「日常」や「生活」があるという現実味を出せるといいなと思いながら描いています。

ゲームの中ではプレイヤーの都合に合わせて動いてくれるNPCたちですが、見ていないところではきっと彼らも眠ったり着替えたり、怒ったり喜んだり疲れたり、ご飯を食べたあとはうがいくらいするんだろうな、という、どこか地続きの世界でちゃんと「生きている」というのを想像して、一緒にワクワクしてもらえたら嬉しいなと思います。

――冒頭のカラー画像がとても美しくて、物語性を感じるものでしたが、作画のうえで難しかった点や苦労した点はありますか？

ありがとうございます！

個人的には、エルデンリングの世界観と自分が描いていて楽しい線の親和性が高いと感じているので、基本的に作画で苦労を感じることはほとんどありません。

元々ファンタジーや動物を描くのが好きなので、自分では絶対に思い付かないであろうデザインのキャラクターたちを描くのは、見た目がゴチャゴチャしているほど燃えます。

ただ、油断すると楽しくなってつい描き込みすぎてしまう癖があるので、読者さんが読み疲れないように線の引き算を意識するのはまだまだ塩梅を探りながら作業しているので少し難しいです。

――本作の中で特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

どのエピソードも本当に楽しく描かせていただいて、初めて挑戦したことも多いです。

ならず者編のようなグルメ漫画を描いたのも初めてで、トビウサギ編のようなセリフのないサイレント漫画も今回が初めての挑戦だったので思い入れがありますし、絞るのはなかなか難しいですが…

強いていうなら、お話を作るときに一番気持ちが揺れ動いていたラーヤ編でしょうか。あまりに気持ちを込めすぎてしまって、ネームの段階からほぼずっと泣きながら作業していました。

特に、静かに泣いたラーヤをタニスが抱きしめるシーンはイメージ通りに描けたので良かったです。

エルデンリングという枠組みを越えて、ちびラーヤのような寂しさ、タニスのような葛藤を抱えている人に体温を伝えられたらいいなと思いながら描きました。

――今後の展望や目標をお教えください。

魅力的なキャラクターがまだまだいるので、できるだけたくさんのNPCを、できるだけ長く描かせていただけたらいいなというのが一番ですが。

エルデンリングをプレイしてみたいけど難しそうでまだ手を出せていない人、途中でプレイを断念してしまった人、まだまだプレイ中の人、一度クリアしたっきり忘れつつある人たちが、「やってみようかな」「まだ出会ってない要素があるかも」と一人でもゲームをプレイしてくれる人がこの漫画で増えたら嬉しいなと思います。

そしてNPCイベントを進めていくうちに、遠き狭間を思い出してイベント分岐で葛藤してほしいですね。笑

私自身フロム・ソフトウェアさんのゲームにとても影響を受けたファンのひとりでもあるので、少しでもそういう素敵な出会いのお手伝いができたら最高です。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

いつも読んでくださって本当にありがとうございます！

こんなにも世界中で愛される作品の看板をお借りして漫画を描かせていただくというのは緊張も大きかったですが、連載が始まってからたくさんの温かい感想をいただいていて安堵と嬉しさでいっぱいです。

フロム作品をクリアした後の、嬉しいけど、さみしいような…満足感の中になぜかぽっかり穴が空いているような、あのなんとも言えない特別な気持ちを大切に思い出しつつも、ほっこりじんわりと温かさが残るような漫画にしていけたらと思っています。

「YOU DIED」に疲れたときは、ぜひ遠き狭間の物語で休憩してください。

引き続き、ゆるりお付き合いいただけたら嬉しいです。