

川谷絵音、こだわりの初エッセイで新境地拓く「文章も“リズム”だと思っている」

indigo la End、ゲスの極み乙女、礼賛など5つのバンドを掛け持ちしながら、役者やタレント、そしてアパレルプロデュースなど多彩な活躍を見せるアーティスト・川谷絵音。そんな川谷がこの2月に上梓した初著書「持っている人」(KADOKAWA刊)では、新たな才能とこれまでに見せていなかった一面をのぞかせている。本作は、川谷が自ら筆を取り、「どこへ行っても事件に巻き込まれてしまう」日々を、時にシニカルに、そしてユーモラスに描いたエッセイ。川谷が「すごく良い経験になった」という本作の執筆について、率直な思いを存分に語ってもらった。
「文章も“リズム”だと思っている」
──最初はエッセイではなく、小説を書こうと思っていたそうですね。
川谷:確か2018年だったと思うんですけど、ある出版社から「小説を書いてみないか」と声をかけてもらって。その後もいくつかの出版社から機会をいただいたのですが、執筆を進めていくうちに「これはちょっと無理かも」って諦めて、執筆からは遠ざかっていました(笑)。そんな時に、今回の編集者さんに声をかけてもらって「もう一回書いてみようかな」と決心しました。もともと小説で進めていたのですが、小説家のカツセマサヒコさん(indigo la Endのアルバム『夜行秘密』にインスパイアされ同名小説を出版)から、小原晩さんのエッセイ集をいただいたんです。読んでみたら文体も好みだったし、ものすごく面白くてあっという間に読み終わったんです。その影響もあって「こういうエッセイを書いてみたい!」と思い、そこからエッセイにシフトしたのがそもそものきっかけですね。
──実際に書き始めてみて、いかがでしたか?
川谷:エッセイはエッセイで大変でしたね、当たり前なのですが(笑)。以前にもちょっとしたコラム連載をいくつかの雑誌で連載していましたが、今回は「もっとちゃんとした文章を書かなくちゃ」という気負いもあって。ネタがないと膨らませるのも難しかったし、歌詞とは違って「状況説明」をしっかりしなきゃならないじゃないですか。そこが思いのほか難しかったです。
──歌詞はメロディや音と一緒になって伝わってくるものがありますからね。
川谷:そうなんですよ。「行間を読んでほしい」っていう書き方が歌詞なら出来るし、あえて説明しすぎない余白が大切だったりもする。でもエッセイだと、それは通用しない場合が多いんです。正直、「こんなに説明しないといけないのか……」と途中で面倒くさくなる瞬間もありました(笑)。それに、全部説明するのってなんだかむず痒いというか、恥ずかしいと思ってしまうんです。
──でも、冒頭でご自身の生い立ちを描写しているところなど、まるで音楽を聴いているようなリズムを感じました。
川谷:リズムはめちゃくちゃ意識しましたね。文章も「リズム」だと思っているので、句読点の位置や接続詞の使い方もこだわりました。一つのセンテンスだけ読んで成立していたとしても、全体を通して読んだ時にちゃんとスムーズに流れるかどうか、ちゃんとリズムを感じられるかどうか。そこは歌詞を書くときのこだわりに近いものがあるかもしれないです。
──本の中にはスピリチュアル的なエピソードや、いわゆる「自己啓発本」に対するご自身の見解も書かれていますよね。自分の「陶酔レベル」を確認することが大事だと。
川谷:そこもめちゃくちゃ気をつけました。自己啓発本って、どれも同じようなことが書いてあって恥ずかしいなと思うことが多くて(笑)。でも、そういう本ってめちゃくちゃ売れるじゃないですか。人間ってやっぱり啓発されたい気持ちがあると思うんですけど、できるだけ「自己啓発本」にはならないようにしたかったんです。実は最初、帯に「これは自己啓発本です」って書いて、でも実は全然違うっていうネタをやろうとしていたんですけど、わかりにくいのでそれはやめました。
──(笑)。でも、そういう俯瞰した視点が文章にも表れていますよね。ネタを探していく中で、影響を受けた作家や参考にした文章はありますか?
川谷:普段読んでいるものは、バイオレンス系の小説ばかりなので(笑)、今回の執筆にはまったく参考にならなかったですね。ただ、先ほども話した小原さんのエッセイは、ちょっと意識しましたね。クスッと笑える日常の話がすごく面白くて、そういう雰囲気は自分の文章にも少し取り入れたいなと思いました。もちろん、最終的には違うものにはなったのですが。
──真面目なエピソードと、ちょっと笑えるエピソードのバランスも絶妙でした。
川谷:真面目すぎると恥ずかしくなるけど、僕の内面が知りたい人もきっと多いと思うので、そのバランスも意識しています。たとえば長田くん(長田カーティス:indigo la Endのギタリスト)とmixiで出会ってメンバーになるエピソードも、最初はふざけて書いていたんですけど、後半ではちゃんと真面目な話も入れて仕上げていますし。
「エッセイを書くことはすごく良い経験になった」
──「姪っ子に尊敬されたいから売れたい」という川谷さんの心情も吐露されていて、そこは今まで知らなかった一面でした。
川谷:それは、家族から姪っ子の運動会の映像が送られてきたのがきっかけでした。競技の中で使われている楽曲が、どれも全然知らなかったんですよ。気になって調べたら、それがサブスクのランキングで100位以内に入っていて「こういう曲が今、小学生に刺さってるんだな」と。「音楽に勝ち負けなんてない」と思いつつ、少なくとも運動会で流れる曲と流れない曲っていう世界線において、完全に僕は「流れない側」の人間だと思ったら悔しくて(笑)。それをきっかけに、「自分の曲で姪っ子たちが踊ってるところを見てみたい!」という気持ちが芽生えました。ただ、彼女もこの4月から中学1年生になるので、もう運動会もあと何回あるかわからない。そのうちになんとかしたいです。
──実際に執筆する中で、「ここだけは譲れない」と思った部分はありましたか?
川谷:「最後にオチをつける」というのはすごく意識しました。歌詞って別にオチがなくても成立するけど、エッセイの場合、オチがないと読後感があまり良くなくて。
──確かに、どのエピソードも見事にオチがついていて、構成もすごく考えられていると感じました。
川谷:書き始める段階ではオチが決まってなくても、書き進めるうちに記憶がよみがえってきて自然とオチがつくというか。歌詞の場合、最初の時点である程度の流れも見えているしオチのないものの方が多いので、そこもまた違った面白さを感じた部分ですね。
──エッセイを書くことで、ご自身の考え方や物の見方に何か変化はありましたか?
川谷:日常の出来事を、ちゃんと覚えておこうと思うようになりましたね。「これ、書くかもしれないな」と思うことがあると、些細なことでも記憶に留める意識が強くなったというか。エッセイを書き上げたことで自分の心を整理できたし、「あのとき自分は何を考えていたのか」を鮮明に残せるというのは、すごく大きいですね。読み返したときに、そこからまた歌詞が生まれることもあるかもしれない。それに、書くことで自分の気持ちを理解する部分もありました。もちろん、言語化するのは大変な作業なのですが、それがうまくいったときの爽快感は、歌詞を仕上げたときのそれとはまた違うものがある。そういう意味でも、エッセイを書くことはすごく良い経験になったと思います。
──エッセイを経て、また小説に挑戦したい気持ちもありますか?
川谷:実は書きたいテーマがあって、最近、自分の中でタイトルも決めたんですよ。おそらく短編集という形になるかなと。エッセイを書いたおかげで長い文章を書くことにも慣れたし、今度こそ完成させられる気がしていますね。
◉取材・文=黒田隆憲 撮影=藤巻祐介
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