物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋、青年剣士・信次郎役の藤岡真威人(右)、主演の北大路欣也が本作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」の制作秘話を明かした

北大路欣也、“新しい風”を絶賛「若い方々はものすごいエネルギーを持っている」<三屋清左衛門残日録 春を待つこころ>

2025.03.01 10:00
物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋、青年剣士・信次郎役の藤岡真威人(右)、主演の北大路欣也が本作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」の制作秘話を明かした

時代劇専門チャンネル×J:COMによる人気オリジナル時代劇シリーズ最新第8作「三屋清左衛門残日録 春を待つこころ」が、3月8日(土)19:00より時代劇専門チャンネルにて放送される。本作は、藤沢周平の小説を北大路欣也主演で映像化した2016年から続く人気時代劇シリーズ。前藩主用人の職を退き、隠居した三屋清左衛門の第二の人生を、身の回りに起こるさまざまな出来事と共に描く。WEBザテレビジョンでは、主人公の三屋清左衛門を演じる北大路と、本作の新たなキャストである青年剣士・信次郎役の藤岡真威人、物語の鍵を握る巫女・照日役の大友花恋にインタビューを実施。1956年のデビュー作から時代劇に数多く出演してきた北大路と、長年続くシリーズに挑んだ藤岡と大友に、お互いの印象から本作や時代劇の魅力までを語り合ってもらった。<インタビュー前編>

「三屋清左衛門残日録」シリーズの誕生秘話…「まだ自分には早いんじゃないかと不安があった」(北大路)

ーーまずは北大路さんが思う、時代劇「三屋清左衛門残日録」が愛され続ける理由と、主人公・三屋清左衛門の魅力を教えてください。

北大路:初めてこの作品に触れたのは、仲代達矢さんが主演を務められていた「金曜時代劇 清左衛門残日録」(1993年、NHK総合)で、私もそれをずっと拝見していました。それから何年か経って、このお話をいただいたとき、私はまだ60代の半ばぐらいだったんです。それで改めて原作を拝読して、まだ自分には早いんじゃないかと。清左衛門についていけないのではないかという不安があったので、「申し訳ないですが、少し待っていただけますか」とお返ししたんです。それから5年ぐらい経ってから、もう一度お話をいただいたんです。これはもうご縁ですよね。絶対にやらせていただこうと思って、70代に入ってからこの作品を撮り始めました。

ーー約5年越しの始動ということで、実際に撮影してみてどうでしたか?

北大路:今までの経験を清左衛門の中にどう反映できるか、清左衛門とどう同化していけるか、そういう自分の中の挑戦にワクワクするような感じで、第一作目は撮影させていただきました。藤沢(周平)先生の独特の世界があるんですよね。これまで時代劇もたくさんやらせていただいてきましたが、それまでとはまた雰囲気が違うんですよね。時代劇ではあるけれど昔のことをやるという感覚は全くなくて、これからのことをやるという感覚です。新鮮な感じを覚えました。その世界観が愛される理由に繋がっているのだと思いますし、もちろん私だけでなく、監督さん、スタッフの皆さん、それから共演者の皆さんがそれぞれの立場でこの作品に対して強い思いを持って支えてくださっている。お互いの間で出来上がる雰囲気もまた新しく流れてくるんです。そういったものからこの作品は命をもらっている気がします。ですから、現場で皆さんと会うとすごく安心感があって、ほっこりするんですよね。

ーーなるほど。確かに本作は独特な雰囲気と世界観がありますよね。

北大路:スタッフの皆さんが、毎回細部にまで力を入れて世界を作り上げていく。その出来上がった世界でその役をどう生きるか、自然にその世界にどう接していくか…そういうのが我々の仕事です。これだけ丁寧に作ってくださったら、誰だって燃えますよね。

大友:没入感が本当にすごかったですよね。普段観光客の方がいる滝のところに祠やお社とかを建てたり、何気なく触ったものが実は美術さんが用意していた道具だったり。それぐらいリアルで、その空間が私たちを役柄として生きやすい世界にしてくださっていて、「すごいな」といつも感動していました。

藤岡:そうですよね、鳥居も本物かセットか分からなくて、美術さんが建てたと知って驚きました。

本作らしい柔らかく心が安らぐ“焼き芋”のシーンが印象的(藤岡・大友)

ーーそんな世界観が細部まで作り込まれた本作で、特にお気に入りのシーンを教えてください。

大友:私が個人的に撮影の中で印象に残っているのは、焼き芋のシーンです。私が演じた照日と藤岡さんが演じられた信次郎の2人にとって、出会いとなる和菓子のシーンや、後半にかけて思いが通じ合うシーンとかもすごく重要なシーンなんですけど…。

藤岡:分かります!僕も同じ答えを思い浮かべていました。

大友:何気ないシーンだと思うんですけど、 照日としては苦しい場面が多い中で、あのシーンは柔らかくて心が安らいでいるんですよね。撮影の待ち時間も実際にお芋が焼けるまで、みんなで葉をつついて待っていて、すごく和みました。あのシーンのゆったりとした心地良さが印象に残っています。

ーー藤岡さんは?

藤岡:僕も焼き芋のシーンが好きなので、以下同文ですね。

一同:(笑)

藤岡:照日は暗い表情が多い中で、あのシーンは珍しく明るいんですよね。僕は終盤で、照日が「信次郎様!」って言うときの笑顔も大好きです。信次郎としても視聴者の皆さんにとっても、きっと一番見たかった照日の顔だろうなと。すごく素敵で、何かが浄化されるような感じがしました。

北大路:私は伊東四朗さんとのシーンすべてですね。四朗さんと初めてお会いしたのは、確か30代かな。テレビで初めて共演させていただいて。それまでに四朗さんの出てるテレビはバラエティも含めて、たくさん拝見していたので一方的に親近感がありましたし、先輩でもありますから、特別な安心感みたいなものがあるんですよね。私も今は81歳(取材時)になりましたけど、四朗さんは87歳ですから、四朗さんが持ってらっしゃる一つの人生観みたいなものが芝居を通して伝わってくるんですよ。四朗さんがこの場面にはこれがふさわしいと思えば、私はそれについていくし、私なりに芝居を通して投げかけると、四朗さんも「おっ!」と受けてくださる。その芝居のキャッチボールを通して、毎回一緒に雰囲気を作り上げていける感じが、心地良いんですよね。

「こんちくしょう負けてたまるか…っていう気持ちがあった」

ーー伊東さんとはベテラン同士で気心が知れた仲の北大路さんですが、藤岡さんや大友さんをはじめ若い役者さんとの共演で心がけたことはありますか?

北大路:緊張感がありますね。若い方々は、素直さも持っていらっしゃるし、心身ともに美しく、足は強いし、リズム感もある…やはりすごく新鮮です。ものすごくエネルギーを持っているので、「こんちくしょう負けてたまるか…」っていう気持ちはどこかに少しありますね。だから、歩くときも負けないようにとか(笑)。今回お二人と、役として初めて現場で対面したときの感情が自分で想像してたのとはまた違って、役者としての魅力を改めて感じました。彼女(大友)は、何か寂しそうな顔をすると「大丈夫?」と手を差し伸べてあげたくなるような雰囲気がありますし、彼(藤岡)はリズム感がありつつ、鋭さも持っている。剣道の練習の場面を見ていたんですけど、お父さん(藤岡 弘、)の血をちゃんと引いているなと思いました。お父さんからきっと何か聞いてるなと思うぐらい、すごいんですよ。お二人とも、この役は絶対にうまくいくという安心感がありました。あと余談ですが、彼には私が芝居で京都弁が出てしまうと、直していただいて…(笑)。

一同:(笑)

藤岡:違います…違うんですよ!(笑)

北大路:京都は私の故郷だから、行くとどうしても京都弁が出てしまう。スタッフの方も京都の方が多いから、懐かしくなってふっと戻っちゃうんですよね。

藤岡:でも、僕も皆さんから標準語について聞かれて、「こうが正しいと思います」って言った後に、自分のセリフでなぜか訛っちゃって、北大路さんに指摘していただくっていうこともありましたよね(笑)。

一同:(笑)

北大路欣也の眼力は、名優と対峙してきた賜物

ーーそうだったのですね(笑)。実際に藤岡さんは本作出演にあたって、父である藤岡弘、さんから何かアドバイス等はあったのでしょうか?

藤岡:実は本作の前にも時代劇に出演して、そちらが沖田総司役だったんです。沖田役は剣さばきに特徴があって、流れるような舞に近いような動きをするんですよね。その役作りをして、体に沖田の剣さばきが染み付いている状態で本作に入りました。信次郎の剣さばきはまた違って重厚感があるので、その違いに苦労していたとき、父に相談しました。「僕なんかに聞かずに現場で北大路欣也さんを見なさい。その場で見て学びなさい」と。確かにそうだなと思ったんです。今回の北大路さんは、道場で門下生と打ち込むシーンがあって、「ここだ!」と思ってよく見ていました。

「1、2…」と打ち込みをするだけだったのですが、他の方とは違っていて。言語化が難しいのですが、 軽く打ち込んでいるだけなのに、ぐっと身が入る感じがあって勉強になりました。そこで僕もいろんなことを学ばせていただいて、自分の殺陣のときに、北大路さんの刀捌きを汲みとって取り入れてみたんです。現場で所作を学ばせていただき、すぐに自分で試すことを繰り返していました。

北大路:私も沖田総司役を昔やらせていただいたことがあってね。私も同じような思いで、当時現場にいたのを覚えています。あと、1996年に「徳川剣豪伝 それからの武蔵」をやったときにお父さんと芝居をやったことがあるんですよ。藤岡さんはすごかった。君を見るとそれを思い出す。だから私も、君と向き合うときにある意味で緊張感を持てたんだよね。それはいろんなことをお父さんに話すだろうな、何言われるかわかんないぞという意味でも(笑)。

藤岡:変なこと言わないですよ!(笑)

北大路:お父さんも君も私にとって仲間なんです。共に汗をかいた世界で生きた人間という繋がりがあると思っています。

藤岡:うれしいです。北大路さんは三屋清左衛門として皆さんと接してくださるときは、柔らかくて包容力に溢れていますが、刀を手にするとガラッと変わるんですよね。眼力と言いますか、波動と言いますか…放たれるオーラが全く違うんです。それはどうやっていらっしゃるのかなと…。

北大路:あなたのお父さんをはじめ、いろいろな方々と刀を交えたり、先輩方から学んだり、殺陣師の方から教わってきたことが、自然と体現できているんだと思います。君はこれからさまざまな方と出会って勝負するだろうし、斬りたくなくても斬らなきゃいけないこともある。斬られたくなくても斬られるときもある。

私は「座頭市物語」(1974年ほか)で勝(新太郎)さんに斬られて、「うぁー…」って唸ったんですよね。そしたら勝さんが「なんで声を出すんだ」って。「いや、斬られたから」って答えたら、勝さんが「俺は名人だぞ。だから、いつ刀が入ったか分からないんだよ。だからサッて斬られたら俺の顔をただ見ろ。それで倒れて、痛くも痒くもねえって決心でいけ」って言われて。今まで私は斬られたら「うっ…」て唸るものだと思っていて、実際にそういう芝居をしていたけど、それとは全然違う芝居もあった。そういうことをあなたたちもまたこれから経験していくのだと思います。

「世の人すべてが二世、みんな家族を守って生きていく」

ーー北大路さんは藤岡さんのことを先ほど「仲間」とおっしゃっていましたが、それは北大路さんも同じくお父様がスターという境遇も関係あるのでしょうか?

北大路:私たちがたまたま俳優という職業であるがゆえに「二世」と言われていますが、世の中に生きている人みんなが二世ですよね。スポーツ選手や目立つ職業だと「二世」と言われて、私は悩んだり自分の中で葛藤があったりした時期もありました。小さい頃はめんこ(の絵柄)で親父(市川右太衛門)が出てくるんですよ。それで負けると、「お前の父ちゃん弱いな」って言われる。でもある日、そう言ってくる人にもお父さんがいるってことは同じだなという思いが、どっかから生まれてきたんです。二世として素直に、私は私の家族を守って生きていくんだなと。君だってそうでしょ?お父さんと対比されたことはある?

藤岡:やっぱり僕も父と同じくヒーロー的な作品をやらせていただく機会が多いです。でも、僕は“二世の葛藤”みたいなものはあまりなくて苦しんだり悩んだりはしてないんですよね。むしろ、今こういう状況をいただいて、父が有名であることは自分にとってプラスに捉えています。

北大路:…すごい!

藤岡:父の子であることに感謝しています。こういう現場でのご縁もそうですし、僕にとっては本当にプラスなことしかないと思っています。

北大路:いや、これは本当に素晴らしい。自分の境遇に素直に感謝できるのは、本当にすごいと思います。その思いを大切に、いろいろなことに挑戦してほしいですね。僕が20歳の頃は、君の思いのところまではまだまだ届いていなかったな。なかなかできることではないと思います。

大友:そうですよね。そのことに関して悩まれている方の話を今までお聞きしたことがあったので、私も驚きました。藤岡さんは「言葉に嘘のない方」という印象があります。それは、撮影を通して肌で感じていて。お芝居をしているときも、普段も思ったことを真っ直ぐちゃんと相手に届けるという意識がとてもある方で、そこをすごく尊敬しているので、 今話されたことも、まさにそうなんだろうなと思って感動しました。

構成・文=戸塚安友奈

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