<モンスター>最終話を前に加藤春佳Pが語る制作秘話、「ワクワクするお芝居をしてくださる」という趣里の“紅茶シーン”裏話も
趣里が主演を務める「モンスター」(毎週月曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)が、12月23日(月)にいよいよ最終回を迎える。同作は、弁護士・神波亮子(趣里)が、時に法が追いついていない令和ならではのさまざまな問題と向き合い、まるでゲームのように法廷闘争に立ち向かう異色のリーガル・エンターテインメント。
このたび、WEBザテレビジョンでは、加藤春佳プロデューサーにインタビューを実施。キャスト陣の起用理由など制作秘話と、最終回の見どころを聞いた。
リアルに起きている事件を取り上げながら、複雑な様相を見せる展開
――本作はオリジナル作品ですが、制作に至った経緯を教えてください。
脚本家の橋部敦子さんが弁護士ものをやったことがなく、挑戦してみたいというところから企画が立ち上がり、月10枠でやってみましょう!とスタートしました。
――第2話のAIの著作権や第8話の闇バイトなど、最近よく聞くような社会問題ですが、取り上げるテーマはどのように決められたのですか?
第1話は結構前から台本が作られていたので、第2話以降でいうと、2023年の10~11月ぐらいから題材のアイデア出しをしながら作っていきました。ドラマを撮り始めるまでに時間的な差異がなく、今リアルに起こっていることを題材にしやすい状況だったので、この間こういう事件があったよね、こういうニュースがあったよねと、雑談レベルで話していく中で、これを取り上げたら面白いんじゃないかと決めていきました。
今回の作品は、1話の中でも、例えばベースは闇バイトみたいな題材だけど、実は別なところに肝があってと、要素がいろいろ詰め込まれています。その別の要素も、実際に起きた事件からアイデアを借りたりしながら作っていきました。
――今お話いただいたように、導入の事件から後半になっていくと、「えっ」と驚くようなところに向かっていくのが面白いと思いました。その構成は橋部さんが作り上げたのですか?
打ち合わせを一緒にしているプロデューサー陣と橋部さんとで一緒に作り上げていきました。山場をどんどん作っていきたいということと、単純に一つの話だけで終わりたくない、あえて複雑にしたいという思いがありました。というのも、私としては、人間はそんなに単純なものではなく、実はこの人がこうやって発言している背景にはいろいろな物語があるんだろうなと想像することが多いんです。なので、単純に話が進んでいくというよりは、その背景にあるものをちゃんと描くことができたらと思っています。
なぜこのタイトルなのかを考えてもらえるように
――制作するにあたって、大事にしたことは?
「モンスター」というタイトルです。「なぜこのタイトルなんだろう」というのを毎話考えてもらえるようにしていこうと念頭に置いていました。
単純に怪物っていうことなのか、誰かのことなのか。亮子がモンスターなのかもしれないし、毎話描かれる人たちがモンスターなのかもしれない。事件が引き起こされた要因それぞれがそうなのかもしれないし、あるいは、人ではない何か、社会の空気みたいなものなのかもしれないし…というように。いろんなところにモンスター的なものが潜んでいるかもしれないということを、見ている人たちが感じ、じゃあ自分たちの世界だったらどうだろう…と考えてもらえるところまでいけたらいいなと思って作っています。
亮子は“法”や自分を俯瞰で見られる人
――視聴者の方からの反響はどのように受け取られましたか?
すごく好意的に、作品を楽しんでくださっている声が多かったというのが最初に感じたことです。神波亮子という趣里さん演じる役柄への反響が大きかったのもすごくうれしかったですし、弁護士事務所のメンバーたちへの反響も大きくて。亮子に協力するコンビニ店員の尊(中川翼)を含め、どのキャラクターのことも見落とさずに注視してくださっている印象がありました。
――亮子というキャラクターはどのように生まれたのでしょうか。
“国民は法の下(もと)に平等”と憲法にありますが、法を俯瞰(ふかん)して見ることができる視点を持った人にしたいというのが橋部さんの中にあり、そこが亮子の根幹のスタートでした。
法律は人間の判断のもとに作られているものっていうことを、意外と見逃しがちだなと。だからといって法律を作っている人を否定するわけではなく、それとは別に、人が法を“上”から見てても悪いことではないし、そういう視点をもった人がいても面白いんじゃないかと思うんです。そして法以外のあらゆるもの、自分のことも俯瞰で見てるような、そんな人物としてどんどん出来上がっていった気がします。
なので、各案件において依頼人が本当に思っていることや、依頼人も気付いていない部分も彼女は“観えている”。そういう視点は彼女独特のキャラクター性だと思います。
――では、亮子の相棒になる杉浦(ジェシー)、亮子の父・粒来(古田新太)はどうですか?
杉浦は、亮子が普遍的ではない人だと見えるようにしたいというところから、なるべく普遍的な視点を持った人物で、視聴者と同じ目線で亮子に対して驚いてくれたり、おかしいと思ってくれたり、「普通はこうだよ」みたいなことを言ってくれる人を作りたいというところから出来上がっていきました。
粒来は、亮子と似たような感覚を持っている人。親子だなという感じは作品の中で出せているかなと思います。一般的に見たらあまり触れたくないとか、接したくない人物、やりたくない案件なども、そこに何もバイアスを感じることなく接することができ、行動できる人物です。周りから見てどうかとか、常識的にどうかみたいな基準では、粒来と亮子は動いていない形にしました。
期待を「超越した」趣里の演技とジェシー&古田新太と3人で絡む面白さ
――そのメイン3人のキャスティングについて教えてください。
まず趣里さんが決まりました。得体の知れない弁護士を演じていただくにあたって、趣里さん自身も読み切れない部分がある方だなと感じていました。連続テレビ小説「ブギウギ」(2023-2024年、NHK総合ほか)前までと、「ブギウギ」後の印象がだいぶ違いますし、幅がすごくある方で魅力的だなと思っていたので、キャスティングをさせていただきました。
亮子を演じてもらったら、想像以上の引き出しと、さらなる幅が出てきて。もともとすごい方と思ってオファーはしていたものの、それを超越する形を出してきてくださったので、見ていてすごく楽しいし、ワクワクするお芝居をしてくださるなと思っています。
趣里さんの次に決まったのが古田さん。得体の知れない娘を持つ父っていうのは絶対に得体の知れない人で、物語の構成上、若干闇を感じるような人にしたいところもあったので、古田さんのような、何か読み切れない怖さみたいなものを醸し出せる方がいいなとオファーしました。
そして、この親子が揃ったところで、2人の間に立つというか、3人が並んで立った時にどういう人がいたら面白く見えるだろうかと。ビジュアルの面でもそうですが、この3人が絡んだらどうなるんだみたいなことを想像した時に、いろんな方の名前が挙がる中で、ジェシーさんという案が出た時に、「見てみたい」と思いましたし、イメージが沸きました。役的にも振り回されたり、どちらかというとリアクターというか、視聴者と同じ目線で動いていって、一緒に驚いて、一緒に悩んで…という反応をしてくださるお芝居が面白いんじゃないかという予感を強く感じたので、ジェシーさんにお願いしました。
第8話の紅茶シーンは趣里の実父ゆずり!?
――趣里さんの演技が超越したとのことですが、具体的にここがすごかったというところはどこでしょう。
この神波亮子という役は、脚本を読んだだけでは理解しきることが難しいのではないかと感じていました。撮影の最初の日は、監督とどれぐらい不思議な感じの人物の動きなのかなど擦り合わせるような感じで演じていって、趣里さんも感じられていたかもしれませんが、私たちもこれでいい気がするけど大丈夫かなみたいな不安が正直ありました。
そんな中、第1話の裁判シーンを撮影した時に、亮子がそこにいるというか、この人だからこうやって彼らから証言を引き出せるし、この人だから彼らを説得することができる、というお芝居を趣里さんが見せてくださって。そのときに第1話ができるのが楽しみだなと思いました。やっぱり亮子の一番いい味が出るところは法廷なのだなと、そして趣里さんでよかったなと感じた日でした。もちろんずっと思ってはいたんですけど、みんなに大声で「神波亮子すごいぞ!」と言えるくらい確信を持つことができたのは、その瞬間だったと個人的には思います。撮影初日に思えよってなっちゃうかもしれないですけど(笑)。
――加藤Pのお気に入りシーンは?
いろいろある中でも、趣里さん本人にもお伝えしたベストのシーンがあります! 亮子って、後ろ姿がめちゃくちゃかわいいなと思うんです。第4話で大学サッカー部のOBに体罰について聞き込みにいった亮子が杉浦を例として蹴るシーンのくだりで、何かを感じ取りながら、証言してくれる人の話を聞いている亮子の後ろ姿にカメラがじりじり迫り寄っていく演出があったのですが、私はその後ろ姿が一番好きなんです。亮子はゲーム好きなキャラクターでもあるので、裁判に勝ちたいというところが念頭にあったりもして、毎話毎話、案件に対してすごく積極的に取り組んでいくのですけど、そのどんどんのめり込んでいってる感じの巻き肩になっているような、ちょっと前のめりな姿勢を感じる背中というか、何かを感じている背中がすごくいいんです。
亮子って本当に表情が微細で、その表情も全部かわいらしくって、ころころ変わるのがすごく魅力的なんですけど、趣里さんは亮子の姿勢までも、とてもこだわってくださっているなと感じています。
――亮子のシーンだと、第2話のアイドルのダンス完コピや、第7話の昭和歌謡のカラオケシーンが趣里さん主演の「ブギウギ」を彷彿とさせたり、第8話の紅茶を淹れるシーンは趣里さんのお父様である俳優・水谷豊さんの代表作「相棒」(テレビ朝日系)をイメージすると話題になりました。
ダンスは、物語上アイドルの話をやっていて、説得する方法がそれだったということで、歌もスナックに溶け込んで話を聞き出しやすくするための手段でした。ここは橋部さんが書いてくださっていた部分だと思うので、どこまで意図してかは分からないのですが、趣里さんが踊れて、歌えるということは分かっている上で入っている要素だと思います。
紅茶のところでいうと、ちょっとしたユーモアを足してくださった監督の演出です。趣里さん、紅茶の淹れ方を練習してきてくださって。普通だったらバチャバチャって紅茶が飛び散ってしまってもおかしくないところを、すごく上手に淹れてくださってたっていう裏のエピソードがあります(笑)。
最終回の見どころの鍵は「ゲーム」
――撮影現場の雰囲気はどうですか?
今回、亮子と杉浦が勤める大草圭子法律事務所はセットを建てて撮っているんですけど、その事務所のシーンを撮影する日が一番みんな穏やかに楽しそうにして撮影できています。というのもYOUさんが所長役というのが、とても大きくて。YOUさんは、裏ですごくみんなを楽しませてくれる人なんです。趣里さんは初共演ですが、YOUさんととても相性が良くて(笑)
YOUさんがいる日は特にその事務所が湧いているというか、笑い声がめちゃくちゃ多いですね。派手に何かをやっているわけじゃないんですけど、みんなでボソボソ喋ってる内容がすごく楽しそう。大人たちの落ち着きの中で楽しい現場をやっている雰囲気がありますね。
――では、最後に最終回の見どころ、ここは見逃さないでというようなポイントを教えていただけますか。
第10話では、亮子と父・粒来の再戦が描かれましたが、その親子の戦いに、本当の敵みたいなものが出てきて、そこと戦うためにどうしていくか…というのが最終話の第11話です。当たっても当たってもびくともしない、巨大な敵と親子で戦っていくことになります。父と娘の共闘という部分は今までなかったところなのでぜひ注目してください。
ヒントとなることでいうと、亮子はゲーム好きで裁判もその一種と考えていて、お父さんも「これからが本当のゲームの始まりだ」と話しているように亮子同様、ゲーム感覚で裁判をしている節があります。そんな“ゲーム”って、確かにこういうことも起こるよね、みたいな展開になります。勝つのか負けるのかという最終的なゴールがある中で、そこに向かっていくのは全てが策略というわけではないかもしれない…ということです。ぜひ予想して楽しんで観ていただければと思います!
取材・文=神野栄子
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