コスプレか家族か…人気レイヤー・山中おくら涙の理由「障害を抱えた兄のために生きてきた」
2016年から本格的にコスプレを始め、現在は職業・コスプレイヤーとして活躍中の山中おくらさん。初めてのコスプレは中学生の頃だといい、当時は親を説得することに苦労したそう。取材中、その理由を伺うと、家族への思いが溢れて涙を流した。生まれながらに背負い続けていた葛藤について訊いてみた(前後編の後編)
ーーまずはコスプレを始めたキッカケを教えて下さい。
山中さん 最初は中学校の2年生か3年生だったと思います。福岡県にあったスペースワールドで、コスプレイベントが開催されるというのを中学生のときに知りました。そこでコスプレイヤーさんを見て憧れたのがキッカケです。
ーーそこからすぐにコスプレを始めたのでしょうか?
山中さん 中学生でお金もないし、親に相談しても「コスプレとかせんでいい」と拒まれました。けど、勉強や部活を頑張ったり何とか言いくるめて衣装買ってもらい、家でコスプレしたり、友達同士で写真を撮り合って楽しんでいましたね。
ーーご両親は、あまりいい印象ではなかったと。
山中さん 当時はコスプレに対して趣味としてあまり知られてなくて、あまりいい印象がなかったのかなと思います。特に実家の地域って2時間に1本しか電車が来ないような田舎なので余計に異文化だったのかもしれません。なので、「また意味のわからんこと言い出したな」と思われてたのかな。結局、初音ミクの衣装を買ってもらうんですけど、衣装が15,000円もしたのでびっくりしたでしょうね。
ーーちなみにご兄弟はいますか?
山中さん 兄がいるのですが、障害があって。この話をすると泣きそうです…。
(涙が落ち着いた後)
山中さん 私の兄は障害を4つ持っています。両親は兄の障害が治るなら、どれだけお金をかけてもいいと思っていたのか節約家でした。今思えば母親はメイクもしないし、服も買わずに、そのお金を全部貯めていたのだと思います。
実は私も、0歳のときに髄膜炎を患って、お医者さんからは「死ぬか、生きても障害が残る」と言われていました。幸い完治したのですが、「あんたはお兄ちゃんを助けるために神様が助けてくれたんだからお兄ちゃんの分までしっかりしてね」と親に言われて育ったんです。
将来、両親が亡くなったらお兄ちゃんを助けられるのは私しかいないから、兄のために収入が安定する公務員になろうと思って生きてきました。そのために小学校から高校まで成績がトップになるよう勉強を頑張って、国公立大学の教育学部に進学したんです。ーーそのまま公務員になったのですか?
山中さん 親族が学校や幼稚園の先生をしていることもあって、昔から先生に憧れていたのですが、やっぱりコスプレがやりたくて。進路を決めるときに教授に相談したら、「地方公務員法に、信用失墜行為の禁止というものがあり、コスプレがそれに当てはまるかもしれない」と言われたんです。それで諦めたというか、仕事だけの人生より本当にやりたいコスプレができる仕事をしようと、教育学部で学んだことが活かせるIT系の企業で教育委員会に携わる営業の仕事をしていました。
ーー安定した職業である公務員と自分がやりたいコスプレ、究極の二択だったわけですね。
山中さん 大学時代はコスプレが中心の生活だったので、コスプレをしない人生が考えられませんでした。
ーー今はもう仕事は辞めて、コスプレ1本ですか?
山中さん 2022年に会社を辞めて、この活動をしています。兄は、親の友人の紹介で就職して、貯金もできていると聞いたのでもう大丈夫そうだなと思って退職を決意しました。お兄ちゃんのために生きてきたけど、自分のために生きようと思いました。
ーーご両親の反応は?
山中さん 実は会社を辞めたことは言っていないんです。親に伝えるときは、心配をかけないように、実績をパワーポイントにまとめてプレゼンします(笑)。きっとわかってくれると思うので、30歳になったら言おうかなと思ってます。
ーーこれだけSNSで話題になっていても、バレないものなんですね。
山中さん SNSをほとんどやっていないので、情報が入ってこないのでしょうね。それにコスプレに対して今もあまりいいイメージは持っていないのかなとも思うんです。田舎だったからか、中学の頃までは私の周りではコスプレをしている人はあまりいなくて、「オタクキモい」という風潮もあったので。ただ、最近では、コスプレも趣味の一つとして浸透してきたように感じているんです。私自身はずっとコスプレが好きなので、これからも国内外の様々なイベントに参加したりSNSで発信したりして、自分自身も楽しみながらこの素敵な文化を広めていきたいなと思っています。
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