島田珠代 超ハイテンションギャグ「75歳までは続けたい」笑いも恋愛も、負けたからこそ突き抜けられた怒涛の半生
「パンティーテックス!」など唯一無二のギャグの持ち主の島田珠代が、初のエッセイ「悲しみは笑い飛ばせ!島田珠代の幸福論」を10月4日(金)に発売。人間関係や仕事、恋愛などで悩みながら生きる、今まで見たことがない島田珠代が詰まっている。今回は、ギャグや新喜劇、今のパートナーについてなど、彼女が今感じていることを語ってもらった。
突き抜けた芸風が生まれたわけ
――なぜエッセイを書こうと思われたのですか?
プライベートは結構波風があったのですが、私の芸風的にそういうことを明らかにすると笑いが減るかな?と思っていた時期もあって躊躇していたんです。でも2023年に「徹子の部屋」(テレビ朝日系)に出演させてもらって話したら、意外と反響がよくて。年齢的にも自分のことを知ってもらうにはちょうどいいのかなと思ったりしました。あと、ここまで頑張ってきた自分を知ってもらいたいという気持ちもあって。なんですが、実は私自身はまだきっちりと読めていないんですよ。一冊にまとまっているのを見て、どこか恥ずかしくなってしまっています(笑)。
――意外と知られていない、芸人人生も書かれていました。今のように振り切った芸風は昔からなんですね。
私は高校生のころ、大阪心斎橋にあった二丁目劇場に鳴り物入りみたいな感じで入りました。今でいう漫才劇場とか神保町劇場のように若手がたくさん出ている劇場で、そこに今田耕司さんとか東野幸治さんが出ていて。当時、お客さんはほとんど女子高校生で、ちょっとでも女芸人がキャピキャピしていたら、「今田さんに触れたいからこの世界に入ったんちゃう?」なんて言われて呼び出されたりするんですよ。ある日、女性芸人が20人くらいの女子高校生に囲まれて詰め寄られているのを見て、「男にならなアカン!」と思い、芸風が突き抜けたものになっていきました。
――その後、新喜劇では下ネタを含んだハイテンションのギャグをして大人気になっていきました。
新喜劇はまた大変で。二丁目劇場のノリで行ったら、おじいちゃんおばあちゃんがポカーンとなるんですよ(笑)。あと、当時の新喜劇は女性といえばマドンナ的な立ち位置が多く、「ヘンな動きはせんどいて」と先輩に言われたりして。当時は、直前まで台本通りのことをしようと考えているんですが、いざ始まってみると、「やろうか、やらないか…どっち!」みたいな感じでやってしまって、終わったら先輩に怒られる。この繰り返しでした。
でもそうこうしているうちにお客さんが笑ってくれて。新たな三枚目ができたなって感じです。ちなみに、壁にぶつけられて「優しいのね」ってオチをつけていたんですが、東野さんはめちゃくちゃで。「優しいのね」って言った後も、回し蹴りをしてくるんですよ。その斬新さに驚かされたりしました(笑)。
――デビューから5年ほどして「笑っていいとも!」(フジテレビ系)に出演するなど、活動の幅が広がりましたが、あのときはどのような気持ちだったのですか?
それこそ最初は、全国区のテレビでロケをしたくて芸人になったのでうれしかったですが、あの場に立ってもう砕け散りましたね。大阪ではパッとしていたのかも知れないですが、あくまでも舞台の中の起爆剤の一つで。平場が本当にダメだったんですよ。それなのに起用されて頭を打たれて…。もう、私、全然ダメだって常に思っていました。
で、案の定、1年でレギュラーでなくなり、大阪に戻って…。でも大阪に帰ったら、山田花子ちゃんがいたんですよ。天然でいるだけで笑いが取れる。これはもうムリだって思いました。そこからは、色々経験して芝居力を高めていこうと考えが変わりました。
――その辺りから恋愛をしたりして…。エッセイでの少し悲しい恋愛話も新鮮でした。
初恋の話とか、初めてのデートでピラフを食べられなかった話とか(笑)。でもこういう期間があったから私はよかった気がしています。お芝居をちゃんと覚えて、爆発的な笑いのためのフリを大事にしたり。かなり、変わった気がします。
――珠代さんといえば、2020年に「かまいたちの机上の空論城」(関西テレビ系)や「相席食堂」(朝日放送系)で披露したギャグ「パンティーテックス!」ですが、これによってかなり環境は変わりましたか?
反響がすごかったです。俳優さんからも「ファンです」と声をかけられたり、子供にも知ってもらえて。ありがたいことに東京での仕事も増えました。なんか面白いなって思うのが、デビュー当時やりたくて、「いいとも!」のときに挫折したテレビのロケに今、行っているという。感慨深いものがあります。あのときはダメだったけど、あれは今のための道だったというか。落ちるときはあるけれど、多分それはこの先のためのものなので諦めないことが大切だと色んな芸人さんに伝えたいです。
「今の私は性別を超越した火の玉」
――改めて年を重ねていい意味でのプライドがなくなったりしているのでしょうか?
プライドはなくなったんですが、それは年を重ねてというより、ひろしさんという現在のパートナーと生活してからなんですよ。彼、めちゃくちゃ潔癖で、チューは基本、とがらした唇に触れるくらいで、ぜんぜん物足りない。最初のころは、「どうしてもっとしてくれないの!」って怒ってケンカをしたりしていたんですが、彼から、「それだけが愛情表現ではないので仲良くやっていきましょう」と言われて。その状態で何年も経ったらいつの間にか達観の境地に入り、私は女でも男でもない島田珠代なんだって思うようになりました。気分は瀬戸内寂聴先生(笑)。
これまで常に自分と思っていたけど、自分を斜めから見ることも覚えてきて、今では自分を客観視できるようになりました。そんなときに、「机上の空論城」や「相席食堂」に出させてもらい、「パンティーテックス!」が生まれて…。あれは今だからできたギャグだったのかも知れないです。今の私は、性別を超越した魂になっている、火の玉状態ですから。
――若手時代、新喜劇で股間に「チーン」をしているころは葛藤があったんですか?
色々入り混じった感情を持っていました。絶対に負けたくない!とか。でも最近は負けてこそ価値を知るというか。たまには負けないと…という気持ちも生まれてきています。よく先輩から、「あんな若手と一緒にようできるな」と言われるのですが、お呼ばれしたところはとことん楽しみたいという気持ちが生まれていて。やはり半世紀以上生きると変わってくるんだと思います。
――いまだに劇場に出る前は緊張するとありましたが…。
そうなんです。いつも下を向いてシミュレーションを念入りにしたりしていて。でも緊張しないと大爆笑は起きないんですよ。ちなみに舞台は私にとってすごくハッピーな場所で、現実逃避ができる場所。本当にツラいことがたくさんあった時期も、舞台に出ると忘れられていましたから。ちなみに私が大爆笑を起こすときは、最前列に美男美女カップルが座っているとき。男の人に向けて、「隣の女性より私の方がいいやろ?」と、白目をむいたり全力で走り回ったりとアピールしています(笑)。なのでぜひ、美男美女カップルは最前列で見て欲しいです。
――著書の巻末企画では、大好きだと公言しているロングコートダディーの堂前透さんと対談していましたね。最近気になっている若手芸人はいますか?
堂前さんは憧れの人なんです。なので対談できて本当にうれしかった。最近色気あるなと思っているのは、令和ロマンの高比良くるまくん。色気のかたまりですよ。まぁ気づいていると思いますが、メガネをかけたシュッとした男性が好きです。
――新たなファンも増えていますが、今後どのような活動をしていきたいですか?
本当の私のファンという人を集めた公演をしたいです。東京の下北沢・スズナリで、お芝居とネタを組み合わせた単独とかできたら。お芝居では悲しみのヒロインみたいな、これまで見せたことがない姿を見せられたらいいなと思います。そしてもちろん新喜劇は私の中心にあって。新喜劇でも新しいことをしていきたいです。
――今の芸風、いくつぐらいまで続けますか?
とりあえず75歳まで! そのためには入念なストレッチが必要。大好きなお酢を飲んで体を動かせるようにしていきたいです。
取材・文=玉置晴子
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