佐久間宣行 撮影/松山勇樹

『トークサバイバー!』大ヒットの佐久間宣行が語る千鳥のすごさ「能力はもちろんですが、一番は」

2024.09.22 06:03
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Netflixコメディシリーズ「トークサバイバー!ラスト・オブ・ラフ」の配信が9月3日にスタート。話題の作品『地面師たち』を抜いて日本のNetflix週間TOP10(シリーズ)で1位に躍り出るなど、好調なスタートを切っている。

「トークサバイバー!ラスト・オブ・ラフ」は、芸人たちがエピソードを披露し、面白くなければ即脱落というルールのもと行なわれるトークサバイバル番組「トークサバイバー!~トークが面白いと生き残れるドラマ~」の最終章。企画演出・プロデューサーを務める佐久間宣行に「トークサバイバー!」を作ろうと思った経緯、配信作品ならではの工夫、盟友である千鳥への信頼について語ってもらった。(前後編の前編)

──まず「トークサバイバー」を作ろうと思った経緯を教えてください。

元々、千鳥と『NEO決戦バラエティ キングちゃん』という番組をやっていました。トーク企画を作りたいなと思っていた時に、たまたま恋愛リアリティショーの番組を見ていたんです。そこで、そんなに面白くない話をイケメンと美女がすごいカッコつけて話していたんですよ。それがなぜか笑えて、このトーンで喋ると面白いんだなと気づきました。

「リアリティショーのトーンでエピソードトークをする」というメモだけとっていて、自分の番組である『キングちゃん』で「ドラマチックハートブレイク王」という企画で試したんですよね。それが面白かったからどこかで特番にしたいと思っていました。そこでちょうどNetflixさんからオファーをいただき、8つくらい企画を持っていった中に「トークサバイバー!」も入っていました。幸運なことにNetflixさんも面白いと言ってくださって、大きな予算規模でやればもっと面白くなると思っていたので、それで実現しました。それから、千鳥に説明しに行きましたね。

──かねてより温めていた企画だったんですね。Netflixからオファーがあった時の気持ちはどうでしたか?

もちろん嬉しかったです。当時、Netflixでは日本発のオリジナルのバラエティ番組というのはなかったので、本当に実現するかな?と思っていました。お話をいただいて企画はしたけど実現しなかったということはよくあるんですよ。だから、(実現するかは)わかんないなと思っていたんですが、チャンスがあればやりたいなと思っていましたね。

──それから、佐久間さんだけでなく、お笑いファンにとっても幸運なことにNetflixでの配信が決定しました。地上波のテレビ局出身の佐久間さんは、Netflixで制作するにあたって意識したことはありますか?

連ドラのような形で8話連続になるので、そのフォーマットでいかに飽きさせないかということは考えました。あとはわざわざ配信で見る意味をどう作るかですね。その2つを意識して制作に取り組みました。

──具体的にはどのようなことでしょうか?

まず、1話の終わりに後半から出てくるキャストも全部入れていて、「この人たち途中で見られるんだ」と視聴者に思わせるようにしました。あとは、やはり誰が脱落するかわからないというルールが大きいと思いますね。トークがつまらないと判断されると、ドラマ上も死んじゃって脱落するというのは初めて見た人には新鮮に映るはずです。僕自身、ドラマを見ていると、3話くらいで一回飽きてしまうことがあるので、3話で一度キャストを入れ替えるということも意識的にやっていました。

──「トークサバイバー!」はキャスティングも特徴的です。千鳥さんや劇団ひとりさんといった実力者はもちろん活躍しているのですが、錦鯉の渡辺隆さんや狩野英孝さんなど、この作品で新たな魅力を知ることができた芸人さんも多かったと思います。

そう感じていただけたなら、狙い通りです。トークのイメージはないけど、このトークテーマとドラマのトーンで喋るんだったら面白いだろうな、という人が僕の中に何人かいました。特に渡辺さんはその一人で、「なんで長谷川(雅紀)さんじゃないの?」とよく言われたけど、「ここは渡辺さんでしょ」と説明して納得してもらえました。実際に見て面白いと言ってもらえて、狙い通りでしたね。

──シーズン3で、新たな魅力を引き出せたと感じる人はいますか?

ダイアンの津田(篤宏)さんじゃないかな。津田さんがエピソードトークが上手いと思っていた人はあんまりいないんじゃないですかね。ツッコミとかリアクションという印象が強いから。ただ、ダイアンは2人ともトークが面白いんですよ。津田さんは芝居も上手なので、びっくりした人も多くて、僕としても嬉しいなと思いましたね。

──芸人さんの新たな魅力が見られる一方で、やはり千鳥のお二人の存在感は際立っています。佐久間さんから見てのお二人のすごさはどこでしょうか?

当然、力量はそれぞれにあります。どっちもツッコミもボケもできるし、語彙力もあるし、芸人としての能力は言うまでもないんですよ。でも一番は人望ですかね。「トークサバイバー!」みたいな大変な企画の場合は、他の芸人に「この人たちの番組なら本気を出さないと」と思わせる力が必要だと思います。それがないと、こんな大変な企画にみんな乗ってくれないでしょう。売れている芸人さんたちが丸一日以上のスケジュールを割いて、つまんなかったら落ちて帰らないといけないというのはなかなか過酷です。だから、千鳥じゃないと「トークサバイバー!」はできなかったんじゃないかなと思います。

──個人的にシーズン2と3であった、若手芸人のブロックで大悟さんが去り際に残す言葉が好きです。

あれはアドリブなんです。大悟さんはああいう時もちゃんと準備してくれているので、芸人としてすごいなと思いますね。

──「トークサバイバー!」はドラマパートもトークパートもあって、それが全8話。お金も時間もかかっている番組だと思うのですが、どのような形で作られていくのでしょうか?

まずシリーズ構成の8話までのプロットを僕が作ります。それから、3~4か月は僕と脚本家の2人で脚本を作っていきます。その後に、バラエティの作家陣に入ってもらい、トークテーマを決めます。いい感じのトークテーマが見えてきたら、さらにそれを脚本にフィードバックするというやり方です。

──ドラマとトークで全く毛色が異なっていて、番組自体のフォーマットも特殊ですよね。制作的にも苦労は多かったんじゃないでしょうか。

シーズン1は僕しか最終的なゴールが見えてなかったから、各スタッフは「どういうことですか」という繰り返しでした。最初、ドラマチームは「コメディドラマを作ればいいのね」と思っていたようで、認識のズレがありました。なので、モニタリングしているノブくんのツッコミまで入れて編集した映像を見せて。「あっ、こういうことだったんですね」と理解してもらいました。

現場では、僕の感覚で「もうちょっとダサくしてください」とか、逆に「これはボケすぎているのでやめてください」とか逐一要望を伝えました。特に、シーズン1は最初なので作っているスタッフも難しかったと思います。

──「トークサバイバー!」ではトークパートで俳優さんたちが笑いをこらえきれないシーンがいくつも使われています。個人的に好きな場面なのですが、あれも制作のこだわりを感じます。

それはシーズン1から意識して指示していました。最初カメラマンさんはトークをしている芸人さんばかり抜くから、「関係ないエキストラも抜いてくれ」とお願いしました。笑っちゃいけない設定の人も笑うのが面白いと思っていて、その人たちのリアクションが大事だから、少なくともカメラのひとつは狙ってくれというのは現場で言いました。

──試行錯誤しながら出来上がり、シーズン1~3まですべて「今日のTV番組TOP10」で1位を獲得するなど配信からすぐに結果が出ました。成功するという確証はあったのでしょうか?

確証はなかったです。面白いものを作れたとは思っていたんですけど、視聴者がNetflixにバラエティを見に行くモチベーションがあるのかというのが気にかかっていて。お笑いが好きな人が見に来てくれるのかどうか……やってみるまではわかんなかったですね。

──絶対的な自信があったというわけではなかったんですね。

僕は元々がネガティブなほうなんです。作品はポジティブに作るけど、頭の中のシミュレーションはネガティブで作ります。それを20~30代の頃からやっていたから、『トークサバイバー!』のような過酷な現場でも破綻せずに作れたのかなと思います。全8話あって「みんな飽きちゃうんじゃないか」というネガティブな思考があるから、色々手を入れていける。そういう意味で言うと、僕の性格だから作れた作品ですね。

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