穂志もえかにインタビューを行った

<SHOGUN 将軍>“藤様”役が世界で話題の穂志もえか「すごく私を救ってくれた」価値観が変わる瞬間を経験した“運命の作品”

2024.09.15 11:00
穂志もえかにインタビューを行った

真田広之が主演・プロデュースを務め、ハリウッドの制作陣が手掛けたドラマ「SHOGUN 将軍」が、日本時間の9月16日(月)にアメリカ・ロサンゼルスで授賞式が開催される「第76回エミー賞」で本年度最多となる26のノミネート。先日、前哨戦となるクリエイティブ・アーツ・エミー賞では、史上最多となる14部門の受賞を果たした。同作は主人公・吉井虎永役の真田をはじめとした世界を股に掛けて活躍する名優はもちろんのこと、“日本人は日本人キャストが演じる”など、「正しく日本を描く」という旗印の下、国内外のキャスト・スタッフが力を合わせて作られた壮大な戦国スペクタクル。レビューサイトの「IMDb」や映画批評サイト「Rotten Tomatoes」でも高評価を受けており、優れたドラマを表彰する「エミー賞」へのノミネートは当然という声も多い。WEBザテレビジョンでは、誇り高き女性“藤様”こと宇佐見藤役で特に海外から大きな注目を集め、先日「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」にも選ばれた穂志もえかにインタビューを行い、「SHOGUN 将軍」に対する印象、最終回の舞台裏エピソードなどについて率直に語ってもらった。

カナダでは「文化にも触れつつ仕事のときは藤を楽しんでいました」

――「エミー賞」ではドラマ・シリーズ部門に最多ノミネートされるなど、最終回がディズニープラスのスターで配信されて数カ月たった現在も「SHOGUN 将軍」が大きな話題を呼んでいます。あらためて、この作品に参加された感想を教えてください。

ハリウッドの大作だと思ってオーディションを受けたわけでもなく、他の作品と変わらない気持ちで受けたのですが、それがたまたま受かってラッキーだったというほかないですね。ただただ、撮影で10カ月くらい日本を離れるという不安が勝っていました。

――実際に8カ月ほど一度も日本に戻らず、カナダのバンクーバーに滞在していたそうですね。

休みの日もあったので、もっと行動的にしていればよかったなと思うときもありますが、バンクーバーにおける日系人の方の歴史を学んだり、デモ活動を目にしたり。ずっと役に集中していたというよりは、バンクーバーの文化にも触れつつ、仕事のときは藤を楽しんでいました。

「大きかっただろうなと思っているのは真田広之さんの存在」

――出演者の一人として、また配信を終えて客観的に見て「SHOGUN 将軍」がここまで支持された理由はどんなところにあるとお考えですか?

私が大きかっただろうなと思っているのは真田広之さんの存在です。もちろん素晴らしいスタッフ、キャストが集まったことや一人一人の奮闘の成果だと思いますが、真田さんがあらゆることをプロデューサーさんとしてチェックしてくださったからこその作品だと感じています。

――撮影内外でアドバイスなどあったと思いますが、真田さんをはじめとする先輩たちの言葉や背中を見て、俳優として刺激になったこと、意識の変化などはありましたか?

俳優としての焦りのようなものがあったりしたのですが、真田さんとお話すると、長い目で見るということとか、そんなに焦らなくて大丈夫というか、豊かな生き方みたいなものについて結構考えるようになりました。マイペースなリズムを得ることができましたね。

「撮影が押して藤の出番がなくなったことは印象深いです」

――国内外で話題になった場面が多々ありました。特に印象的だった撮影はどのシーンでしょうか?

最初に思いつくのは3話で虎永(真田)たちと大坂から網代へ向かう山道で敵と戦うシーン。本当はそこで藤も戦うことになっていたのですが、撮影が押して藤の出番がなくなったことは印象深いです。何日もなぎなたを練習したんですけどね…あれは悔しかったです(笑)。

また、第10話のラストで按針(コズモ・ジャーヴィス)と小舟の上で二人きりになったシーンですが、風と波が強く、下から水も入ってきている状態でしたので、いろいろと気を使いながら演技をしていました。

――大変な撮影だったのですね。そして劇中で最初は距離を置いて接しているように見受けられた藤と按針との関係性も徐々に変化し、言葉の壁を越えて最終回では通じ合っているように感じましたが、藤というキャラクターの変化についてはどのように感じていましたか?

最初に対象を「そういう人だ」と決めつけてしまうと、なかなかそこから印象を変えることができないこともあると思います。藤も按針に対して最初は野蛮な人というステレオタイプな印象を持っていましたが、(藤は)柔軟さもあったからこそ、そういう部分も乗り越えて通じ合えていったのだと思います。

――最終回直後にインタビューさせていただいたときは「正直なところどのくらい話題になっているのか、実感があまりありません」と話されましたが、あれから数カ月経過し、作品が「エミー賞」候補になったり、穂志さん自身も「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」を受賞されたり、周囲からの反響もいろいろとあったのではないでしょうか?

「SHOGUN 将軍」が本当に話題になっているというのは、6月に渡米したときにもすごく感じました。街中に看板がありましたし、レストランで隣の人が私に気付いてくれたりとか、書店にも日本のコーナーがあったりして、その真ん中に「SHOGUN 将軍」の本が置かれていました。日本文化が粋なものとして、さらに注目されるきっかけになったのかなとは感じています。

――「SHOGUN 将軍」の藤役はある種、穂志さんにとっての“運命の出会い”だったのかなと思いますが、穂志さんにとって「今思えばこれは運命的だったな」と思うこれまでの出会いは?

直近で思うのはやはり「SHOGUN 将軍」ですね。すごく私を救ってくれた作品だし、変えてくれました。何よりそこでの出会いは今もずっと続いていますし、今までの価値観などが変わって揺らぐという瞬間をたくさん経験したかなと思います。

――先日の「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」授賞式では、「私のようなマイペースな生き方が認められた瞬間」といったコメントをされていましたが、いつ頃から“マイペースな生き方”を実践されてきたのでしょうか? 

物事は捉え方次第ですごく意味が変わってくる、真逆になってくるとか、そういうことを真田さんとの会話で気付きました。どう頑張っても私はマイペースな生き方になってしまう。現時点ですが、事務所に入っているとか、マネジャーさんがいる既存のスタイルじゃないところにいることもマイペースなことというか。それでも私は幸せだし、これからも自分の気持ちを優先していきたいです。

◆取材・文=原田和典

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