東出昌大、山中狩猟生活の理由「腹を壊したとしても、その土地でしか味わえない経験をしたい」
俳優・東出昌大(36)が「予算5万円、移動は基本、陸路のみ」というルールで真夏の南米大陸を横断する『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』(ABEMA)に出演し、大きな反響を呼んでいる。2020年に週刊誌に報じられた女性スキャンダルですべてを失った東出は、一時期、表舞台から完全に姿を消した。しかし、その間に携帯の電波も届かない山奥で自給自足の生活を開始。ここに来て、そのユニークな価値観や思想に注目が集まっているのだ。本人を直撃し、「旅」「ひろゆきとの関係」「山ごもりの真相」などを縦横無尽に語ってもらった。
猟銃で山の獣を狩り、畑で野菜を育て、薪を割りながら自給自足の生活を送っている──。東出昌大の近況がテレビで報じられたとき、多くの視聴者は唖然としたはずだ。バッシングを浴びる毎日に疲弊したことは想像に難くないが、単純に1人になりたいだけならマンガ喫茶やウイークリーマンションだってよかったはず。なぜ電気も水道もない山中での暮らしを選んだのか? こうした疑問に対して、東出は「面倒くさい人間なんですよ。いろんな物事を分解して考える性分なので」と苦笑いしながら説明し始めた
「たとえば我々は生活の中で鶏肉を食べる機会が多いわけですけど、僕は鶏がどういうふうに捌かれるかを見てみたくなってしまう。そして、さらに飼ってみたくもなるんですね。飼ってみて、そこで愛着が沸いたニワトリを捌くと、どういった感情になるのか? どうしても、そこが気になる。たしかに鶏肉を食べるだけだったら、コンビニでサラダチキンを買えば事足りますよ。そっちのほうが便利でいいという人は多いでしょう。そういう人からすると、僕みたいな考え方をする人間は理解不能じゃないかな」
東出からすれば、これは「どちらが豊かで、どちらが貧相か?」というレベルの話ではないという。ましてや「どちらが合理的か?」という角度で考えても意味はない。最終的には価値観の問題になってくるからだ。
「小綺麗なグランピングも結構だけど、僕は掘っ立て小屋みたいなところに住みながら木を拾っているほうが性に合っている。冷たいとか温かいとかがリアルに感じられる生活。海外旅行だって発想は同じです。ハイネケンは世界中で売られているかもだけど、どうせだったらその土地の酒を飲んでみたいじゃないですか。たとえそれで腹を壊すことになっても、その土地でしか味わえない経験をしたい」
すべてが整理整頓され、安全安心の中で便利さを享受するライフスタイル。そういった価値観を東出自身は否定しているわけではない。「ただし、それが当たり前になってしまうと、どこかで自分の感覚が麻痺していく。当たり前すぎて、感謝する気持ちが失われてしまうのではないかという懸念がある」と眉をひそめる。
「海外旅行でも田舎暮らしでも、不便さの中で新しいものの見え方が生まれるというのはよくあることなんですね。火をおこすために薪をたくさん割ったあとで食べるメシは、肉体労働でカロリー消費しているから美味くて仕方ない。その途中の工程を無駄だと切り捨てられたら、それまでなんですけど」 人生は無駄なことの連続ではないかと考えることが東出にはある。彼自身はタバコも吸うし、酒も飲む。それが果たして生活に必要かと聞かれたら、答えは「NO」となるだろう。逆に株式投資に熱を入れ、預金額を増やすことに喜びを覚えるようなタイプには「それだって人生に無駄なことでは?」と醒めた目線を投げかけてしまう自分がいる。
だが結局のところ、東出はスキャンダルで失墜したからこそ「いい車に乘りたい」「いい家に住みたい」「いい女を抱きたい」といった価値観から離れたのではないのか? そう尋ねたところ、しばらく考え込んでから「たしかにそれは否定できない」と言葉を続けた。
「たとえば僕にも役者の後輩がいて、そういう子たちと一緒にメシを食っていると『とにかく売れたい』と口を揃えるわけです。彼らは芝居が本当に大好きだし、そこで成功したいという気持ちが非常に強い。プライベートなんて捨ててもいいとすら考えている。
そこに対して僕が『いや、わかるんだけど、今の芸能界って芝居だけの要素ではできていないから。何かあったとき、自分の人生が返り血を浴びるのってマジでつらいよ。それってすごく危険な道。自分の人生を充実させながら、芝居を頑張ったほうがいいと思う』と老婆心ながらアドバイスしますよね。そこで後輩たちに言われてハッとしたのは、『そんなの売れた人だから言えるんですよ』って言葉。もう何も返せなくなっちゃいますよ」
1回は芸能界のメインストリートで成功を収めたからこそ、呑気に山小屋暮らしができるのかもしれない。一方で1回はどん底を味わったからこそ、自分のようになるなと若手に警鐘を鳴らす気持ちもある。「もともと物欲が少ないほうだった」としながら、「イーロン・マスクとかウォーレン・バフェットみたいに稼いだわけじゃないけど、それでも平均所得よりは全然稼げていたと思う。ただ、その先に何があるかといったら……」と遠くを見つめた。
「昔から常に考えていたのは、人間として強くありたいということ。たとえば大学生のとき、外国を旅して日本に戻ってくるじゃないですか。それで池袋あたりで飲んでいる同級生の姿を見ると、めちゃくちゃ脆弱だなと感じたんです。外国では、僕よりはるかに年下の少年が目をギラつかせながら肉体労働している。人間として、どちらの生命力が強いかといったら明白ですよ。『こいつら、マジつえぇわ。俺も強くなりてぇ』って外国に行くたびに思うんですよね」
東出は作家で登山家の服部文祥を心の師と仰いでいる。食料を現地調達し、装備も極力排する服部のスタイルは“サバイバル登山”とも呼ばれており、昨今のカジュアルなアウトドアブームとは真逆に位置する。剥き出しの大自然と対峙しようとする東出の根底には、人間の本質的な強さを希求する思想があった。
「山を登るとき、4WDのSUVである程度の高いところまで進んでいくのは白けちゃうんですよね。どうせ登るんだったら、一番下から自分の足で歩いてみろよって言いたくなる。キャンプとかアウトドアが世間で流行っていますけど、お金で買えるギアから離れていくのが本来の姿だと僕は思いますよ。極力、道具とかお金に頼らないのが自然と共生するということですから」
ここに来てメディア露出が再び増え始めたが、「芸能活動をガンガンやるつもりはないですね。忙殺されると、自分の心が失われちゃうので」とのこと。「マイペースで役者の仕事を続けながら、新たに始めたYouTubeにも今後は力を入れていくつもり」と前向きに語った。
▽ABEMA『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』番組概要初回放送日:2024年5月18日(土)夜9時 ※毎週土日放送、6月9日(日)以降は毎週日曜放送番組URL:https://abema.tv/video/title/90-1845
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