<花咲舞が黙ってない>“半沢直樹”役でオファーした人物は「面白がって引き受けてくださいました」ドラマPが明かす裏話
今田美桜主演のドラマ「花咲舞が黙ってない」(毎週土曜夜9:00-9:54、日本テレビ系/Huluにて配信)。銀行を舞台に、“地位なし・権力なし・怖いものなし”の花咲舞が理不尽なことに物申す、池井戸潤原作の10年前にもドラマ化された人気シリーズ。今シリーズは、頭脳明晰のスーパエリートである女性行員・昇仙峡玲子(菊地凛子)が舞たちの前に大きく立ちはだかるほか、銀行合併が大きなテーマになっていく。このたび、WEBザテレビジョンでは、本作のプロデューサー・小田玲奈氏にインタビューを実施。あせない本作の魅力や、舞や原作にも登場する“半沢直樹”らキャラクターについてなどの話を聞いた。
今っぽさを取り入れた物語づくり
――本作は、杏さん主演の「花咲舞が黙っていない」(2013、2014年日本テレビ系)の放送終了後に連載された同名小説が原作ですね。
原作はメガバンクが合併を繰り返していた時代が舞台なのですが、10年ほど前に書かれた小説ということもあってか、舞が抱える悩みは今の皆さんが持つ悩みと全然変わらないんですよ。女性の社会進出とかも、昔より進んでいるように見えて、形しか進んでいないですから…。そんな私自身、日常で感じていることや疑問、理不尽さが描かれていたので、多くの方に共感してもらえると思い、池井戸先生にご了承をいただき、時代を現代に変更した物語に作り替えました。
――舞の納得がいかないことに対して「お言葉を返すようですが」とズバッと切り出す爽快さが魅力的ですが、今シリーズの舞らしさを感じる部分を教えてください。
第1話の舞を見ていてやっぱり好きだなと感じたのは、臨店班に異動と聞いて驚きつつ、支店長に「アシスタントとして頑張って」と言われたことに違和感を持ち続けているんですよ。そして最後にお言葉を返すときに、「あのとき…」と口火を切る。この感覚がすごく“今っぽい”と感じました。これは多くの人が感じたことがあると思うのですが、些細なことで、「この人、価値観が古いな」と感じる瞬間ってあるじゃないですか。それをちゃんと舞も感じている。それは男女のことだけではなく、働き方などでも感じていて…。ただ、それを言われた瞬間に言い返しはしないけど、いざというときの武器にしている。あの切り返し方が、今回の舞の魅力だと思います。
今田美桜の花咲舞は「素晴らしい」
――そんな舞を今田美桜さんが演じていますが、いかがでしょうか?
今田さんはキュートなので、お言葉を返すシーンはどう映るのだろう?と最初は不安もあったのですが、第1話の「お言葉を返すようですが」のシーンを撮って、舞を今田さんにお願いできてよかったと感じました。舞が誰かを救いたいと思って、覚悟を決めてお言葉を返す感じが、佇まいや表情などですごく表現されていたんですよ。そして第2話の少し切なくなるお言葉を返すシーンでも、ただ反発するのではなくその人の痛みを分かりつつ返すという繊細な違いを表現されていて。本当に素晴らしいと感じました。
人間らしさのある“敵”にこだわり
――今回は舞の憧れの人でありライバルになる昇仙峡玲子というエリート行員が登場します。どのようにキャラクターを作られたのですか?
昇仙峡玲子は、男性社会の中で男性と対等に肩を並べている女性です。そのうえ女性らしい、しなやかさも兼ね備えており、舞の憧れの存在にもなります。このドラマならではの昇仙峡玲子像は、菊池さんとしっかりと話し合い、わかりやすい敵というより、どこか人間らしさが出るように…と考えました。まだ謎に包まれていますが、後半戦になって舞とグッと近づいていくので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
絶対に登場させたかった半沢直樹
――そんな昇仙峡に匿名任務を与えているのが、要潤さん演じる紀本平八執行役員。「半沢直樹」シリーズでも登場する人物で、第1話の登場から視聴者がザワついているのですが…。
紀本の名前から、“半沢直樹”が出てくるのでは?と推理されている方がいて、するどいとかなり驚きました。TBSさんで放送された「半沢直樹」(2013、2020年)は、花咲舞のいる東京第一銀行と半沢直樹がいる産業中央銀行が合併してできた東京中央銀行が舞台になっています。そしてこれが少しややこしいのですが、本作は「半沢直樹」シリーズの少し前の時代、合併前の東京第一銀行が舞台になっていて、しかも当番組は時代設定を現代にしています。なので、少しタイムパラドックスが起きていて(笑)。でも花咲舞と同じ世界線に、産業中央銀行でバリバリ活躍している半沢直樹が存在しているんです。
――そんな半沢直樹が第5話(5月11日[土]放送)で登場するんですよね。
はい。原作にも「花咲舞vs半沢直樹」と書いてあったので、この原作を映像化する上では絶対に登場させたいと思っていました。内容としては、2人がバチバチにやり合うのではなく、合併の裏では実はこんなことが起きている…ということがテーマなので、合併が現実問題になって舞の周りも変化していく象徴的な人物として描いていきます。
眠れなくなるほど悩んだキャスティング
――誰もが知っているキャラクターですが、キャスティングは難しくなかったですか?
熟考しました。どういう人ならOKしてくださるんだろう?と考えたら、眠れなくなって(笑)。池井戸先生には、「(半沢を)出しても、出さなくてもお任せします」とおっしゃっていただいたのですが、やっぱり絶対に出したいと。そうしたらあるときに急にひらめき、その方にお願いしたら、面白がって引き受けてくださいました。本当にありがたいです。ちなみに池井戸先生にお伝えしたら、「その人は勇者だ」とおっしゃっていました(笑)。ぜひ、第5話を見て、驚いていただきたいです。
――合併の話が出てきて、舞の周りも少しずつ変化していきますが、今後の見どころを教えてください。
舞はお客様のためという視点を持ちつつ、正社員に限らず非正規を含む一緒に働く仲間たちのことを考えて、理不尽なことにお言葉を返してきました。その根底にあるのは、銀行をよくしていこうという気持ち。それはこれ以降も変わらず、スカッとさせてくれると思います。ぜひ楽しみにしていただきたいです。
取材・文=玉置晴子
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