撮影/武田敏将

東出昌大、狩猟密着映画への思い「“残酷であること”に真正面から向き合うことが人間には必要」

2024.02.14 06:03
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一面の雪景色、静寂を切り裂く銃声、倒れる獣、広がっていく鮮血──。2月16日より全国順次公開される俳優・東出昌大の狩猟に追ったドキュメンタリー映画『WILL』は、生々しさを超えた「生と死」が色濃く刻まれている。この衝撃的な作品について、東出と今作の監督を務めた映像作家・エリザベス宮地の対談を実施。過酷な撮影話から、東出・宮地両者が抱いた互いへの想い、そして“生き物を狩るとは?生きるとは?”についてうかがった(前後編の後編)。

──1年以上に渡る密着を通じて、東出さんの目にエリザベス宮地という人間はどのように映りましたか?

東出 それはもう、容赦ない人だなと思いました。

宮地 アハハ!(爆笑)

東出 僕が酔っ払って、自分でも喋ったかも覚えていないような瞬間をバンバン本編に入れてくるからね。マジか~!って思った(笑)。

宮地 確かに、編集している時にプロデューサーの高根さんから「本当に人の心がないね」って言われた。監督って被写体のことが好きになれば、絶対に良い場面ばかりを活かしていくはずなのに、東出さんに対してはそれが全然ないよね、と…。

東出 なんでよ(笑)。けど、それが良いんです。僕も役者として演技するときは、容赦なく役を作りたい人間で。宮地監督のモノ作りへの向き合い方は、僕の仕事への容赦のなさと似ているなと思いました。それに、人のところに行って誰かを撮っている時、カメラという最大の異物を感じさせないコミュニケーション能力で人の心を開かせていく。それでいてちゃんとズバッと切り込んでいくのがスゴイ。

──東出さんを支える町のみなさんがカメラを向けられても、硬さを見せずにスッと自然体で振舞っている姿を見るに、宮地さんがいかに人の気持ちを掴む撮影をされてきたかが伝わりました。

東出 そうそう‼ 本当に町のみなさんからも愛されていて、毎回のように「宮地くん、いつ来るだ?」って聞かれますから。

宮地 いやあ、逆に僕はカメラないとあんまり喋れないし、その人に興味があるからできているだけ。そういう意味では、東出さんの方がすごいと思ってます。全く縁も所縁もない土地に移り住んで、そこで自分の居場所を見つける。東出さんの愛される力って、相当なものだなって思った。

──では同じ様に、約1年半追い続けて見えてきた東出昌大という人間は、宮地さんからはどう見えました?

宮地 これがね、東出さんは最初からずっと変わらず。

東出 そうなの⁉ 顔見知りになった時から?

宮地 もちろん山奥に移住してからは、もっと快活になったという変化はあったけれど、東出さんとは会った時からずっと、「デッカイ人」。それは身体もだけれど、心もデッカイ。本当に優しい。東出さんの住む小屋には、本当に色んなゲストが来るんですが、全員に対して分け隔てなく接するんです。だから、周りに人が集まるんですよね。見た目や肩書、立場で人を一切見ない。東京において人とフラットに接することってすごく難しいと思ってて。東出さんはそういうことは一切ない。心・人としてデッカイんですよ。

──それはあらゆる取材資料や今作を見ていても感じました。

宮地 褒めすぎたので、少し下げますね…勢いがとにかくヤバイ。

東出 (ばつが悪い顔を浮かべる)

宮地 「よっしゃあ、行きますか!」って何かを思いついてから行動までのターンがマジで短い。そこが良い所でもあるんだけれど、危険を伴うところでもあって。その一つが劇中にも映っている脱輪事故(笑)。他には、先ほど出た凍傷になった後(※インタビュー前編参照)。ある日、少しだけ雪山の追撮が必要になって、ほんの30秒ほどのカットが撮れたらOKだったので、「山歩くだけで、狩猟はしなくていいよ」と伝えたのに、途中から完全に狩猟スイッチ入っちゃって。10分で終わる撮影が、気づくと1時間半歩き続けることになったんですよ。

東出 あれ?そんなに経っていましたっけ。

宮地 もう、何度も「そんなに歩かなくていいよ」と伝えたからね。「わかりました!」と答えるのに、明らかに目の色変わっちゃって。その瞬間、「ああ、終わった……」って絶望した(笑)。

東出 本当に申し訳ない(笑)。

──140分という大作ですが、東出昌大という人間の全てを追うには全然足りませんね。

宮地 もう全然。使いたくても使えない映像がいくらでも残っていますから。東出さんは、やっぱ宇宙人。というか、東出さんが歩いても歩いても全貌が掴めない山そのものでしたね。

──アハハ。おっしゃるように。今作はテーマや描かれた世界が広すぎて、一つにまとめきれないと思いますが、東出さん、宮地監督はこの作品がどういった方に届けばいいなと思われますか?

宮地 僕が狩猟に興味を持ったのは緊急事態宣言の一回目が終わった時です。コロナウイルスが蔓延して、ニュースを見れば連日感染者数と死者の話、電車で一人咳すればその人を全員が睨むという殺伐とした死の空気感に、生きている実感もなくしてしまっていました。そんなときに石川竜一くん(写真家)が数年前に見せてくれた狩猟の写真を唐突に思い出して、自然の中で生きることについて考えさせられたんです。

コロナが収束しても、それまで幸せと思っていた自分の生活に生き苦しさや疑問を感じる瞬間ってあると思います。なので、人間関係でも、仕事でも、自身に対して疑問や違和感を抱いた方に見てほしい。僕はそうした生きることへの不安から始まりこの映画を撮りはじめました。もしかしたら同じ想いをしている人に、自分の生活や生き方を見つめ直すきっかけになれたらと思っています。

東出 そうだなあ……宮地監督が語ったことと重複しますが、僕は“答え”のようなものを求めて自然の中に身を投じるため、山での生活を始めました。最近良いなと思ったのが、ギリシャの哲学者・エピクロスが本の中で、「あなた中に不安や恐怖があるとしたら、それはあなたが自然から離れすぎているから」ということを語っていて。

宮地 へぇ~~~!それは良い言葉だね。

東出 自然の中で生きる生物って、飯食ってクソして寝る、それで完結している。けれど、社会の中にいると、学歴や経歴、容姿や出自……と、数多くのしがらみに囲まれている。そうした様々なしがらみに悩んだり疲れてしまった人に、飯食ってクソして寝る……そうした「自然とは?生きることは?」を再確認するための入り口になってくれたらいいかなとは思います。

宮地 うん、生きることが複雑化しすぎていると思う。

東出 もしかしたら映画を観て「残酷だ」、「グロい」という反応が来るかもしれません。確かに僕は残酷だと思うんです、生き物を殺して食すことは。ただその“残酷であること”について真正面から向き合い考えることが、人間には必要だとも僕は思っていて……もちろん露悪的な意味での「グロ」ではありません。今の世の中、あまりに何事も「安心安全・キレイ」であろうとしすぎかと思います。そこで「残酷」で「グロい」という感情が、「生きること・死ぬこと」を深く考えるキッカケになる気がしているんです。その一端がもしかしたらこの映画で得られるのかな……って。

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