“テレビっ子”ライター・てれびのスキマが注目するバラエティ新番組 見逃し視聴が可能にする「実験」や「発掘」

2022.05.28 10:00

この春から多くのバラエティ新番組が放送開始。その中でもひときわ印象深い番組について、“テレビっ子”ライター、てれびのスキマが語る。TVerをはじめとした見逃し視聴によって、改めて深夜バラエティにおける「実験」や「発掘」の機運が高まっているという。

サイクルの速さが特徴、テレ朝「バラバラ大作戦」

春は新生活が始まる季節。それはテレビの世界でも同じで、今年も多くの新番組が生まれた。

バラエティ番組の中で特に目立つのは、テレビ朝日「バラバラ大作戦」の枠だ。2020年10月から各20分の番組を放送する深夜枠として始まったが、その中から『キョコロヒー』や『かまいガチ』、『NEWニューヨーク』などが上の時間帯(現在は新設された「スーパーバラバラ大作戦」枠)に昇格。一方で、『ぼる塾のいいじゃないキッチン』、『イグナッツ!!』、『秋山とパン』など、終わってしまうには惜しい個性的な番組が短命に終わる、良くも悪くもサイクルの速さが特徴だ。

今期も阿佐ヶ谷姉妹の『阿佐ヶ谷ワイド!!』、蛙亭イワクラと吉住による『イワクラと吉住の番組』、『〜凪咲と芸人〜マッチング』をリニューアルし渋谷凪咲とハリウッドザコシショウのコンビとなった『凪咲とザコシ』、アルコ&ピースが進行するコントアニメ番組『アルピーテイル』、そして清塚信也による音楽考察バラエティ『キヨヅカライザー』が始まった。

『凪咲とザコシ』では、渋谷凪咲とザコシショウが、驚くほどの名コンビとなっている。『〜凪咲と芸人〜マッチング』時代にすでに証明されていたことではあるが、ボケまくる渋谷に対し、このコンビではツッコミに回ることが多いザコシという構図が新鮮で面白い。これまで冠番組を持ったことのないタレントが、この枠で初の冠番組を持つという例も少なくないのも特徴のひとつだ。

ありのままの「女子」会という感じが心地良い『イワクラと吉住の番組』

そんな中、特に注目したいのが『イワクラと吉住の番組』(毎週火曜深夜2:16-2:36)だ。ともに『アメトーーク!』の「生きづらい芸人」に出演した間柄だが、「2人でちゃんと話したことはない」という。「YouTubeだと思っていい」とスタッフに言われた2人は、探り探りトークしていく。2人の番組が始まると聞いたイワクラが「仲良くなるところを皆さんに見ていただけたら。たぶん仲良くはならないとは思うんですけど(笑)。ご飯とかは絶対行かない。お互い距離保つと思うんで」とコメントした通りの距離感が絶妙でクセになる。

基本的に2人ともテンションが低め。ロートーンでボソボソ語るのがリアルだ。それでいて、妙なところで「可愛い~!」と言って盛り上がったり、「おっぱい」写真を愛でて熱弁したりする。男社会の中で男が思い描く仮想の「女子」という感じではなく、ありのままの「女子」会という感じが心地良い。ディレクターを兼任するプロデューサーの小山テリハは、アイドル経験もあるという異色の経歴を持つ入社7年目の若手。番組テーマソングが佐藤千亜妃の「S.S.S.」だったり、番組キャラクター「ワタボコリちゃん」のちょっと変で可愛らしいビジュアルだったり、早くもいかにもこの番組らしいというトーンが出来上がっている。

ユルい感じが今っぽい『午前0時の森』

こうした少人数の雑談系トーク番組は昨今のトレンドのひとつといえるだろう。『午前0時の森』(毎週月・火曜夜11:59-0:54、日本テレビ系)もそうだ。当初は、タイトル通り午前0時(正確には23時59分)からの生放送の予定だったそうだが、パイロット版で起きた問題により当日に事前収録する「疑似生放送」に変更になった。劇団ひとりと村上信五がMCを務める月曜日版と、若林正恭と水卜麻美アナウンサーがMCの火曜日版があるが、今回注目したいのは後者。

あまり知られてはいないが、若林と水卜は若林が「テレビ同期」のような存在と語るように、オードリーブレイク直後、水卜入社直後から様々な番組で共演してきた仲。だから2年ぶりの共演とは思えないほど息の合ったトークを繰り広げる。その内容も、たとえば若林の結婚後の変化について、「一人暮らしの頃は飲みに行くタイプでもないため、仕事の間しか喋っていなかった」と振り返り、「心を開いている時間が少ないから『ヒルナンデス』などのCM中、人と喋ろうと思うとすごくギアを上げなくちゃいけなかったが、結婚した後は常に喋ってる人の雰囲気が出てるのか、喋りかけられるようになった」だとか、とてもラジオ的。CMに入るタイミングもトークテーマも2人に任されているため、初回ではゲストに玉城ティナが控えていたが、そうとは知らず番組終盤になってようやく呼び込む始末。そのユルい感じがいかにも今っぽい。若林に心を開き力が抜けた水卜がよく笑っているのがとてもいい。

まさに企画の勝利『タクシー運転手さん 一番うまい店に連れてって!』

ゴールデンタイムの番組で言えば『タクシー運転手さん 一番うまい店に連れてって!』(毎週木曜夜6:25-7:58)といういかにもテレビ東京らしい番組も始まった。番組の内容はタイトルそのまま。スタッフが各地に赴き、駅前などに停まっているタクシーに乗りこみ「タクシー運転手さんの一番うまい店に連れて行ってください」とお願いするのだ。地元の美味しい店をもっとも知っているのはタクシー運転手だとよく言われている。実際、客に聞かれオススメのお店を教えることもあるそう。たとえば福井の回では、ボルガライスを出す喫茶店やガサエビ、越前そば、しめ鯖寿司など多種多彩なグルメが紹介される。日本にタクシーは20万台以上あるというが、「タクシーの数だけグルメがある」というのが番組のコンセプト。本当に常連客であるタクシー運転手が取材のお願いもするので、閉店後でも話が聞けたりするのも大きな利点。まさに企画の勝利だろう。食レポなど人生で一度もしたことがないであろうタクシー運転手だが、そんな彼らが実に美味しそうに食べるから説得力も抜群だ。

若手による挑戦的な企画も目立つ

一方、深夜ならではの挑戦的な番組も生まれている。6回限定でレギュラー化された入社3年目の原田和実が企画・演出の『ここにタイトルを入力』(フジテレビ)は、6回すべてまったく違う角度からテレビのフォーマットを使って遊び尽くし、大きな話題を集めた。また「テレビ東京若手映像グランプリ」で優勝し地上波放送を勝ち取った入社3年目・大森時生による『島崎和歌子の悩みにカンパイ』も、普通のトーク番組のように見せかけ、途中で電波が乱れ、外国版『マネーの虎』風の番組が流れるのだが、謎の国が舞台で謎の架空言語を話すという前衛的な番組だった。

若手ディレクター渾身の企画が光る「るてんのんてる」

そうした野心的若手ディレクターが目立つ中、関西では『るてんのんてる』(毎週金曜深夜0:30-0:59、読売テレビ)という新番組が始まった。これはフットボールアワーをMCに据え、「読売テレビの若手ディレクターが温めてきた渾身の企画を自由に放送するチャレンジ番組」だ。たとえば入社8年目の阪口智稀Dが企画したのは、「スタジオコントにキャラの濃い一般素人を入れたら面白くなるのではないか」を検証する「出会っていきなりコント」。その日に出会った街行く人に声をかけ、一緒にコントをするのだ。あるいは、7年目の山本大翔Dが企画したのは「1カットコントドラマ『商店街にナイスガイ!』」。ザ・プラン9、ロングコートダディ、ニッポンの社長、ビスケットブラザーズ、天才ピアニストの5組のコント師が、商店街の様々な店舗でコントを披露するのだが、そのネタ同士がひとつの物語になっており、それを1カットで撮影するという企画だ。フットボールアワーの2人も「聞いただけで撮影が大変そう」と唸る仕組み。それぞれの持ちネタをプラン9のお〜い!久馬がつなげたというコントは、それぞれのコントの中にも別のコンビの芸人が演者として入ってきたり、その後の伏線が入ってきたりと巧妙。とても見ごたえのある作品になっていた。さらに入社5年目の坂本一馬Dによる「俺たちだって恋をする」は、島田一の介、やなぎ浩二、今別府直之ら吉本新喜劇で活躍するベテラン芸人がBL学園ドラマを演じ、そこに梶裕貴、高橋広樹、吉野裕行といった売れっ子声優が声をあてるという、概要を聞くだけでシュールで可笑しい企画。

昨今、深夜といえども「実験」や「発掘」のようなことがテレビでは難しくなっていた。だが最近は再びその機運が高まっているのではないだろうか。TVerのような見逃し配信もあることで、深夜や地方でひっそりと放送して終わりではなく、SNSなどで話題になった後からでも視聴できる環境が整い、放送では見ることができなかった人たちも見ることができる。だからこそ、こうした作品性の高い番組は可能性に満ちている。

文/てれびのスキマ

関連リンク

関連記事

  1. 新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    WEBザテレビジョン
  2. 東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    WEBザテレビジョン
  3. <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    WEBザテレビジョン
  4. 松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    WEBザテレビジョン
  5. ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    WEBザテレビジョン
  6. 瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    WEBザテレビジョン

「ニュース」カテゴリーの最新記事

  1. Snow Man、新ラジオ番組決定 舞台裏秘話&メンバーセレクトの楽曲配信も【Snow World Radio】
    Snow Man、新ラジオ番組決定 舞台裏秘話&メンバーセレクトの楽曲配信も【Snow World Radio】
    モデルプレス
  2. WEST.、グループへの想い深掘り「anan」表紙でアンニュイな艶宿るシネマティックグラビア挑戦
    WEST.、グループへの想い深掘り「anan」表紙でアンニュイな艶宿るシネマティックグラビア挑戦
    モデルプレス
  3. 池田レイラ、10代最後のグラビアで美ボディ披露「ヤンマガ」ソロ初登場
    池田レイラ、10代最後のグラビアで美ボディ披露「ヤンマガ」ソロ初登場
    モデルプレス
  4. 群青の世界・辻夏鈴“初グラビア”でフレッシュボディ輝く
    群青の世界・辻夏鈴“初グラビア”でフレッシュボディ輝く
    モデルプレス
  5. 本郷柚巴、美バスト弾ける黒ビキニ姿 大人な雰囲気で撮影
    本郷柚巴、美バスト弾ける黒ビキニ姿 大人な雰囲気で撮影
    モデルプレス
  6. 中田花奈、スレンダーボディに釘付け 2nd写真集未公開カット公開
    中田花奈、スレンダーボディに釘付け 2nd写真集未公開カット公開
    モデルプレス
  7. 榎原依那、艶やかバスト披露 初の北国・温泉ロケで大人な雰囲気
    榎原依那、艶やかバスト披露 初の北国・温泉ロケで大人な雰囲気
    モデルプレス
  8. 花雨、透けセクシーランジェリーでファン魅了
    花雨、透けセクシーランジェリーでファン魅了
    WWS channel
  9. 日本一メガネが似合う日本酒美人アンバサダー天宮花南、六本木で開催された「CRAFT SAKE WEEK 2025」に訪問!
    日本一メガネが似合う日本酒美人アンバサダー天宮花南、六本木で開催された「CRAFT SAKE WEEK 2025」に訪問!
    WWS channel

あなたにおすすめの記事