【鎌倉殿の13人】江口のりこの太々しさだけではない?あえて「亀の前事件」を描く必然性とは
多少史実と違っていても、それがドラマというものなのだろう。
3月27日放送のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、源頼朝(大泉洋)の側妻である亀(江口のりこ)の館が打ち壊しになる「亀の前事件」が、一話丸ごとを使って描かれた。
正妻の政子(小池栄子)が懐妊し、後継ぎが期待されるなか、生来の女好きである頼朝は側妻の亀に館を与え、自らの隠れ家として逢瀬を楽しんでいた。政子は万寿(後の源頼家)を産み、母親としての幸せに包まれていたが、やがて夫の頼朝が亀の館に入り浸っていることを知るのであった。
「夫の不義を知った政子は、先妻が後妻の家を襲う『後妻打ち』(うわなりうち)を決断。義母りく(宮沢りえ)の兄である牧宗親(山崎一)に頼んだのでした。宗親はせいぜい門を打ち壊す程度に考えていたものの、加勢した源義経(菅田将暉)が『派手にいけー!』と火を放ち、館は全壊。後妻打ちの直前に北条義時(小栗旬)の手引きで逃げ出した亀は、上総広常 (佐藤浩市)の館に匿われることになったのです」(テレビ誌ライター)
この回では、夫の不義をとがめる妻などほとんどいなかった時代に、後妻打ちを仕掛けた政子の強さが浮き彫りに。また「薄い顔」とさんざん言われつつ、多くの男性を虜にしていく亀の魔性もまた強調されることとなった。
その一方で史実とは違う、もしくは史料として残っていない描写も多々見られた今回のエピソード。そこには脚本を担当する三谷幸喜氏ならではの狙いが込められていたというのである。
「この後妻打ち、歴史的には政子が猛女であることを示すちょっとしたエピソードといった具合で、わざわざ一話丸ごとを費やすほどの大事件ではありません。それを三谷氏は、あえて義経が関わっていたという創作を付け加えることで、頼朝と義経の確執という物語の縦筋を強調してみせたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
世間的には“弁慶と牛若丸”の逸話が知られるように絶対的なヒーローの義経だが、本作では身勝手で扱いづらい人物として描かれているのが特徴。今回の「亀の前事件」でも頼朝から、政子の安産祈願として奉納される神馬の馬引き役に指名されるも、「そんなことをするために私はここにいるわけではありません!」と、頼朝の顔を潰す始末だ。
それに加えて史実と異なる点としては、亀の人となりも挙げられる。物語では周りから「顔が薄い」と容姿をイジられ、侍女を務めている八重(新垣結衣)にはイジワルするなど性格もキツい亀。だが鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」では<容貌すぐれて柔和な性格>と評されているのである。
「かつては頼朝の妻であった八重を、自分が頼朝と逢瀬を楽しんでいる場に呼びつけるなど太々しさが目立つ亀。今回もラストシーンでは、自分を匿ってくれている上総広常に色目を使うなど、その図太い神経は特筆ものです。これくらいの人物でなければ、気の強い政子の夫を寝取ろうとはしないという脚色なのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
政子の気の強さ、亀の太々しさ、そして義経の身勝手さ。この「亀の前事件」は今後、物語を賑わせていくキャラクターにエッジを立てさせる役目を担った回だったのかもしれない。
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