「俺の家の話」が最優秀作品賞を受賞

作品賞は「俺の家の話」 衝撃の結末は「最初から決めていました」(磯山晶CP)【インタビュー前編】

2021.05.19 15:00
「俺の家の話」が最優秀作品賞を受賞

TBS系ドラマ「俺の家の話」が、第107回ドラマアカデミー賞で作品賞ほか主演男優賞、監督賞、脚本賞と4部門を受賞した。磯山晶チーフプロデューサー&勝野逸未プロデューサーが手掛けた本作は、長瀬智也演じるプロレスラー・寿一が、実家に戻り能楽と介護、家族に向き合うホームドラマ。

磯山CP×脚本家・宮藤官九郎のタッグ作品としては、「流星の絆」(2008年、TBS系)以来5度目の受賞、勝野プロデューサーは初受賞となる。(以下、一部ネタバレを含みます)

“大変だったランキング”を作るなら間違いなく上位に

――まずは、受賞の感想を教えてください。

勝野:率直にすごくうれしいです。宮藤さんや素晴らしい出演者のみなさんとドラマをやれただけでもうれしいことで、みんなで「ごほうびみたいな作品だ」と言っていたぐらいです。その上、皆さんに作品が評価していただけたことはとてもありがたいです。

磯山:同時に、プロデューサーとして “大変だったランキング”を作るなら間違いなく上位にランクインする作品だったので、苦労が報われた感もあります。とにかく重たい車輪を回したドラマなので、重たかった分、受賞できて本当にうれしいですね。

――特にどんなところが大変だったのでしょうか?

磯山:やはり、感染症対策をしながらの撮影ですね。撮影中に緊急事態宣言も出ましたし(2021年1~2月)、プロレスのシーンではエキストラさんに集まってもらうけれど、客席からは声援を出せない。というような状況や、実際に感染者が出ないかということも心配でした。キャストも大人数で、特に西田敏行さんに万が一のことがあってはいけないと…。ずっとハラハラしていて、最終話まで無事にオンエアできるのかなという不安でいっぱいでした。

――劇中もコロナがある世界にしたのはなぜですか?

磯山:打ち合わせで「コロナのない世界にするのか、ある世界にするのか」と話し合ったとき、特にプロレスはコンタクトスポーツなので、コロナがない世界にするとその分、撮影でのリスクも伴う……それなら、コロナありで観客やセコンドのみんなはマスクをした方がいいんじゃないかと。

第1話の台本が決定稿になる前の段階で、「観客が社会的距離を守りながら盛り上がっている」という宮藤さんのト書きは入っていたと思います。それを見たとき、これはもうコロナありでやるんだという覚悟が固まりましたね。

――登場人物がマスクをしている姿は、違和感なく受け入れられていたと思います。

磯山:ドラマは時代を映す鏡だと思うので、緊急事態宣言中に放送が始まるのに、テレビ画面に主人公たちがマスクなしのスーパーフリーの状態で出てくることに違和感があるという気持ちはありました。

でも、家族だけの場面はマスクなしとか、本来、介護ヘルパーのさくら(戸田恵梨香)はマスクをする立場ですが、寿三郎(西田敏行)のたっての希望でしないという設定にしようとか、細かいルールを決め……。だから、ゲストで出ていただいたのにマスクを1回も外せなかった方もいました。それでも、マスクをしていても目だけで十分芝居は伝わるんだなという発見もありました。

長瀬は体作りに苦労も…「体重は12~13kg増やしたはず」

――今回、長瀬智也さんと仕事をされて、改めて感じたことはありますか?

磯山:年齢を重ねて知識と経験が増え、本当に何でも知っているし、よく調べているなと思いました。企画段階でプロレスラーの役と決めた時から、長瀬くんは自分でもハードルが高いと思っていたはずですが、でも、この設定が面白いからやらざるを得なかったのだと(笑)。

体作りでは苦労していましたね。太りにくい体質らしく、とにかく1日6食取るとかいろんな手を使って体重を12~13kg増やし、85kgぐらいまでいったはず。ロバート・デニーロか!みたいな感じで(笑)。クランクインの直後はいつもより大きい体になっているし、とにかく気合が入っていたので怖いような感じもしました。

勝野:私は長瀬さんと仕事したのが初めてだったので最初は本当にプロレスラーのようで、ちょっと話しかけづらいオーラがあったんですが、ドラマの中で寿一がプロレスに懸けている段階を過ぎると、だんだん優しくなってきて。最後はみんなのお兄ちゃんみたいな感じの人になりました。

――さくらや元妻のユカ(平岩紙)が、寿一に「殺気を放っていて怖い」と言っていましたが、あれは磯山さんたち女性陣から見た長瀬さんの印象が反映されていたのでしょうか?

磯山:一応、宮藤さんにそんな話はしました。とにかく長瀬くんは相当な意気込みで現場入りしていたと思います。第1話の仕上がりを見て、だいぶ安心した感じがしましたが、それまでは本当にピリピリ。一球入魂という感じでした。

あと万が一ケガをしてしまうと撮影が止まるので、その部分も気にしていました。自分の体をそこまで作ったのは、プロレスの場面でどうしても代役はいやだったとか、いろいろ理由はあると思うんですけど。そこまで仕上げてからさらに、人間ドラマとして素晴らしい芝居をしてくれたので、彼ひとりですごいことをやってのけたと思います。

――長瀬さんはもともとプロレスが好きだったそうですね。

磯山:いろんなレスラーを研究していましたね。例えば長瀬くんから「両手をポケットに突っ込んだまま試合している人がいる」と、たくさん動画が送られてくるんです。「これは何の参考にすればいいのかな?」と宮藤さんに相談すると「僕のところにも同じ動画が来ました」みたいな(笑)。研究が私たちより先に行ってしまっている。それを共有して掘り下げたいという気持ちが強かったみたいですね。

能については初めて学ぶことが多かったみたいで、先生の説明を全部、バンドの演奏に落とし込んで理解していました。「囃子方との息の合わせ方はバンドと一緒ですね」という感じで…。

西田敏行の演技に「すごい人間ドラマを撮っているんだ」

――磯山さんはこのドラマを「長瀬さんの最高傑作にしたい」という思いがあったそうですが、どのあたりでそれが達成できそうだという手応えを感じましたか?

磯山:第1話の終わり、寿一が寿三郎の面倒を見ると決めて家に戻り、入浴を介助しながら「なんでか分かるか? そういうもんだからだよ」と言ったときの顔。そう言われた西田さんの顔を見て、もう普通に泣いてしまいました。台本で読む時とは違う、実際に演技で見て、改めてこれはすごい人間ドラマを撮っているんだと思いました。

――そのときから、最終話の衝撃的な展開は決まっていたのですか?

磯山:そうですね。最初から決めて企画書にも書いていました。最終話は映画「シックス・センス」にしようという話になり、寿一本人は気付いてないとか、そういう仕掛けをやってみました。でも、よく考えたら映画「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」で、既に亡霊のぶっさん(岡田准一)の姿が“お父さんだけはバイバイを言ったから見えない”というのをやっていましたね。

――最終話は長瀬さんへのエールとして描いたのでしょうか。

磯山:それは宮藤さんにしか分からないですけど、私と宮藤さんの間では、第1話で寿一が「親父に褒められたことがない」と言っていたので、最終話は褒める、それも最上級の褒め言葉を考えないとだめだねという話をしました。そして、台本に「人間家宝にはなれたな」というセリフが出てきて、このためにずっと「人間国宝」と言い続けたのか!と。おそらく実際には宮藤さんが後から考えたと思うんですけど(笑)、素晴らしかったです。

――長瀬さんは、この結末を変えなくていいと言ったそうですね。

磯山:結末に関してはそう言ってくれました。ひとつだけ最初の予定から変わったのは、寿一の最後の試合。大きな団体から呼ばれて、後楽園ホールなどで“ブリザード寿”として出そうと思っていたんですけど、長瀬くんは、再デビュー後の“スーパー世阿弥マシン”じゃなきゃ嫌だと。確かに、なぜブリザード寿として呼ばれるのかを考えると謎だなと思って、あの設定になりました。

――そのように、長瀬さんの意見がストーリーに反映されたところも多いのでしょうか?

磯山:いえ、長瀬くんは何事もあまり直接NGは言わないです。台本が面白かったという感想も、最初のリモート会議で、宮藤さん、金子文紀監督、私と4人でしゃべったときしか言ってない。第6話の台本が出来たときは“潤 沢”のライブシーンがあったので、念のため「歌ってくれる?」と聞いて、OKでした。何かに拒否反応があるなら変えないといけないなとは思っていましたが、あまりなかったですね。

※インタビュー後編は5月19日(水)17時配信予定。

(取材・文=小田慶子)

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