令和ロマンが「M-1グランプリ」二連覇、優勝を決定づけた最終決戦の“番手”
やはり令和ロマンは強かった――。王者らしい横綱相撲だったことは間違いないが、何かひとつ“狂って”いれば結果は違ったとも思う。
12月22日、結成15年以内で争う漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2024」決勝が開催。2年連続トップバッターが令和ロマンに決まった瞬間、会場はどよめきに包まれた。本人たちもさすがに予想外だったことを明かしている。しかし、想定外の状況であっても、慌てないからこそ彼らは王者だ。
1本目のネタに選択したのは「名前」。子供の下の名前だけではなく、名字も考えるというネタは、彼らのラジオ番組でトークしていた流れから生まれたもの。それが10月のことで、わずか2か月程度でこのクオリティの作品に昇華したのは高比良くるまの才能にほかならない。学校の席が名前順で決まるというのは全国民にとって通ってきた道で、あるあるとしてはあまりに強すぎる。去年の1本目の「転校生」にも通ずるような“持論系しゃべくり漫才”は圧巻のパフォーマンスで爆笑を巻き起こした。
彼らのハイパフォーマンスの影響を2番手のヤーレンズがもろに受け、1点差に肉薄した真空ジェシカを除いて終盤まで“爆発”は起きていなかった。そんな中で会場を一気につかんだのが7番手のバッテリィズ。ボケのエースがお馬鹿すぎて偉人の名言を理解できないというネタは誰が見てもわかりやすく、ハイコンテクストな令和ロマンや真空ジェシカといった高学歴コンビのネタとは一線を画す。NON STYLE石田の言葉を借りるなら「不意打ち」のような一撃は幅広い層に突き刺さり、9人中6人の審査員が最高点をつけている。
賞レースにおいて場の空気というものは確かに存在する。M-1の歴史上でもその日一ウケたコンビの後は、お客さんの間で余韻が漂ってしまい、ウケづらくなるという現象が度々見られてきた。今年に関してはバッテリィズの直後がそれで、煽りを受けた8番手のママタルトが最低点となってしまっている。
9番手のエバース、10番手のトム・ブラウンもともに健闘したものの、惜しくも届かず、最終決戦にはバッテリィズ、令和ロマン、真空ジェシカが進出。点数で言えばバッテリィズは2位の令和ロマンに11点差をつけ、優勝に向けて明らかに追い風が吹いていた。最終決戦でも番手を自由に選べる立場にあったが、大トリの3番手を選んだことが結果としてその場の空気を変えてしまったように感じた。
バッテリィズ後の3組はいずれも最終決戦に残らなかったわけだから、全員が笑った「あのお馬鹿を早く見たい」という感情が会場に充満していたと想像するのは容易い。しかし、最終決戦でトップだったのは真空ジェシカ。彼らはよりカオスなネタを選択し、らしさを見せつけて、バッテリィズの“残り香”を一掃する。そして、2番手の令和ロマンは1本目と打って変わって「タイムスリップ」というファンタジーなネタを選択。空想感の強いネタが一気に2本続いたことにより、笑いやすい環境が令和ロマンにとって有利に働き、一気に連覇への道を駆け抜けたのではないだろうか。
もちろん、結果論に過ぎないし、優勝した令和ロマンのネタは2本とも後世に語り継いでいきたいほど完成度の高いものだった。しかしつい2年前、ファーストラウンド10組目に登場し3位で最終決戦に進み、最終決戦トップバッターで自分たちの空気のまま優勝トロフィーを手にしたウエストランドの姿はまだ鮮明に記憶に残っている。
「令和ロマン強し」の印象を鮮烈に残した今大会だが、何かひとつボタンをかけ違えていれば結果は違ったのではないか。そんなふうにも考察してしまいたくなるほど最後まで読めない、魅力的な大会となっていた。
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