『おむすび』第10週「人それぞれでよか」、週タイトルに込められた“支える側”へのメッセージ

2024.12.08 16:43

提供：ENTAME next

現在放送中の連続テレビ小説『おむすび』（総合・月曜～土曜8時ほか）。11月2日（月）～6日（金）放送の第10週「人それぞれでよか」では、結（橋本環奈）たち商店街メンバーの働きかけによりナベさん（緒形直人）が一歩、前に進むことができた。

震災で娘の真紀（大島美優）を失い、時が経っても前を向けなかったナベさん。仕事が手につかず、毎日お墓参りに行ってお酒を飲み明かす自暴自棄な生活を送っていた。どうにか立ち直って欲しいと聖人（北村有起哉）や若林（新納慎也）が声をかけるが、ナベさんは「放っといてくれ」の一点張りだった。

そんなナベさんを見てずっとヤキモキしていたのが、商店街でパン屋を営む美佐江だ。さくら通り商店街を仕切る中心メンバーの美佐江は、いつも明るく元気なムードメーカー。しかしいつも前向きに見える彼女も実は震災で兄と義姉を亡くしていた。過去から進めずにいるナベさんを見ると、自分まで悲しくなってしまうのだろう。美佐江はナベさんを遠ざけ、防災訓練にも呼ぼうとしなかった。

「いつまでもうつむいとんの、あの人だけやん」とナベさんに苛立ちを見せる美佐江を見た結は「野菜がそれぞれなように、人それぞれなんやないかなって」と、人が立ち直るまでに必要な時間を野菜が育つ時間に例えて話し始める。それぞれスピードが違って当たり前、そのときをじっくり待とう…と一生懸命伝えようとする結に、商店街メンバーは「分かるよ」と賛同。美佐江も上を向いて静かに涙を流していたのだった。

そして第50回、ナベさんは商店街メンバーの思いを受け取るかのように結たちが握ったおむすびを手に取った。一口一口噛み締めながら頬張る姿は、糸島で佳代が握ったおむすびを口にした歩の姿に重なる。歩はあの日から少しずつ前を向き、真紀ちゃんと一緒に生きる覚悟を決めたのだ。ナベさんにとっても、このおむすびが再び“生きよう”と思えるきっかけになったに違いない。

週タイトル「人それぞれでよか」は、傷ついた人だけではなく“支える側”にも当てはまる。結や佳代（宮崎美子）のように、「美味しいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」と優しさを差し出す人、ナベさんに靴のリメイクを頼んだ歩（仲里依紗）や、各地から食材を集めた永吉（松平健）のように思いついたことをすぐに行動に移す人。現地には行けなくても募金やメッセージで思いを寄せた人もたくさんいたはずだ。

タイミングによってはかける言葉を間違えたり、厚意と分かっていながら受け止めきれないこともあるだろう。それでも時には支える側に、時には支えられる側になりながら、少しずつ自分の内面と向き合っていく。「人それぞれでよか」は登場人物も視聴者も含め、全ての人を肯定してくれる言葉だった。

昨今、頻発化している自然災害。悲しいニュースを前に、何もできない自分の無力さを痛感することも多い。それでも人それぞれできることはある。自分には何ができるのだろう…そんな風に考えるチャンスをくれた『おむすび』に心から感謝している。