BTS新アルバム「BE」を一層楽しむポイント コロナ禍で4月から散りばめられたヒントたち
2020.11.20 10:03
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BTSが20日、ニューアルバム『BE(Deluxe Edition)』をリリースする。このアルバムは、新型コロナウイルス禍でBTSが自身と向き合い、世界へ向けての慰めをしたためた作品。 “新たな日常”を過ごさなければならなくなった中での、彼らの等身大の思いが込められ、制作過程もこれまでとは大きく異る。春頃から制作風景が少しずつ公開されてきた本作だが、今夏の「Dynamite」以降、本格的にBTSに興味を持った人も多いのではないだろうか。そこで、最新作『BE』をより楽しめるポイントをまとめて解説。
『BE(Deluxe Edition)』はコロナ禍で作られた特別な作品
『BE(Deluxe Edition)』は、今年2月にリリースされた前作の4thフルアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』から実に8ヶ月ぶりとなるアルバムだ。今年6月に7周年という意味深い節目を迎えたBTSが、デビュー8年目に新たに送り出す作品という点でも大きな意味があると言える。そして今回のアルバムの軸となるのが、コロナ禍で彼ら自身が考え抜き、世界の人々と共有しようとした、伝えたかったコト。そのため本作はアルバムコンセプト、構成、デザイン、ミュージックビデオまで、アルバム制作全般にメンバー自らが参加した特別なものとなっている。
YouTubeなどを通し、アルバムの作業過程を少しずつ公開してきたBTS。出来上がったアルバムからは、準備する過程で感じた彼らの感情、悩みの痕跡をところどころから見つけることができるだろう。
音楽面に関しても、今回は最も“BTSらしい”音楽が収録されたという。それを裏付けるように、公開されたトラックリスト『Life Goes On』『Fly To My Room』『Blue & Grey』『Skit』『Telepathy』『Dis-ease』『Stay』『Dynamite』のうち、『Dynamite』以外の全ての楽曲制作にメンバーがまんべんなく参加している。これまで大部分の楽曲制作に関わってきたRM、SUGA、J-HOPEはもちろんのこと、今まではボーカルに徹することが多かったJIN やJIMINも作曲を行っている点で、普段より一層BTSらしさを反映したアルバムとなる予感だ。
“制作過程をファンと共有”異例のアルバム作りがスタートしたのは春
そもそも今回のアルバムについてのエピソードが始まったのは、世界各地でロックダウンが余儀なくされていた時期の4月17日。RMが公式チャンネル‘BANGTANTV’で行ったYouTubeライブだった。何気なく配信されたライブにて、RMは「僕たちのニューアルバムが出る予定で、準備を始めた」と告知。さらに“準備過程も共有する”と新たな試みを打ち明けた。発売時期や、どんな曲を歌うか、どんなタイトルにするのかも決まっておらず、でき上がっていく過程を少しずつファンに共有するという、全く新たなスタイルのアルバム制作が始まった。
当時は世界中の多くの人が、家の外にも出られない生活を強いられていた時期。多くの楽しみや、つながりが制限される中で、彼らが“楽曲作りを公開する”というこれまででは考えられなかった方法でファンとコミュニケーションを取ろうとしたことに、多くのARMYが心躍らせた。
「Life Goes On」に込められた思い
本アルバムのコンセプトは、リード曲「Life Goes On」のタイトルがそのまま表している “新しい日常でも僕たちの人生は続く”というメッセージだ。「Life Goes On」は、今年9月の国連総会でBTSが、コロナ禍で苦しむ若者に向け特別スピーチを行った際にも、繰り返し強調された言葉。このフレーズが誕生したのも、メンバーたちがアルバムについて語り合っていた会話の中でのことだ。
YouTubeで公開されている、4月某日のメンバー会議(動画公開は5月11日)では、このアルバムの核となる要素が話し合われているため、この動画だけでもチェックするとアルバムの解釈が深まるはずだ。
アルバムの音楽プロジェクトマネージャーに選ばれたJIMINの仕切りで始まったこの会議では、まず彼らはアルバムテーマについて話し合った。その中で出てきたのがRMの「Life Goes On」という言葉。RMは「コロナ禍になってまず思ったのが、外でどんなことが起こったとしても、人々の人生は続いていくということだった。僕らがどうやって日常生活を維持しているのかを見せることが、人々にとって必要なんじゃないか」と考えを明かし、SUGAは「とにかくこの状況に対して、不特定多数の人たちの慰めになるような言葉が求められてるのでは」と話した。
そのまま『Life Goes On』は、リードトラックの表題となり、アルバム全体に流れるテーマにもなった。
収録曲の内容をめぐって…話し合いは白熱
同じ会議でメンバーは、収録曲数やその内容についても話し合った。曲数についてはVが「7周年だから7曲は?」と提案するも、7曲を準備するのは大変なため、メンバーが会話するだけの『Skit』も含めて7曲にしようという流れに。結果的には、既に配信リリースされている『Dynamite』を入れて8曲が収録された。
またBTSのアルバムは、全員参加曲とユニット曲のバランスも大切だ。この日の会議では、ユニット曲は2曲にするという意見が優勢だったが、果たして結果はどうなったのか(執筆時にはどの曲がユニット曲か不明)?
そして、最も気になるのが曲の内容。特に、曲に盛り込むキーワードを話し合う中で、RMが「テレパシー」というワードを挙げたのが印象深い。コロナ禍で誰もが大変で、「大変だ」ということを口に出せない状況もある今、これまで築き上げてきた絆によって言葉にしなくても分かりあえるようなことが「テレパシーなんじゃないかと思った」と語ったRM。アルバムにはずばり『Telepathy』という楽曲が収録された。
ほかにも、SUGAが自身の最近の経験をもとに「“手紙”がキーワードだったらいい」と話したり、J-HOPEが「1曲くらいは『フンタン少年団』みたいな僕らの色を見せたらいいと思う」と提案したり、Vが「本当にテンションが上がる曲があったらいいと思う」と言ったり。JINは「『Spring Day』のような大衆受けするものがやってみたい」と言い、JUNG KOOKは「『あーむかつく!』みたいなストレス解消になる曲があったらどうかな」と提案。
どんな曲が収録されたのか、会議での会話と照らし合わせてアルバムを聴いてみるのも楽しいだろう。
自作曲の採用は狭き門
そして全メンバーが作曲に参加することとなったわけだが、実際は、自身が作った曲やフレーズが収録曲に採用されるまでには熾烈なレースがあったようだ。BTSの楽曲は、プロデューサー陣やメンバーが曲を制作し、その中で良いと判断されたものが採用されるというのが主流。今回は、特に各メンバーがたくさんの曲を提出したという。
VやJIMINは個人で行ったライブ配信の中で、グループのための曲を作ったが採用されるかは分からない…と口を揃えた。それだけの狭き門をくぐり抜け、採用されたのはどんなサウンドなのか。気になるメンバーがクレジットされている曲は、そんな部分にも注目して聴いてみると良いだろう。
“ビジュアル会議”の内容がコンセプトフォトに
アルバムのビジュアル面に関しては、Vがプロジェクトマネージャーを担当。Vは普段からおしゃれなRMとJ-HOPEにスタイリング面などの担当をお願いし、5月7日には3人による“第一次ビジュアル会議”の様子をライブ配信した。そこでRMは「最近世界的に“部屋と家”という空間が重要になった。メンバーそれぞれ(自分だけの)部屋を飾って、衣装を決めて撮るのもいいと思う」とアイデアを出したり、J-HOPEも「メンバーが一緒に一つの部屋に集まって、楽な服を着てマイクを持って遊んでいるシーンも入るといい」と案を出したり。またVは「旅に出て撮った写真のように自然な感じを出したい」と言い、RMとJ-HOPEが共感する場面もあった。
この会話はまさに、アルバムのコンセプトフォトやMVの風景に生かされている。今回の個人コンセプトフォトは、メンバーたちの個性を表現した「部屋」をテーマにし、各メンバーがそれぞれの部屋を自分の趣向に合わせて飾った写真。一方グループコンセプトフォトは、ピアノとマイクなどが置かれた部屋に7人が集まってリラックスし、音楽パーティーを楽しんでいる姿だ。
そしてアルバムに収録される特典の随所には、Vが話したように、メンバーだけでお互いを撮影し合った自然体の写真が使用されている。
MVはJUNG KOOKが監督
『Life Goes On』のリリースでサプライズだったことがもう1つ。それは、JUNG KOOKがミュージックビデオの監督を務めたという点だ。まさにメンバーによるメンバーのMV撮影となったわけだが、そのクオリティは心配無用。JUNG KOOK はこれまでもハイクオリティな映像作品でファンを驚かせており、BTSの歴代ミュージックビデオを監督し多くの賞を受賞しているLumpens氏にも一目置かれているほどだからだ。8月某日にはMVに関するメンバー全員の会議が行われ、内容やロケ地などについてさまざまな意見が交わされた。どうすれば“人生は続く”という内容を表現できるのか。まずは
・普段の仕事をしている自分たちの姿や、ファンがいないオンライン公演を撮影する
・家に出られない状況で、誰でも共感できる家にいる姿を撮影する
・まるでコロナ以前のように外に遊びに行って楽しむ姿を撮影する
という3つの意見がまとまった。
その後、VとJUNG KOOKが実際に制作陣とMVのディティールを相談している映像も公開された。そこで2人は、メンバー同士で撮影をし、自分たちが働いたり、休んだりしている姿をクロス編集することや、無観客のオンライン公演の映像、家にいなければいけない様子、遊んだり旅行に行ったりすることができた過去を回想する映像を織り交ぜる案を話した。
既に公開されている『Life Goes On』の‘Offcial Teaser 1’は、メンバーが屋外で薪を囲んでいる映像と、宿舎にて部屋着姿でゆったりしている映像を合わせたもの。‘Offcial Teaser 2’は、メンバー同士が撮影したと思われるそれぞれの自然体な姿だった。果たして黄金の末っ子・JUNG KOOKが監督したMVはどのような仕上がりになっているのだろうか。
その他にも新アルバムのヒントが盛りだくさん
・SUGA画伯の力作絵画は今…コロナの影響もあり、絵画が新たな趣味になったというSUGA。4月から5月にかけて、巨大で真っ白なキャンバスに絵を描いて作品に仕上げていく様子を、YouTubeライブで生配信した。合計3時間ほどにもなるSUGA画伯の制作生中継。ときには失敗する姿も見せ、「いつも思い通りに行くとは限らない。それが人生の教訓」とありがたい教えを説いていた画伯の絵画も、アルバムの1パーツとなっているようだ。
・J-HOPEのオリジナルサウンドが…
6月5日に作業部屋からYouTubeライブを行い、様々なアーティストの映像を見て思いを巡らせたり、黙々と楽曲制作を行う様子を見せたJ-HOPE。彼がこの時作っていたビートは、どこかで使われている…?
・JUNG KOOK、録音した歌声が気になる
8月某日、Pdoggプロデューサーとレコーディングに挑む様子を公開したJUNG KOOK。しかし、彼が歌を歌ってる箇所は動画でミュートになっていた。果たしてこの歌はアルバム収録曲なのだろうか?
・まるで寄せ書き?メンバーの直筆がたくさん
11日に公開されたトラックリストイメージは、それぞれの曲名がメンバーの直筆で書かれており話題に。そのほか、13日にYouTubeで公開された、メンバーがアルバムの中身を確認する動画では、歌詞カードまでメンバーの直筆であることが明らかに。思えば10月、RMとJUNG KOOKが“何か”をひたすら紙に書き綴っている動画が公開されていた。こんなところまで、メンバー自らの痕跡が感じられるアルバムとなっている。
・もう一度国連スピーチを聞き直してみると
「Life Goes On」という言葉が世界中に伝わった、9月の国連スピーチをもう1度聞き直してみよう。JIMINはコロナ禍の生活について「できることは窓の外を眺めることだけで、行くことができるのは僕の部屋だけでした。昨日は全世界のファンの方々と一緒に踊って歌ったのに、今日は僕の世界が一部屋だけになってしまったようでした」と表現した。これは収録曲のタイトル『Fly To My Room』を彷彿とさせる。もしかしたら、このスピーチの中にアルバムについてのヒントが他にも紛れ込んでいるかもしれない。
挙げればきりがないほど、本作は未曾有の世の中となった今年、彼らが息をした呼吸1つ1つを詰め込んだような作品だ。人生は続くと教えてくれる作品であると同時に、パンデミックの中で傷ついたすべての人への慰めだ。誰よりも劇的な7年間を生きた7人の少年たちが、今の世界で思う“BTSらしさ”とは何なのか。メンバー自身が特別に力をつくした分、丁寧にその音と思いを汲み取りたいアルバムとなっている。(modelpress編集部)
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