「こんな無茶ぶりはない」―木村拓哉がフランス語での演技にあがいた日々 映画『グランメゾン・パリ』インタビュー
2024.12.26 06:00
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<木村拓哉インタビュー>映画「グランメゾン・パリ」(12月30日公開/監督:塚原あゆ子)
2019年秋に「大人の青春」を懸けたヒューマンドラマとして人気を博した「グランメゾン東京」が『グランメゾン・パリ』として帰ってきた。主演はもちろん型破りなシェフ・尾花夏樹を演じる木村拓哉(52)。今作では世界最高峰と称されるフランス料理の本場・パリを舞台に、尾花たちがミシュランの「三つ星」獲得に挑む。撮影ではフランス語で構成されたシーンの連続に、これまで数々の役を演じてきた木村でさえ「こんな無茶ぶりない」「現場であがいた」と悪戦苦闘の日々だった。
「望めば叶う」――木村拓哉の軸になった言葉
― 今作はフランス料理の本場・パリが舞台。劇中では日本語のセリフと変わらない量のフランス語での芝居にも挑戦した。台本を最初に読んだときの感想は「撮れるわけないだろう」だった。【木村】パリでロケをさせていただく、イコール、パリの住民になっていないといけないということ。人との感情のやり取りもですし、すべてパリの形式でやってくださいということだったので、こんな無茶ぶりないだろうと。要は「空を飛んでください」、それくらいのことが脚本の中に描かれていたので、こんなの無理に決まってるじゃんと最初は思いました(笑)。
― 映画が完成しても「できているか否か、自分の中では今もわかっていない」と木村。それでもクランクアップまで走り抜けられた背景には、たくさんの人たちのサポートがあった。
【木村】「空の飛び方」を絶っっ対に諦めずに僕らに教えてくれるスタッフがいてくれました。それは正直、いま思い返したら最低なくらい「無理なものは無理」とかなり後ろ向きのモチベーションだった自分を前にしても。彼らがいたからこの作品が完成したのは事実です。
― フランス語での撮影、一刻も早くフランス語を覚えたい木村をよそに、そのスタッフが最初に教えたのはセリフにない言葉だった。
【木村】フランス語で言う「望めば叶う」。僕は早くセリフを教えていただきたかったのに、この言葉がもっとも大切だからと。いま振り返れば、僕が今回の作品をやらせていただく中で、1番の軸にもなりました。とあるシーンで、教わったセリフを全部言い終わったとき、グランメゾンの仲間とぱっと目が合ったんですけど、1番最初にパスしてもらった「望めば叶う」が思わず口から出ていて。編集では使われないだろうと思っていたら使われていたので、そのシーンもぜひ観ていただきたいですね。
― 苦労したのはフランス語を覚えるだけではない、フランス語で感情を伝えること。尾花を演じる、という大前提がある中では、むしろこちらが求められた。
【木村】難しいと捉えてしまうと、たぶんゴールがなくなってしまう。難しいではなく、とにかくこうでしょ、という感覚をなくしました。やってみるしかない、というか。僕らにフランス語という「空の飛び方」を教えてくれた人が、とにかく妥協しない人だったから。それに実際に撮影していると、このセリフもいるよねっていうのがゴロゴロ出てくる。出てきたら、これを尾花として言うんですよね、となる。要するに尾花としてのワードのチョイスをしないといけないんですよね。本当にそれは現場で全員があがいていました。
木村拓哉が「金髪」にした理由
― 2019年の連続ドラマ最終回では尾花が世界に挑もうとしているシーンで締めくくられた。それから5年、尾花がどのように生きていたか、そして今どのような見た目になっているか、木村なりに考え尽くした。導き出した答えは、本人も予期しない思わぬ展開となった。【木村】また尾花っていうやつになります、となったとき、最初のドラマでああいう結末になって、それから現実世界はコロナになり、きっと尾花の生きている世界もそうで、その間あいつはなにをやっていたんだろうと、本当に好き勝手に想像しました。一つのヒントになったのは、映画の前のエピソード(※)。その台本を読ませていただいたとき、あの尾花が同じ風貌でそのまま現れるって絶対にないだろうと、髪の色を変えてみました。監督の塚原さんは相当びっくりしていましたが、僕的に驚いたのは、映画の料理監修をやっていただくのはこの人です、と小林圭シェフの写真を見たとき。「え、かぶった」と恥ずかしくて(笑)。この5年ずっと髪を切っていない姿とかも思ったんですけど、映画へのジャンプ台のエピソードが東京ではなく京都で、京都って尾花で考えると似つかわしくない場所なんですよね。その違和感を見せるなら金髪かなと思いました。
(※1)撮り下ろしの完全新作スペシャルドラマ。12月29日(日)よる9時からTBS系列にて放送。尾花役の木村のほか、「グランメゾン東京」のシェフ・早見倫子役の鈴木京香、スーシェフ・平古祥平役の玉森裕太、相沢瓶人役の及川光博、ギャルソンを務める京野陸太郎役の沢村一樹ら豪華キャスト陣が再集結する。
木村拓哉がパリで印象に残った料理
― 3月にはパリで大規模なロケを実施。ロケの合間には「Restaurant KEI」(※2)の料理に舌鼓を打った。印象に残っている食べ物には、パリで食べた蕎麦も挙げた。【木村】「当たり前じゃん」ってツッコまれそうですが、監修してくれた彼のお店「KEI」でいただいたコースはとんでもなかったです。うん、とんでもなかった。これ本当に考えたの!?って思うような、すごく豊かな経験でした。それと「円」というお店で食べた蕎麦がとても美味しかったです。今回、長期でパリに行かせていただいたこともあって、そろそろ蕎麦とか食べたくない?となって。知人から聞いたお店をふっと思い出してお邪魔させていただいたんですけど、パリでやってらっしゃるのをすごく納得させてくれるようなお店でした。
(※2)本作の料理監修を務めたのが「Restaurant KEI」の小林圭シェフ。実際に2020年にアジア人初となるフランスの三つ星を獲得した。異国の地のシェフが個人店で三つ星を獲ることは奇跡といっても過言ではない。今でもミシュランガイド・フランスでアジア人店舗の三つ星は「Restaurant KEI」1店舗のみ。
木村拓哉の「夢を叶える秘訣」
― 「望めば叶う」、今作の撮影で「1番の軸にもなった」と木村本人がいう言葉。挫折や国境の壁を乗り越え、仲間と共に世界最高峰の「三つ星」を手に入れることはできるのか、というストーリーにちなみ、夢を叶えるために必要だと思うことを聞くと、長く第一線で活躍し、どの現場でも“クルー”を大切にしてきた彼らしい答えが返ってきた。【木村】えー……(長い沈黙)。幼稚でもいいですか。いまいろんなことがあって、いろんな手法もあって、だからこそかもしれないですけど、単純に「大丈夫」っていう3文字ですね。「大丈夫」というワードは、それを手渡しできる、もしくはパスをし合える誰かしらがいてくれれば、どんなにきついことがあったとしても、ものすごい支えになるし、力になるし、最悪の結果にならない。それを言ってくれる人の存在の大きさを痛感することもあるんじゃないかな。僕も「大丈夫」と言われて、力になった経験がたくさんあります。だから「大丈夫」って言えるときは言ってあげたい。それはSFを超えた能力で、誰でもスーパーマンになれるんだって思います。
――――― これまで様々な役を演じ、多くの人を虜にしてきた木村。尾花の料理に対するストイックさと彼の作品に対するそれはとても似ているように感じた。当たり前かもしれないが、フランス語で発せられるセリフには、スクリーンに字幕が入る。映画の肝となるシーン、字幕を追うだけではなく、木村含め全キャスト、全スタッフの想いが乗ったやり取りに刮目してほしい。 ―――――(modelpress編集部)
衣装:WACKO MARIA
木村拓哉(きむら・たくや)プロフィール
1972年11月13日生まれ、東京都出身。O型。STARTO ENTERTAINMENT所属。数多くの人気ドラマ、映画で活躍。代表作にドラマ「ロングバケーション」「ビューティフルライフ」「HERO」「BG~身辺警護人」「グランメゾン東京」「教場」、映画「武士の一分」「無限の住人」「検察側の罪人」「マスカレード」シリーズなど。映画『グランメゾン・パリ』は12月30日(月)から全国公開。
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