「光る君へ」吉高由里子、紫式部は「罪な女だなと思います」大石静の描くラブシーンの面白さとは<インタビュー前編>
2024.01.05 12:00
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吉高由里子(よしたか・ゆりこ/35)が主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(総合テレビ、毎週日曜午後8時~/BS・BSP4K、毎週日曜午後6時~/BSP4K、毎週日曜午後0時15分~)が1月7日から放送開始。吉高が2023年11月に行われた合同取材会に出席し、初回放送に向けてこれまでの撮影エピソードや自身が演じる紫式部への想いを語った。<前編>
吉高由里子主演大河ドラマ「光る君へ」
平安時代を舞台に、壮大で精緻な恋愛長編「源氏物語」を書き上げた紫式部(まひろ)を吉高が演じ、「源氏物語」執筆に欠かせない1人の男性・藤原道長を柄本佑が演じる。ドラマでは紫式部が生涯心を寄せ、陰に陽に影響しあいながら人生をたどる生涯のソウルメイトに。脚本は大石静が担当する。今作は大河ドラマの歴史において、「おんな城主 直虎」以来、7年ぶりに女性が主演。さらに、1973年放送の平将門を主人公にした「風と雲と虹と」に次いで2番目に古い時代を扱う。
吉高由里子、大河クランクインから半年の心境
― 平安神宮でのクランクインは5月でそこからまもなく半年が経過しようとしています。これまでの半年間の撮影期間を振り返ったときに今の率直な気持ちや感想をお聞かせ下さい。吉高:半年というのはこんなにあっという間なのかというぐらいで、ワンクールだったら2本目が終わる頃なんだなと思うとどれだけこの作品が長い期間でやっているかを改めて実感しました。現場は、本当にセットの中なのかと思うくらい、池ができていたり、建物もコロコロ変わったりして、プロフェッショナルのお仕事をすごく近くで見させて頂いて「この時代に自分がタイムスリップしていたら、どうなっているのかな」と毎日妄想するのが楽しみです。見たことのない小道具ばかりで半年経った今でも毎日視界が新鮮で楽しいですね。着物は毎日毎日着る度に自分の肌の形に合ってくる革靴のようなところがあって自分に馴染んでいく着物を育てていく日々です。あとは、まだまだ撮影は続くので何事もなくこの作品を無事、撮りきることができれば良いなと祈っています。
― クランクイン時の撮影の様子や感想を教えて下さい。
吉高:平安神宮でクランクインしてスタートが切れるなんて願ってもないことだったのですごく嬉しかったですし、やっぱり平安時代の衣装で平安神宮を歩くだけでも自分の中でちょっとした興奮というか高揚感と、緊張で不安な気持ちともう始まるのかという気持ちと、色々噛み締めていました。
吉高由里子、演じる紫式部の印象「罪な女だなと思います」
― 紫式部や「源氏物語」は小学校の教科書にも出てくるような誰でも知っている歴史上の有名人だと思いますが、実際に撮影を通して抱かれていたイメージが変わってきた部分があれば教えて下さい。吉高:これだけ世界中の人に知られているのに、誰も彼女の詳しいことは知らないというのが不思議な存在だなと思いました。当時の女性の記録が日記くらいしか本当に残っていないみたいで。より具体的な事実を書いている男性の記録から推測するぐらいしかないんです。「源氏物語」を読んでいると、じっくりと人を見ている人なのかなと思いました。あとは、この役をやると発表されてから「光源氏(を演じるのは)誰なの?」とよく聞かれるんですけど、「違うの、『源氏物語』を書いた女性の話なんだよ」というのを太字で皆さんにお伝えして頂けたらなと思います(笑)。
― 吉高さんが役作りで「源氏物語」にまつわる文献や絵巻で何か実際に見たものや、あるいはこれから見たいと思っているものがあれば教えて下さい。
吉高:「御堂関白記」という道長の日記の直筆を見に行かせて頂いて、私は読めなかったんですけど、大石さんがもう震え上がるくらい興奮していて、それでまた筆が進むんだろうなと思いましたし、本当に物語や文字に携わる仕事がどれだけすごいことなのかと実感しました。こうやって1000年前のものが残っていることがすごいですし、すごく貴重な経験をさせて頂いたと感じました。紫式部のものはほとんど残っていないんですけど、それもずるいですよね(笑)。残ってないからこそ想像させてしまう罪な女だなと思います。亡くなって1000年も経つのに、この作品を観てくださる視聴者の方も「どんな人だったんだろう」と想像すると思うので魅力的な人なんだなと思います。
吉高由里子、大石静の描くラブシーンの面白さとは
― 脚本がかなりドラマチックな印象を受けましたが、脚本の印象と、まひろという人物をどのように捉えて演じようと思っているか教えて下さい。吉高:大石先生の本は非常にパワフルで情熱的で一行一行のインパクトが強いなと思いました。何をさせようとしているのか怯えながらいつも新しく来る本を読んでいます(笑)。でも一行ずつ読んでいくと前の一行と全く逆の気持ちを言っていたり、感情の起伏がすごく情熱的に書かれていると思いました。まひろも大人のようで子供の部分もあったり、甘えたいのに甘えられない葛藤もあったり、肩に力を入れて自分を抑え込みながら生きているような幼少期でした。今演じているのは10代後半なんですけどまだ若い時代でここから道長さんと恋に落ちていきます。よく万感の思いという言葉を使っているんですけど、道長と会うときのまひろはそういう気持ちです。戦がほとんどない分、人間味があるドラマになっているなという実感があるので、ラブストーリー以外の政治的な戦いも面白くなっていると思います。
― 大石さんは恋愛ドラマの名手として知られていますが、今回本を読まれていてラブシーンですごいなと思った部分や演じられる上で力を入れているところを教えて下さい。
吉高:本当に現代っぽい感じの言葉のラリーがあります。ぶつかり稽古をしているのかなというくらいスピード感があるセリフのやりとりがあるのに急に撫でるような時間の流れになったり、脚本だけでも時間の速さが変わって見えるのが面白いなと思いました。
― 主人公のまひろの性格や生き方で、視聴者に注目して欲しい点や共感して欲しい点を教えて下さい。
吉高:まひろは笑えるぐらい頑固なので、そんな意固地な女が自分自身と向き合って、最後に残った大切なものを探す物語なのかなという風に感じているのでそれを見届けて頂けたらと思います。
吉高由里子、4つの習い事に苦労
― 平安時代の文学者を演じられる上で苦労されたことや努力されたことは?吉高:右手で文字を書く分、私は左利きなので筆のシーンはやっぱり緊張します。文学者としてはこれからどんどんそういうシーンが増えていくんだと思うんですけど、最初からサラサラ書けるわけではないので、書き始めは手が震えました。そのシーンを撮影する前に30分くらい時間を頂いて練習をしてから本番に入ったり、文字が主役なドラマでもあるのでそこはすごく丁寧に練習もして撮影しています。
― 琵琶琴、書、舞、乗馬など役作りのためにさまざまな習い事に挑戦しているそうですが、特に苦労している習い事は何ですか?
吉高:大忙しですね。これはこの作品をやると決まったときからわかっていたことなんですけど、こんなに習い事が多いのはびっくりしました。特に苦労しているのはやっぱり書です。その日によってコンディションも全然違うので、手の震えが止まらない日はずっと止まらないですし、手が慣れてきて書けるようになるんですけど、何分か経ったら震え始めたりして生き物だなと感じています。琵琶も練習していますが、自分がこれまで触れてこなかったので正解がわからないですし、「もっと良い音はどこなんだろう、限界はどこなんだろう」と探るのが大変だなと思います。
― 「馬に乗りたい」と以前会見で発言されていましたが、実際に乗ってみていかがでしたか?
吉高:思っているよりもとてもハードで、全身運動だったので「現場まで馬で入りたい」みたいなことを言っていたことが「とんでもない、すみませんでした」と思いました(笑)。
― 今後も続けていきたい習い事は?
吉高:難しいですね。努力は嫌いですけど、字が綺麗だったら良いなとは思います。
吉高由里子、平安時代の見どころは?カルチャーギャップも明かす
― 衣装もすごく素敵でしたが、ご自身ではいかがですか?髪型も含めて大変なことを教えて下さい。吉高:着物は毎日毎日着る度に自分の肌の形に合ってくる革靴のようなところがあって。自分に馴染んでいく着物を育てていく日々です。大変なことはとにかく重いこと。かつらもずっと後ろから髪の毛を吊られている感覚なので首と肩が凝ります。ロケでもよくコンビニに寄るんですけど、店員さんもびっくりするのでふらっと行きづらくて「行くぞ!」という気持ちを持ってから行きますね(笑)。
― まひろとして平安時代を生きてきて特にカルチャーギャップを受けたところや、逆に「ここは今と全く同じだったんだ」と感じたことがあれば教えて下さい。
吉高:実家に窓がない、ドアもない、壁もない、隙間風だらけなのですごく寒そうだなと思って、冬は寒かったけど夏は涼しかったのかなという想像をしたり、御簾1枚のプライバシーの環境はどうなっているんだろうと不思議に思いました。幼い頃からの従者がいるんですけど、「ずっと一緒にいるんだな、ずっとついてくるんだな」と思いました(笑)。好き勝手どこにも行けるわけじゃないというよくわからないルールもあって、姫も姫で大変だなと思うし、身分が低い人たちの方が比較的自由だったと思うとお金持ちとどっちが良いんだろうとか色々な想像をしますね。同じだなと思ったことは人の噂話が好きだったり、人を好きになって浮いたり沈んだりする感情の起伏は今と変わらないんだなと思いました。
― 平安時代ならではの撮影エピソードは?
吉高:セットの中に馬がいるのは初めて見て「大河って大胆なのね」と思いました(笑)。出演していた馬はプロフェッショナルで、矢部さん(まひろの従者・乙丸を演じる矢部太郎)が私を追いかけて走ってくるシーンで間違えて転んじゃったときもなんともない顔をして「何してんの?」と見ていたので驚きました。
― 平安時代が舞台ということで、馴染みがないからとっかかりにくいという視聴者に向けて今作のアピールポイントを教えて下さい。
吉高:画面がすごく優しいです。色使いが繊細ですし「その色とその色を組み合わせるんだ」という着物もいっぱいあります。目で見るもの、聞こえるもの、触れる風や匂い、音など五感に敏感な時代なので、人が揺さぶられる風景がいっぱいあるし、それが歌になって耳を楽しませて…という風に連鎖していくので今だったら見落としてしまうような小さい幸せを上手く活かしてそれが作品として残っているのかなと思うので、そこも見どころだと思います。
(modelpress編集部)
★後編へ続く
「光る君へ」第1回あらすじ
1000年の時を超える長編小説「源氏物語」を生み出した女流作家・紫式部の波乱の一代記。平安中期、京に生を受けた少女まひろ(落井実結子)、のちの紫式部。父・藤原為時(岸谷五朗)の政治的な立場は低く、母・ちやは(国仲涼子)とともに慎ましい暮らしをしている。ある日まひろは、三郎(木村皐誠)という少年と出会い、互いに素性を隠しながらも打ち解けあう。再び会う約束を交わす二人だったが…激動の運命が始まる。吉高由里子(よしたか・ゆりこ)プロフィール
1988年東京都出身。2006年、映画初出演となる「紀子の食卓」で「第28回ヨコハマ映画祭」最優秀新人賞受賞。2008年に映画「蛇にピアス」で主演を務め、「第32回日本アカデミー賞」新人俳優賞と「第51回ブルーリボン賞」新人賞をダブル受賞。2014年には連続テレビ小説「花子とアン」(NHK)でヒロインの村岡花子を演じた。主な出演作品は、ドラマでは「東京タラレバ娘」、「正義のセ」、「知らなくていいコト」(日本テレビ)、「わたし、定時で帰ります。」、「危険なビーナス」、「最愛」(TBS)、「風よあらしよ」(NHK)、「星降る夜に」(テレビ朝日)。映画では「ユリゴコロ」、「検察側の罪人」、「きみの瞳が問いかけている」。大河ドラマへの出演は2008年の「篤姫」以来2回目。
【Not Sponsored 記事】
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