モデルプレスのインタビューに応じた横浜流星(C)モデルプレス

横浜流星、“喪失”を乗り越えた経験と得た強さ「引きずって負けてばかりだった」 2年間の役作りの葛藤と成長にも迫る<「線は、僕を描く」インタビュー>

2022.10.22 08:00

10月21日より公開中の映画「線は、僕を描く」の主演・横浜流星(よこはま・りゅうせい/26)のモデルプレスインタビュー。今作で、水墨画と出会い学ぶことでその世界に魅了されていく主人公・青山霜介を演じた横浜は、撮影前から水墨画を猛特訓し、約2年間水墨画と向き合い続けてきた。作品にかける想い、そして喪失と再生が描かれたストーリーから横浜自身が喪失や悲しみを乗り越えた経験も率直に明かしてくれた。

横浜流星、水墨画の世界で感じた難しさと向き合い続けることができた理由

横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
2020年「本屋大賞」3位、2019年TBS「王様のブランチ」BOOK大賞を受賞した青春芸術小説「線は、僕を描く」(砥上裕將著/講談社文庫)を、「ちはやふる」を青春映画の金字塔に仕立て上げた小泉徳宏監督を筆頭にした製作チームが再結集し、実写映画化。実際の水墨画の大家である小林東雲氏が水墨画監修として名を連ねた。

横浜流星(C)モデルプレス
今作で初めて触れた水墨画の世界で、そのマインドに感銘を受けたと語る横浜。

「最初は(原作の)砥上先生が教えて下さったんですけど、東雲先生も砥上先生も『まず楽しんで下さい』とおっしゃっていて、お手本を描いて下さっているときもすごく楽しみながら描いていたのが印象的でした。どうしてもこういう繊細な作業は楽しみながらというよりも、上手く描かなきゃいけないという固定概念に縛られてしまうと思うんですけど、楽しみながら描くこと、あとは失敗はない、ということをちゃんと心に刻んでおけばもっと自由に描けるのかなと思いました」

他の作品と並行して多忙を極める中、少しでも時間が空くと「練習がしたいです」と申し出、その熱意には監督も驚かされたという。コロナ禍の影響で撮影が大幅に延期になった間も横浜は水墨画への想いを止めることなく、東雲氏との対面の指導が叶わない時はオンライン上で作品の添削をお願いし続けた。しかし先行きが不透明な現状に、「一度は心が折れかけていた時もある」そうで、継続することの大切さをこれまで実感してきたが、自身のそのときの状況が線に表れるという水墨画の世界においてままならない難しさを実感することもあった。

「練習の間にも別の作品をやっていたんですけど、役によって引きずっているときもあって、そのときの心情がストレートに線に出てしまうんです。例えば描いた“春蘭”を1年間通して全部並べたら全然違うと思うし、ブレブレだったと思います。『こないだは上手くできたのに』とか『こないだはスムーズに行ったのに今日は描けない』ということがあって、もちろん継続は大事なんですけど、自分の中で『継続は力なり』を信じて来たけど、水墨画はそれが結果として出ないんですよね。だから『今、自分はどこの道に進んでいるんだろう』という不安も大きくて、そういうときは休むのも大事だと聞いたので休んで、心を穏やかにしないと描けないものではあるんだなと実感しました」

横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
そんな中でも自分を鼓舞しながらひたすら真っ白な画仙紙に向き合い続けたことで、横浜の水墨の腕前はめきめきと上達。描く絵はもちろん、その所作、姿勢なども到底初心者のそれではなくなり、横浜の努力が撮影の様々なバリエーションを生むことにもなった。

壁にぶつかりながらもストイックに練習を続けられた理由を聞くと、「もちろん役作りの一つだったからというのと、まずは自分が水墨画を好きにならないと霜介にもなれないから。どちらかというと僕は絵とかそういうことは苦手なんですけど、とりあえず触れて好きになろうということが大事だったし、結果好きになれたのでそうなると練習も続けられました」と笑顔を見せた。

横浜流星、霜介の“線”を描けるようになるまでの葛藤

横浜流星(C)モデルプレス
横浜流星(C)モデルプレス
会心の出来だと思える作品はあったかという質問にも「ないです」と即答。「自分が良いと思っても周りがそうではなかったり、逆に自分の中では上手く行かなかったものを監督やプロデューサーから『これが一番良い』と言って頂いたり。すごく照れくさいです」と横に置いてあった本作の台本に触れた。表紙にはあえて横浜が初心者の頃に描いた“春蘭”が印刷されており、この初心を忘れない心を役者とスタッフ全員が共有することで、自然と現場の士気も上がるというプロデューサーの英断で起用された。

東雲氏によると「線を見るとある程度はその人の内面が分かる」というが、霜介が繊細な線を描くのに対し、横浜自身の線は力強く、そのギャップにも悩まされる日々だった。

「先生にも『まっすぐに力強い線を描くね』と言われて、霜介とかけ離れているんです。どうしたら霜介の線になるんだろう?と練習でもちょっと細く描いてみるんですけど、意識して描くのはなんか違うんです。だからあんまり気にしすぎないようにして撮影に入ったら、霜介としてそのときは生きているので、自分の線で描いてはいるんですけど徐々にリンクして霜介の線になっていきました」

清原果耶、横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
清原果耶、横浜流星(C)砥上裕將/講談社 (C)2022 映画「線は、僕を描く」製作委員会
長年空手を続けてきた横浜は、水墨画に没頭することができた自身を「通じるものはあるのかな」と振り返り、「一つのことしかできないんです。突き詰めたくなっちゃう癖があって色々なものに手を出せるのは正直羨ましいなという気持ちもあります」と意外にも多趣味な人への憧れもこぼす。

水墨画セットを一式もらったそうで、今後も趣味として続けていくかという話題になると「頂く役が、前だったら銀行員だったり、今はボクシングをやっているんですけど、普通の日常じゃなくてプラス何かが入っていることが多いんです(笑)。だからそれがなくなったタイミングでまたやりたいです」と役者としての本音も飛び出した。

横浜流星、最近感動したことは友人・那須川天心の「THE MATCH 2022」

横浜流星/スタイリスト:伊藤省吾(sitor)ヘアメイク:永瀬多壱(C)モデルプレス
横浜流星/スタイリスト:伊藤省吾(sitor)ヘアメイク:永瀬多壱(C)モデルプレス
今作を経て芸術への見方も変わったそうで、「これまでは絵を単体で見ていたんですけど、『こういう想いで描いているのかな』とその人の想いを少なからず感じ取れるようになれました」という横浜。

劇中冒頭では、水墨画の巨匠・篠田湖山(三浦友和)の孫・千瑛(清原果耶)の作品が霜介の琴線に触れ、思わず涙を流すシーンがある。横浜自身が感動した最近の出来事を問われると、小学生の頃から空手の繋がりで親交がある元キックボクサーの那須川天心選手が6月に制した世紀の一戦について熱く話しだした。

「今年一感動したことは友人の那須川天心が出ていた格闘技の『THE MATCH 2022』です。6、7年前から武尊選手と天心は戦いが望まれていて、自分も『いつか闘わないかな』とずっと思っていました。でもお互い違う団体なので交わることはなかったんですけど、ようやく今年交われて、お互いがお互いの団体を背負って、6年分の想いや覚悟をこれでもかというくらい感じました。それだけ望まれていたことが3分×3で9分で終わってしまうんですよね。お互いのその姿が本当にかっこよくて刺激も受けたし、心臓がすごくバクバクしたし、プライベートで普段涙を流すことがないんですけど、味わったことのない感情になりました」

横浜流星が悲しみを乗り越えた方法

横浜流星(C)モデルプレス
今作では、深い悲しみに包まれ大きな喪失を抱えた霜介が再生していく姿が描かれる。横浜自身に、これまでの人生で喪失や悲しみを乗り越えた経験を聞いた。

「現実的なところがあっていつまでもそれを考えてもしょうがないというタイプだから、割とすぐに受け入れて乗り越えられるタイプではあるんですけど、一旦わざと落ちるところまで落ちます。そしたらそれ以上落ちようがないので」と乗り越える方法に触れると、「おじいちゃんっ子だったんですけど、小学生ぐらいのときに祖父が亡くなって」と亡き祖父とのエピソードを述懐してくれた。

「そのときは全然空手の試合に勝てなかったんです。初めて結果を出せてトロフィーを見せることができたのを最後に、そこからは負けが続いてしまって、もう1回勝ったところを見せたかったなと思いました。祖父が亡くなった後もそれを引きずって負けてばかりだったんですけど、ある日祖母や親に『ずっと見てくれているから』と言われて、その言葉を聞いて『そうだよな、俺の後ろには(祖父が)いるんだもんな』と思ってから乗り越えて結果を出せるようになりました。それからは毎回勝ったらトロフィーを持ってお参りをしていましたね」

横浜流星(C)モデルプレス
「最近だとやっぱり自分の面倒を見て下さった身近にいた方がお亡くなりになったときは喪失感を感じます。来年4月公開の映画のプロデューサーさんが、自分が携わった作品が最後だったので、その想いをちゃんと背負ってしっかりと作品を沢山の方に届けられれば良いなという想いに今はなれています」

様々な経験を重ねたからこそ、悲しみも乗り越えられる強い精神が構築されていったのだろう。最後に霜介が千瑛からライバル心を抱かれることにちなみ、横浜にとって「ライバル」はどんな存在か聞くと「やっぱり自分ですかね。常に自分と闘っているなと思います」とまっすぐに答えてくれた目には強さが宿っていた。(modelpress編集部)

横浜流星(よこはま・りゅうせい)プロフィール

横浜流星(C)モデルプレス
横浜流星(C)モデルプレス
1996年9月16日生まれ、神奈川県出身。2011年俳優デビュー。ドラマ「初めて恋をした日に読む話」(2019)で髪をピンク色に染めた不良高校生・由利匡平を演じて注目を集める。2022年はドラマ「DCU」、「新聞記者」、映画「嘘喰い」、「流浪の月」、「アキラとあきら」など話題作へ出演が続く。待機作に舞台「巌流島」、映画「ヴィレッジ」、「春に散る」(2023)がある。

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