矢本悠馬(C)NHK

「半分、青い。」矢本悠馬、“ブッチャー”は「不完全燃焼」 親友・間宮祥太朗から受ける刺激<インタビュー>

2018.08.16 08:00

現在放送中の連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合/月曜~土曜あさ8時)に欠かせないキャラクター・西園寺龍之介(さいおんじ・りゅうのすけ)、通称ブッチャーを演じるのは、3度目の朝ドラ出演となる俳優の矢本悠馬。永野芽郁演じるヒロイン・楡野鈴愛(にれの・すずめ)の同級生“梟会(ふくろうかい)”の1人として放送開始時から登場しているブッチャーは、出演するたびにネット上でトレンド入りするほどの反響。鈴愛が東京から岐阜に戻ってきたことで、さらにパワーアップしたインパクトを残している。

矢本悠馬「役者としても成長できた」“ブッチャー”と重ねる思い

岐阜の梟町で1番のお金持ち・西園寺不動産の息子で、ガキ大将でありながら、どこか憎めない愛されキャラでもあるブッチャーは、矢本から見て「イジられキャラ」。「台詞回しは、ほかのキャラクターよりアップテンポでリズムよく話すということを心がけています。そこは唯一徹底しているところかもしれない。リズミカルに喋るようにすると、明るく、気楽な感じに見えるかなと。ブッチャーのことをあまり深く見られないようにしています(笑)」。

これまで数々の作品で、振り切った演技を見せて独特な存在感を発揮してきた矢本は、約半年間の長期間放送となる朝ドラで、役者として吸収したことや成長をより感じることができたという。ブッチャーを演じるうえで「学生時代のブッチャーは、1人でちんぷんかんぷんなことを言っていたんです。一体この人は誰の台詞を聞いて、どういうものにリアクションして言っているんだろう…という空気が読めないシーンが多くて、それはすごく難しかったです。役者としても成長できたというか、考える視野が広がった。自分にとって、ブッチャーを演じることは貴重な時間だった」と答えた。

過去に出演した朝ドラ『てるてる家族』(2003年)、『花子とアン』(2014年)に続き、再び“ボンボン”キャラとなるが、「ブッチャーは、素直で自分の言葉に嘘がない人だと思います。僕も普段思ったことを言ってしまうので、そこは似ていると思います。刹那の爆発力があっていいですね、好きです」と自身にも重ねてキャラクターを愛しているよう。「温かみがあったり、器が大きかったり、全体的に丸みをイメージして演じています。優しい感じが出せればいいなというか、僕が出てきたらどんなシーンでもお茶の間がちょっと明るくなってくれたら嬉しいなということを意識して演じています」。

“ブッチャー”がトレンド入りの反響「愛されていて良かった」

鈴愛が岐阜に帰ってきたことで、再び“梟会”メンバーが登場し、物語を盛り上げる。周囲からの反響を矢本自身も感じているようで、「驚いています。たまに出てきてネットとかで騒がれるというのは、ブッチャーが視聴者の方に受け入れてもらっているとか、役者としてインパクトが残せているということなので、やはり嬉しいです。青年時代のブッチャーも変わらず愛されていて良かった」と素直な心境を語る。

最も視聴者を驚かせたのは、女優の奈緒演じる木田原菜生へのプロポーズ。ドラマの撮影が始まる前、脚本の北川悦吏子氏との食事の場で、梟会メンバーが全員結婚する設定であることを明かされていたといい、そのなかでどういう人と結婚したいかという話も出たという。

「菜生がブッチャーと結婚するのも面白いのかなと話しをしていて、僕も『イメージ湧きますね』と北川先生に言っていました。結局どうなるかは分かっていなかったので、 台本を読んだときは正直びっくりしました。でも友情の延長線上というか、お互いに歳も重ねて、ずっと一緒にいることが当たり前になって。結婚を迫られたときに、『あ、いま大事な人を失うかもしれない』という怖さとか…。この人を失うことは、ブッチャーの人生にとって絶対にないなという確信と覚悟というものが、プロポーズのシーンで出てきました。何回読んでもどう落とし込んだらいいのか、なかなか難しいシーンでした」―おちゃらけているようなコミカルなシーンが多いなかでも、常に繊細な心情を表現しているのは“ブッチャー”なのかもしれない。

矢本悠馬、奈緒(C)NHK
矢本悠馬、奈緒(C)NHK

矢本悠馬「ロンバケ」パロディーは「1番自信があった芝居」

そしてもう1つ、大きな話題を呼んだのは、矢本と奈緒による名作ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系/1996)のパロディー。本家で木村拓哉と山口智子が演じた役にそれぞれ扮し、長尺の一発撮りでスーパーボールを3階から落として、バウンドさせてからキャッチする伝説の名シーンに挑んだ。

「結構なセリフ量で…急に覚えたので大変でした(笑)。まず僕が木村拓哉さんを演じるということが衝撃的だったので、心のなかで木村拓哉さんに謝っておいて、ちゃんと完コピで頑張ったんです。奈緒ちゃんと動画を観ながら研究しました。でも放送では全然使われていなくてめちゃくちゃ寂しかった。ほかのシーンは1つも練習していないのに、初めて2人で練習したシーンで完成度も高くて、僕的には1番自信があった芝居でした」と振り返る矢本。

そこそこ尺のある大作であったため「SNSとかでもいいから全部見せてくれ(笑)」と懇願しつつも、「変なやつがイケメン風の芝居をしているというところで、1つあの作品がオチていればいいなと思いました。どうしてこの俳優がかっこいいシーンをやっているんだろうというものになればいいかな」と語った。

矢本悠馬、佐藤健との関係「律とブッチャーっぽいな」

“ボンボン”の力を最大限に利用して同級生を従えていたブッチャーだが、“梟会”は心から気を許せる居心地の良い場所。なかでも佐藤健演じる萩尾律は、ブッチャー自身もリスペクトする、唯一お金で関係が繋がっていない親友。

撮影現場でもその関係性が表れていた。「(佐藤)健くんがなぞなぞの本を持ってきていて、一緒に解いていました。解いているときは、律とブッチャーっぽいなと思いました。健くんが絶対に僕より先に解くんです(笑)。しかも、僕が先に解くとすごく悔しがるんです。たまに現場で会うと『久々っすねー』みたいな感じで2人してニヤケているときもあります(笑)。アットホームな現場ですね」。佐藤とのエピソードを話す矢本の表情は、ブッチャーそのものだった。

矢本悠馬、“親友”間宮祥太朗へ愛のあるイジり「いい役者さんだな」本音もポロリ

矢本悠馬(C)NHK
矢本悠馬(C)NHK
これまで映画やドラマで共演経験も多く、プライベートでも仲が良すぎるほどの親友として知られている間宮祥太朗も、鈴愛の子ども・花野(かの)の父親である森山涼次役で朝ドラ初出演。「間宮祥太朗が朝ドラ決まったくらいのときに一緒にいて、『俺もやっと朝ドラ出るよ』みたいな感じで調子に乗っていたので、無視しました(笑)。現場では1回も会っていないですし、別に会わなくて大丈夫です(笑)」と笑う矢本。

「あの人(間宮)の芝居は何を見ても気持ち悪いので…(笑)気持ち悪いというのは、本人が男らしいのかはさておき、普段は男らしさを演じているんです。だから、涼次みたいに甘いというか、ぬけたというか、ふわっとしたものは一緒にいて感じないので。それを役者として演じられているのは、いい役者さんだなと思います」。“愛のあるイジり”をしつつもこぼした本音からは、親友の活躍が刺激となり、矢本の役者人生にも大きな意味を成していることがうかがえる。「…褒めたくないですけどね(笑)。褒めたら逆に『バカにしてんだろ』って連絡くるから、貶してるくらいがちょうどいい感じなんです。朝から(間宮の)濃い顔、すみません」と話す矢本の口ぶりからは、その場に間宮がいなくても、十分に2人の絆が感じられる。

「ブッチャーに矢本悠馬が食われた」―自虐気味に笑う矢本だが、役名が世に浸透するほどのインパクトを残すことは、役者にとって誰もが羨むことだろう。しかし「街なかで出演した作品の役名で呼ばれるけど、人気が出ているわけではない」とどこまでも謙虚。一方で、4回目の朝ドラ出演への意欲も高まる。「10年後、20年後にヒロインの父親役で出ます。迷惑をかけるお父さんでもいいし、空気が読めないお父さんでもいいし、変わったお父さんを演じられたら楽しそうだなと思います。いいパパとか演じたら人気出るでしょ?」と貪欲な一面も見せながらはにかむ笑顔も眩しい。

どんな役を演じても受け入れられる“愛され力”は、矢本自身が持つ魅力だと感じる。「もっとブッチャーを見て欲しい。まだまだ燃料が余っています」と“不完全燃焼”だという矢本が、どこまで“ブッチャー”として楽しませてくれるのか、燃焼し切る瞬間を見届けたい。

(modelpress編集部)

矢本悠馬(やもと・ゆうま)プロフィール

1990年8月31日生まれ。京都府出身。2003年、映画『ぼくんち』でデビュー。同年に連続テレビ小説『てるてる家族』、2014年に『花子とアン』に出演し、2015年『ブスと野獣』(フジテレビ)で連続ドラマ初主演を果たす。個性的な演技で人気を博し、2018年はドラマ『賭ケグルイ』(MBS・TBS)が放送されたほか、ドラマ『銀魂2 –世にも奇妙な銀魂ちゃん-』(dTVオリジナル・8月18日より配信/全3話)、『今日から俺は!!』(日本テレビ系/10月期)、『フェイクニュース』(NHK・10月20日・27日)の放送、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(8月31日公開)、『レディ in ホワイト』(11月23日公開)、『ノーマーク爆牌党』(2018年秋公開予定)、『映画 賭ケグルイ』(2019年春公開予定)、『アイネクライネナハトムジーク』(2019年秋公開予定)の公開を控える。

第20週あらすじ

鈴愛(永野芽郁)と宇太郎(滝藤賢一)がつくし食堂の新しい店の構想で盛り上がる。勝手にはしゃぐふたりの姿に晴(松雪泰子)の怒りが爆発。家を飛び出した晴は、和子(原田知世)のところに転がり込む。和子はそんな晴をなだめつつ、あることをアドバイス。結果、つくし食堂2号店の開店が決まる。鈴愛は仙吉(中村雅俊)から五平餅の作り方を習うことになるが、予想に反し仙吉の指導は厳しい。そんな中、律(佐藤健)に送られて帰ってきた花野(山崎莉里那)の手にあるものが握られていた。気になった鈴愛が部屋をのぞくと、花野は鈴愛の描いた漫画「一瞬に咲け」を読んでいる。漫画家であったことを隠してきた鈴愛は律に電話し、花野に知られたくなかったと抗議するも、心を見透かされたようなひと言をかけられる。やがて鈴愛は、誰もいない居間で本当に久しぶりに、絵を描き始める。
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