性別を超えた“イケメン女子”の成り立ち―ルウトが伝えたいこと「人の目なんか気にしてたら負け。本当に自分のやりたいことをやって欲しい」
2016.07.18 12:00
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ファッションのジェンダーレス化が加速するなか、“イケメン女子”というワードがにわかに注目を集めている。その代表的存在のひとりがファッション誌『KERA!』や『MEN’S KNUCKLE』で読者モデルとして活躍する「ルウト」。ボーイッシュなショートヘアで全身メンズ服を着こなす“彼女”は「男よりもかっこいい!」と数々の女子のハートを奪い、芸能界にも熱烈なファンが多数。「ルウト様イケメンすぎる」「壁ドンされたい…」――同性を虜にする“イケメン女子”の魅力はもちろん、幼少期のエピソード、明るくて好奇心全開な素顔にも迫ったロングインタビューをお届け。
“イケメン女子”に定義なんてない。それを自分が語るのはルール違反
― 先月放送されたバラエティ番組『SMAPバラエティつよしんごろうの境界線クイズ2016スペシャル!!!』(フジテレビ系)が話題となりましたね。ルウト:街で声をかけてもらうことが増えました。この間なんてキャッチのお兄さんに「あ、イケメン女子だ!ティッシュもらってよ!」って(笑)。かなり色々な年代の方に見ていただいたのを実感して、ありがたいなと。家族は綾野剛さんに“顎クイ”されたことに一番興奮してましたね。周りの女の子たちからも「なんで性別のないお前が顎クイされてんの?!ずるい!」って怒られたりして(笑)。
― 昨年から“ジェンダーレス”が大きなトレンドとなった流れで、“イケメン女子”の注目度も急上昇したように感じます。
ルウト:もともと“男装女子”に対する注目はあったんですけど、今は色々な人に広がりやすくなったという印象です。時代と共に言葉も変わってきて。男装と呼ばれていたものが(雑誌『KERA』発の)“BOKUガール”になり、イケメン女子になり、ジェンダーレスになり。ファッションの中では“トムボーイ”というスタイルがあったり、ボーイッシュな子っていう言い方もあったりして、細分化されながらじわじわ広がっているんだなという印象を受けます。
― ルウトさんが「イケメン女子とは?」と聞かれたら何と答えますか?
ルウト:そう聞かれるといつも悩みますね。ルウトの場合は別に意識的に男らしくしてるわけでもなければ、一人称だって「俺」じゃないし、心も女子だし。多分、性別を超えた服を着ている子たちがトータルで“イケメン女子”って言われてて、その中にボーイッシュな子がいて、男装女子がいて、コスプレ女子がいて、男役がいて…という分かれ方をしてるんじゃないかなって自己分析しています。
― 見た目的に勘違いされやすいこととしては「男性になりたいんじゃないか?」という部分ではないですか?
ルウト:そうですね、めちゃくちゃ多いです。だから結構みんな腫れ物を扱うような感じというか、おなべの方と勘違いされたりとかもするので。ただ男装女子の中にも、そういう手術とかしていなくても「心が男の子」という子もいるので、ちょっとそこら辺の説明は難しくて感覚的なものになってしまうんですよ。あくまでルウトはそういうジャンルに定義をつけたいとは思っていないので、今色々な人に話を聞いてもらえる立場で「こういうものだと思います」って言うのはルール違反かなと思っていて。はっきりとした答えはないですね。
― ルウトさんはファンの大半が女性で、 “壁ドン”をリクエストされることも多いですよね。
ルウト:ぶっちゃけ結構恥ずかしいんですよ(笑)。「キュンとするセリフ言ってください」とか、やるのは全然いいけど引かないでね!?って気持ちでやってます(笑)。素に戻っちゃいけないなっていう。
― 女子の理想を叶えてくださってありがとうございます(笑)。きっと、同性だからお願いしやすいという部分は大きいかと。
ルウト:そうですね、もしお願いされたらありがたくやらせてもらいます。こちらとしても男の子が触れない女の子に触れたりするんで、そこは特権ということでうまく使わせてもらっています(笑)。
― 時には女子っぽく扱われたいな~なんて思うことも?
ルウト:女子を押し付けたいとかじゃないんですけど、男だと思われて男らしさばっかりを求められるのは違うなって思っていて。「何が好き?」と聞かれて「アイスが好きです」「入浴剤好きです」とか答えると「え!女子じゃないすか!」って反応をされたりとか。「いや、だから女子だっつってんでしょ!(怒)」って(笑)。
― 放送後のブログでは、綾野剛さんから顎クイされて「女性ホルモンが爆発しかけた」と書かれてましたね(笑)。
ルウト:今までする側ばっかりで、初めて人にされたので普通に固まっちゃいました。ああいうのって受ける側のリアクションも大事なのに、「無理無理無理!」って感じで言葉が出てこなくて。そのかわりルウトの中に隠されていた何かが全部あふれて来た感じはしました(笑)。自分の中ではすごい新しい、形容できない感情になったんですよ!
― 服を着替えることで気持ちも切り替わるのかな…と思っていたんですが、ルウトさんの場合はそうではないんですね。
ルウト:そういうのはないですね。ただ、この仕事をしていることを地元の子たちには隠しているので、その子たちと会う時はウィッグかぶってスカート履いて、ピンヒール履いて、ネイルして…っていうことをします。
― そうなんですか!?なぜ隠しているんですか?
ルウト:こういう格好をしている人間を受け入れられない時期ってあるじゃないですか。多感な中高生時代とかは特に。だからそういうのを出しちゃいけないかな、みんな嫌がるかなと思って隠して、隠して、隠して…今なんですよ。
― タイミングを失ったってことですね。今なら伝えても問題ないのでは。
ルウト:改めて言うのもちょっと恥ずかしいなっていうのがあって、もうちょっと隠していようかな(笑)。もちろん気づいてる子たちもいるので、「これ、もしかしてルウト?」って聞かれたら「そうだよ」って言うんですけど。あとウィッグをかぶるのは、金髪だと友達の子どもや姪っ子に泣かれるっていう理由もあって(笑)。
「男として雑誌に出て」―スカウトの提案に即答「面白そうだからやるわ!」
― 今少しお話が出ましたが、この世界に入る前のことも伺いたいなと。小さい頃はどんな子どもでしたか?ルウト:ずっと鬼ごっことドッジボールしてました。クラシックバレエを10年間やっていて、そのお稽古以外はずっと遊んでいましたね。
― ファッションに興味を持ったのはいつ頃ですか?
ルウト:小学校の時からずっと好きだったんですけど、兄が2人いて、お下がりで自然とメンズ服ばっかり着ていて。スポーツをやる時も圧倒的に動きやすいし、汚してもいいし…っていうのを引きずって今ですね。本格的に服を「欲しい」ってねだり始めたのは中1ぐらいかな。真ん中の兄貴とよく買い物に行って、メンズ、レディース関わらずチェックして混ぜて着ていました。土屋アンナさんに憧れていたので、その頃からロック系の服が好きでしたね。
それと小さい頃からアニメや漫画が大好きで。お父さんや兄貴からの影響もあり、本当に字が読めない頃からジャンプを読んでいて、ルウトの絵本は『ぬ~べ~』だったんですよ(笑)。そういう英才教育を受けてきたから、二次元に出てくる男の子への憧れがあり、今の格好につながった感じです。
― なるほど。ボーイッシュな服装に対して、ご家族の反応は?
ルウト:兄貴2人でやっと娘が生まれた~って喜ばれた中、三兄弟が全員男の子になっちゃったみたいな感じで(笑)。両親は最初ちょっと嫌がってたけど、今は全然。家族全員と仲良しです。
― 学生時代、印象的だったことは?
ルウト:高校で一番人気の男の子と付き合ってました。密かに、誰にも言わずに(笑)。
― 誰にも言わずに!?
ルウト:学校終わってから、誰にも姿を確認されないところで遊んでいました。マンションの非常階段とか(笑)。
― 素晴らしい青春(笑)。一番人気の男子が彼氏なんて、自慢したくなっちゃうものですけど…
ルウト:謎のままバレることはなかったです。その頃から秘密主義だったみたい(笑)。今考えたらあの時すごい輝いてた。恋愛してましたね~。
― そんな中、モデルになったきっかけは?
ルウト:卒業してからいろんなバイトをしてたんですけど、バーが一番楽しくて、その時にこういう格好をしていてスカウトされました。だからこの世界に入ったのもかなり遅めなんですね。
― モデルに憧れていたとかではなく。
ルウト:「こういう人たちもいるよね」って思うくらいでした。最初に出させていただいたのが“Vホス系(=ヴィジュアル系×ホスト)”の雑誌『Men's SPIDER』だったんですけど、スカウトされた時に言われたのが「男として出てくれ」という(笑)。「くっそ面白いですね!全然言ってることわかんないけどやるわ!」って感じで、本当にその当時は遊び半分だったんです。
― 「男として」ってビックリですよね、戸惑いはなかったんですか?
ルウト:なかったんですよ。楽しいことは何でもやってみたくて。「超ウケるー!」って言ったもん(笑)。家族や友達は何とも言えない顔してました。その当時、男として出てる女なんていなかったから「どういうこと?ちょっと意味がわかんない」って全員キョトンとするっていう(笑)。
― そうですよね(笑)。いざモデルを始めていかがでしたか?
ルウト:誌面で女だと言うこともなく、編集の方もしばらくは知らなかったような状況で。男だと思った読者の方からファンレターをもらった時「あ、騙せてる(笑)楽しい!もっと頑張ろう」って喜びを感じるようになりました。その当時はブログやTwitterもやっていなかったから、自分が“謎の存在”だったのが面白くて。女だと明かすようになってからも「ブログを見て初めて女だと知りました」と言われたり。それから『KERA!』や『KERA BOKU』にも出させてもらうようになりました。
― 今は舞台など演技のお仕事も増えてきましたね。
ルウト:2013年に舞台『美少女戦士セーラームーン -La Reconquista-』でジェダイト役を演じた時にそれまでにない反響を感じました。それがほぼ初めての演技だったので、難しいことばっかりでだいぶ悩んで。お芝居については今も悩んでいますね。
― 今後、挑戦してみたいことは?
ルウト:忍者検定を取りたくて!
― 忍者ですか!?
ルウト:昔、忍者になりたかったんですよ。『烈火の炎』という漫画で忍者にハマって、初めて買った本が『忍者の秘密』っていう、すっごい深い内容の本(笑)。それで忍者検定が取れる時代になったから「あ、忍者にならないと」って。3年ぐらい前から「取る」って言ってるのになかなかタイミングが合わず…。忍者になりたいし、インディアン検定もバーベキュー検定も取りたいし、ロッククライミングも始めたい!体動かして面白い資格取りたいです!
― プライベートだけで超多忙になりそう(笑)。お仕事でやってみたいことは?
ルウト:方言をしゃべる男女を集めてルウトに告白して欲しい!
― またナナメ上の方向から(笑)。方言フェチなんですか?
ルウト:めっちゃ好き!一番好きなのは熊本弁です。とりあえず熊本弁でルウトを口説いて欲しい。
― じゃあバラエティ番組ってことですかね。
ルウト:いや、バラエティだと企画通らないと思うからほんの一瞬でいい。10分だけルウトが何もしゃべらずにただ口説かれる時間をください(笑)。
― どんな番組ですか!?(笑)でも今AbemaTVで椎名ひかりさんと一緒にMCをやられていたり、トークもお上手じゃないですか。
ルウト:方言をしゃべる子たちが目の前に来たら真顔で聞いていたい!なんなら録音して商品化したい(笑)。熊本弁の本とかももっと出ていいのになって。というのも、万人に受けるものよりスーパーコアなものが作りたいから。でも方言好きな人って意外と多いでしょ?ルウトはそこの狭いジャンルを攻めていきたいです(熱弁)!
人の目なんか気にしてたら負け。本当に自分のやりたいことをやって欲しい
― エンターテイメントの世界に憧れるモデルプレス読者の皆さんに向けて、“夢を叶える秘訣”のアドバイスをお願いします。ルウト:ルウトこれから叶えたい夢、忍者検定だからな~(笑)。でも今の時代って昔と違って、SNSが発達しているじゃないですか。YouTubeやVineもあり、いろんな子が入って来やすい世界になったと思うんですよ。それこそ今ジェンダーレスでテレビに出ているのも、SNSを駆使して自分を表現している子たちだと思うし。YouTuberやニコニコ動画の「歌ってみた」「踊ってみた」もそうだけど、タレントではないけど一般人とも言えないみたいな人たちがたくさん出てる時代だから、芸能界にこだわるんじゃなくて、外堀から攻めていくのも手なんじゃないかなと思いますね。
そう言う自分は、全然SNSを駆使できていないんですけどね(笑)。それでも知ってくださって、フォローしてくださる方は本当に大事にしたいと思います。
― ルウトさんが今、ファンの皆さんに伝えたいことは?
ルウト:このインタビューで改めてルウトっていう人間を知っていただけたのかなと思うんですけど、本当に普段は何にも考えないでふわふわと生きてるというか(笑)。そういう人間でも楽しく生きてるってことを伝えたいです。それこそ今、イケメン女子やジェンダーレスの男の子たちが自分の性別のあり方や服について悩んでいて。「どうしたらいいか」って相談もよく受けるけど、本当に何も考えていないルウトが楽しく生きてるから何も問題はないし、大丈夫だよっていう気持ちです。あと、これから何かをやろうと思ってるのにどうしようか悩んでいる子も、小さいことからでいいから一歩踏み出してみて。人の目なんか気にしてたら負け。楽しく服を着て、本当に自分のやりたいことをやって欲しいなって思います!
▼モデルプレスでは19日(※予定)、恋愛観やファッション&美容のこだわり、バッグの中身も公開したプライベートQ&Aをお届けします。(modelpress編集部)
ルウト プロフィール
身長:165㎝生年月日:12月10日
血液型:B型
ファッション誌『KERA!』『ゴシック&ロリータバイブル』『MEN’S KNUCKLE』などで活躍する男装読者モデル。ボーイズスタイルダンスボーカルユニット・Signalとして、ボカロ界の貴公子「八王子P」プロデュースによるデビューミニアルバム『Secret Rain』を2015年7月にリリース。現在、AbemaTV『AbemaTVナビ』(毎週月曜19時~)MCとしてレギュラー出演中。『美少女戦士セーラームーン -La Reconquista-』(13)、『ヴァンパイア騎士』(15)など舞台でも活躍中。
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