尊すぎてため息。リンゴのレイヤーが美しいアップルパイ【神戸】
本日の一品 > makostandard の「紅玉りんごのアップルパイ」(神戸)
三宮から西方に長く、長く伸びる神戸元町商店街。その西端、阪神・西元町駅のすぐそばに、2023年10月、小さなパティスリーがオープンしました。今回は、ライターの齋藤優子さんが、ケーキの美しさに惹かれたというその新店へ。ひと組、またひと組と、入れ代わり立ち代わり客が訪れる様子に、人気のほどがうかがえました。
( Index )
「美しいリンゴのレイヤーに一目ぼれしたアップルパイ」(齋藤優子さん) 編集部の「これも食べたい!」【水曜15時のあまいもん】とは?
関西の食に精通するライター、エディター、フォトグラファーなど“取材のプロ”たちが、ほんとは教えたくない関西の「推しおやつ」を、和洋問わずレコメンド。確かな目利きで選んだあまいもんは、どれもわざわざ足を運んで大正解の、ハズレなしのおいしさです。
「美しいリンゴのレイヤーに一目ぼれしたアップルパイ」(齋藤優子さん)
makostandard の「紅玉りんごのアップルパイ」
「紅玉りんごのアップルパイ」580円(秋冬限定)。砂糖がけのクルミがデザインと食感のアクセントに。「まさに一目ぼれ。見つけた瞬間“絶対おいしいはず!”と確信しました。薄切りのリンゴが美しく重なり合うアップルパイは、紅玉りんごを生のまま焼き込んでいるので、甘酸っぱく、シャキシャキとした食感が残り、フレッシュ感があります。中にはスポンジ生地やリンゴのコンポートも隠れていて、タルトタタンとも、アメリカンタイプのものとも違うおいしさに出合えます」(齋藤優子さん)
「自分の理想とするフランス菓子を、妥協することなく、突き詰めたい」。三重県桑名市で8年間、パティスリーを営んでいた布澤 誠さんが、そんな思いから一念発起。「神戸北野ホテル」での修業時代に住んで大好きになったという神戸の街を新天地に選び、新たに自店をオープンしました。
小さなパティスリーは、布澤さん夫妻が2人で営んでいます。毎週木曜の「クロワッサンの日」には、冷蔵ケース奥の棚にヴィエノワズリーが並びます。紅玉りんごのアップルパイは、布澤さんが、フランスで働いていた時に、そのおいしさに感銘を受けたというショーソン・オ・ポム(リンゴを折り込みパイ生地で、ショーソン=スリッパのような形に包んだ菓子パンのこと)を、リンゴの姿が見えるようアレンジしたもの。折り込みパイ生地の上にリンゴのコンポート、スポンジ生地、薄切りの紅玉りんごを重ねて。薄切りの紅玉りんごはあえてソテーせず、生のまま重ね、そこにバターやカソナードを振って焼き上げることで、独自のアップルパイに仕上げています。
編集部の「これも食べたい!」
ムラングシャンティ マロンカシス
「ムラングシャンティ マロンカシス」680円。季節ごとにフレーバーを変えて通年販売しています。写真は、栗と、栗と相性のいいカシスを合わせた秋バージョン。紅玉りんごのアップルパイ同様、その美しさに目がくぎ付けになってしまったのが、ムラングシャンティ マロンカシスです。ひと晩オーブンの中でしっかり乾燥させているというメレンゲは、軽やかで驚くほどサクサク。栗のシャンティクリームとカシスのシャンティクリームも口溶けがよく、食後感が爽やかです。
ショーケースに並ぶ生ケーキは10種類ほど。そのほか、フィナンシェ、マドレーヌ、エンガディナーなど、焼き菓子も揃っています。カシスのシャンティクリームに使うコンフィチュールも、アップルパイの表面に塗るアプリコットジャムもすべて自家製。パリブレストのおいしさの要となるプラリネクリームは、ナッツをローストするところから、すべて布澤さんひとりで手がけています。
それも、自分がおいしいと思うお菓子を、材料からデザインまで、とことんこだわって作りたいから。店名にも、自分の中での基準=スタンダードを大切に、ぶれない心でお菓子作りに向き合いたいという思いを込めたといいます。その言葉どおり、美しい見た目からも、確かな味わいからも、手間暇かけたていねいな仕事ぶりが伝わってきます。
教えてくれた人齋藤優子/Yuko Saito
『BRUTUS』『&Premium』など、雑誌を中心に執筆しているライター。食に関する取材が多く、しばしば関西を訪れているうちに、関東とは違う食文化をもっと知りたくなり、2018年に京都にも拠点を設ける。現在は京都と東京を行ったり来たりの日々。
DATA
makostandard(マコスタンダード)
兵庫県神戸市中央区相生町1-1-18
営業時間 12:00~17:00(売り切れ次第終了)
定休日:日、月、祝日 ※ほか不定休あり
\from Editor/
布澤さんはフランス修業時代に、東京・自由が丘にあるパティスリー「パリ セヴェイユ」の金子美明シェフがヴェルサイユに構えたパティスリー「オ・シャン・デュ・コック」で働いていたことがあるのだとか。布澤さんのケーキを見て食べていると、心なしか、金子シェフに通じる美意識を感じました。
※最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。
写真/吉村規子 文/齋藤優子 企画・編集/吉村セイラ
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