「麺」も「炒飯」もハイクオリティすぎ!香港料理の名店『福臨門』出身シェフが開いた中国料理店『福全徳』
2019.07.05 11:10
神楽坂にちょっと贅沢な広東料理店がオープン
東京・神楽坂。50軒以上の飲食店が軒を連ねる”本多横丁”に、2018年12月14日にお目見えしたのが『香港名菜 福全徳(フクゼントク)』だ。ここは中国南部の広東省、香港、マカオなどで食される広東料理と、自家製の飲茶を提供する中国料理店。
店内は1階から3階までの3フロア層で、1階は厨房とカウンター、2階はダイニングフロア、そして3階は2人から利用可能な個室と半個室(写真下)で構成されている。
シンプルで飾らない空間は日常利用から接待、会食などの特別な日まで幅広い使い方ができそうだ。
中国全土の料理を習得したシェフがたどり着いたのは広東料理
オーナーシェフの韓 凡全(カン ハンゼン)さん(写真下)は、中国東部になる山東省の出身。17歳から料理人の道へ進み、中国国内で経験を積んだ後、2005年に長崎の中国料理店で働き始める。その後、香港や上海などに店を構え、日本でも丸の内や大阪などで展開する香港料理の名店『家全七福酒家(旧、福臨門酒家)』の門を叩く。ここで6年10カ月勤務した後、上海、北京、四川など中国全土の料理を扱う千葉・船橋の老舗中国料理店『東魁楼』で学んだ。
「各地の中国料理をひと通り習得したなかで、広東料理が一番好きだと感じました。例えば上海や東北、四川料理は調味料の味や辛味が強い。一方、広東料理は食材によって味の良し悪しが決まるほど、食材の影響を受けやすい。味わいが優しく、食べ飽きしないことも、日本の方には合っていると思います」と韓さんは話す。
中国にもあった「アイスバイン」!
料理は『家全七福酒家』の流れを汲む広東料理。その自慢の料理を見ていこう。まずは前菜の「アイスバインのゼラチン」(写真上)。アイスバイン(塩漬けの豚すね肉)といえばドイツ料理を思い出す人も多いだろう。実は中国でも古くから食べられている料理であり、煮込んで作るドイツの製法とは大きく異なる。
中国のアイスバインは豚の前足だけのすね肉を使い、塩、八角、生姜で約1週間漬け込む。塩抜きした後、3~4時間ほどボイル。カットした肉をバッドに並べ、上からスープを注ぎ入れて冷やす。スープにはすね肉のゼラチンが溶け込んでいるため、冷やすとスープがゼリー状に。バッドに並べることで、半透明のスープと赤みのある肉の層ができる。
ほどよい塩みは前菜や箸休め、お酒のつまみとしてぴったり。芳醇な香りとキリッとした酸みのある黒酢とあわせると、引き締まった味わいに変化する。
本場「香港料理」を味わい尽くす
続いて紹介するのは、香港料理ならではの焼きもの2品。「釜焼きチャーシュー」(写真下)は、豚肩ロースを使用。店内の明かりがキラキラと反射するほどの照りに、食欲をそそられる。
肉は国産豚の肩ロースを使い塩、砂糖、醤油、五香粉(ウーシャンフン)などで一晩下味をつける。これを香港製のチャーシュー釜に入れ焼き、その後に水飴と絡めることで照りと甘さをプラスする。
余計な味付けが一切なく、ほのかな五香粉の香りに中国らしさを感じ取れる。香辛料が控えめのため、苦手な人でも食べやすい。
水飴の甘みはコク代わりにもなっており、深みのある赤ワインとの相性を高めてくれる。
クリスピーな豚皮はお酒のつまみにも!
「豚バラ肉の焼きもの」(写真下)も、香港でよく食べられる焼きもの。皮付きの豚バラ肉は、皮と赤身それぞれを1時間ずつにわけて塩漬け。香港式のチャーシュー釜の中で1時間ほど乾燥させ、その後店内で2日かけてじっくりと乾燥させていく。
「豚の皮をサクサクに仕上げるためには、350~400℃の高温で焼く必要があります。そのため、より温度の高い香港のチャーシュー釜を輸入しました」(韓さん)
高温のチャーシュー釜で焼いた皮は真っ黒に焦げ付く。それを丁寧にナイフで削り取り、キツネ色にする手間もおいしさの秘密だ。
豚の皮とは思えないほどのクリスピー感と、鼻腔をくすぐる香ばしさ、そしてやや強めの塩みは、お酒を飲ませるための一品。アクセントとしてからしの辛味を添える。
6年、8年、12年ものを用意する紹興酒と合わせれば、本場香港で飲んでいるような心地になるだろう。
定番「チャーハン」も自家製XO醤で記憶に残る味に!
日本人に馴染みの深いチャーハンは“福全徳”流にアレンジ。特におすすめが「和牛挽き肉とレタスの炒飯」(写真上)だ。自家製XO醤の香りが効いた唯一無二の味わいにトリコになる。米は香りを出すためにジャスミンライスを用いる。米同士がくっつかず、パラパラとしたチャーハンでありながら、油が均等に行き渡っているためパサつきがないのも、熟練の技によるもの。
調味料はシンプルに塩、コショウとオイスターソース。ピリッとした辛みはコショウによるものだ。高級食材の金華ハム、干し貝柱、唐辛子、ピーナッツ油などで作ったXO醤が、コクとうまみ、そして香りを添加する重要な役割を果たしている。
大豆粉でつくる香港式乾麺“伊府麺”
香港で人気の麺料理も見逃せない。「“伊府麺”の煮込み麺」(写真上)は、大豆の粉、卵、かん水で作る平打ちの乾燥麺を使用。炒め物によく使われ、煮込み麺とは呼ぶものの日本でいう焼きそばのような仕上がりになる。
具材は黄ニラ、白舞茸、もやし、伊府麺のみ。動物由来の旨味成分として、3枚におろしたヒラメをオーブンで焼き、干して粉にした「大地魚(ダーディユ)」と、丸鶏と豚を8時間ことこと煮込んだ清湯スープを加えて麺を煮込んでいく。
乾麺の伊府麺に、スープの汁気がなくなるまでじっくりとうまみを吸わせていく。その際も手を休めることなく、鍋を振って食材に均一に火が通るように調整。この手間と技が、味わいの一つとなっている。
どこか懐かしく、上品な麺料理
完成した「“伊府麺”の煮込み麺」(写真上)は、上品な醤油焼きそばのような味わい。伊府麺はクセがないため食べやすく、柔らかめの麺はつまみにもなりそう。一方でもやしや黄ニラのシャキシャキ感も。口のなかでさまざまな食感が楽しめ、最後まで食べ飽きしない。
食材の探求で進化していく『福全徳』
「品質の高い食材を常に探しており、随時メニューの入れ替えを行っていく予定です」と韓さん。先に述べたように、広東料理は食材が命。高品質な食材や、日本の四季に合わせた旬食材を使った広東料理を続々投入していく予定だという。
また、今回は紹介できなかったが、飲茶も看板の一つ。自家製の皮を使った「海老の蒸し餃子」や、釜焼きチャーシューを入れた「ちまき」など、さまざまな一品が楽しめる。ランチでは「点心コース」も用意しているため、女子会ランチにも最適だ。
濃いめの味や油分が多い中国料理とは一味違った、優しい味わいの中国料理を求めて、ぜひ神楽坂に足を運んでほしい
【メニュー】
アイスバインのゼラチン 1,100円
釜焼きチャーシュー 1,890円
豚バラ肉の焼きもの 1,890円
和牛挽き肉とレタスの炒飯 1,500円
“伊府麺”の煮込み麺 1,500円
海老の蒸し餃子 680円
ちまき 680円
ランチ限定 点心コース 3,200円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
福全徳
東京都新宿区神楽坂3-1-26050-3462-9499(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
ランチ 11:30~15:00
(L.O.14:30、ドリンクL.O.14:30)
ディナー 17:00~22:30
(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:00)
※緊急事態宣言解除まで、時間短縮の20時閉店とさせて頂きます。
不定休日あり
12月31日と1月1日はお休みさせて頂きます。
https://r.gnavi.co.jp/ayhjw0bf0000/
この記事の筆者:有川美咲(フードライター)
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