クリエイティブな環境―その条件とは ディズニー映画監督・プロデューサーが語る

【米ディズニー/アニメーション制作スタジオ潜入取材(1)】クリエイティブな環境―その条件とは ディズニー映画監督・プロデューサーが語る

2014.06.27 11:33

【米ディズニー/アニメーション制作スタジオ潜入取材】『アナと雪の女王』で世界的ムーブメントを巻き起こすディズニー。モデルプレスは米ハリウッドの「ディズニートゥーン・スタジオ」で最新作を手がけるスタッフ達を取材し、次々と“夢”が生み出されるクリエイティブな現場に迫った。

同スタジオで制作された『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』が7月19日に公開される。『プレーンズ』(2013)で、空の世界一周レースのチャンピオンに輝いた元農薬散布機のダスティ。続編となる今作では、故障を抱えてレースに出られなくなったダスティが、大自然で山火事に立ち向かう消防レスキュー隊に入隊し、恐れ知らずの仲間たちと共に決死の冒険に旅立つ。

米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」
米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」
スタジオ内には「プレーンズ2/ファイアー&レスキュー」の世界が広がる
スタジオ内には「プレーンズ2/ファイアー&レスキュー」の世界が広がる
潜入取材レポート第1弾は、監督/共同脚本のボブス・ガナウェイ氏と、プロデューサーのフェレル・バロン氏のインタビュー。『プレーンズ』『カーズ』シリーズを含む数々の感動作を手がけるジョン・ラセター氏製作総指揮のもと、総勢900人のスタッフ達と共に前作の迫力を上回るアクション・アドベンチャーを完成させた2人が、「クリエイティブな環境に必要な条件」を語った。

テーマは「消防」―前作を模倣しない

ディズニーで19年に及ぶキャリアを誇るボブス・ガナウェイ氏は、アニー賞監督賞(TV作品部門)にノミネートされたテレビシリーズ『ライオン・キングのティモンとプンバァ』(95~96)をはじめ、オリジナルビデオ作品『スティッチ!ザ・ムービー』(03)、テレビ映画『リロイ&スティッチ』(06)など、数多くのアニメーション作品で脚本/プロデューサー/監督を担当。今作のテーマを決めるにあたっては、主人公のダスティが「農薬散布機」であることに着目し、そのルーツを調査したという。

ボブス・ガナウェイ(監督/共同脚本)、フェレル・バロン(プロデューサー)
ボブス・ガナウェイ(監督/共同脚本)、フェレル・バロン(プロデューサー)
「農薬散布のために使われている飛行機は、空からの消火作業にも使われているんだ。『S.E.A.T.』として知られている。シングル・エンジン・エアー・タンカー(Single Engined Air Tanker)の頭文字を並べたものだ。それは、山火事の消火作業に使われるもっとも小さな飛行機なんだ。

また、僕らは、空から水を落として消火するためにカリフォルニアで初めて使われた飛行機が、農薬散布機だったことを発見した。それは、1955年の火事の時期に、消火用に再利用されたものだった。だから、2つのことが、この映画へとつながっていったわけだよ。1つは、飛行機そのものがそういう目的に使われていたこと。そして、2つ目は、このキャラクターには、農薬散布機が消防士であるというレガシー、歴史があるということだよ」(ボブス・ガナウェイ監督)

アクション・アドベンチャー『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
アクション・アドベンチャー『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』
作品のビジュアル面の基盤となる「ストーリーボード」
作品のビジュアル面の基盤となる「ストーリーボード」
そうして「消防」をキーワードとした勇気と友情の物語、という全体像に行き着いた。もちろん、前作を見たファンの存在も強く意識したという。

「一作目のキャラクターやある瞬間を、模倣したり繰り返したりしないように気をつけた。僕らがいつもやることがあるんだ。もし、もう一作映画を作るとすると、ジャンルを変えるんだよ。そうすれば、前の映画を模倣するようなことは少なくなる。山火事の中にいるキャラクターということで、今作はもっとディザスター映画や、アクション映画といったものになった。違うジャンルということで、僕らはまず、ルックを変えたんだ」(ボブス・ガナウェイ監督)

十分な「信頼関係」がチームを形作る

このディズニートゥーン・スタジオには、スタジオで働く監督やプロデューサー、ストーリー担当達で構成された「ストーリー・トラスト」というユニットがあり、皆で意見を交わし、助け合いながら作品づくりに取り組む。これは2007年に同スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したジョン・ラセター氏が、ピクサーから持ち込んだやり方であり、スタジオ全体の「協力的な雰囲気」を生み出した。

「ジョンはピクサーと(『アナと雪の女王』などの)ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ、そして僕らのスタジオをみている。そして、それぞれのスタジオは違う。でも、すでに効果的だということが証明されている仕事のやり方がある。つまり、密にコラボレーションをするというやり方で、みんなが一緒に仕事をし、お互い率直に意見を言い合うということだね。

それは、ピクサーではとてもうまくいっている。彼がチーフ・クリエイティブ・オフィサーになった時、彼はそのベストのやり方を、ディズニートゥーン・スタジオに持って来ることが出来た。でも、そういうみんなで協力しあって作るという経験は、成熟するのに時間がかかる。いろんな違う人々と仕事をするわけだから、気楽にお互いの意見を分かち合うにはしばらく時間がかかるわけだ。ただ魔法のように、すぐにいい相性が生まれる、というふうにはいかない。時間をかけて徐々に進化してきたんだよ」(ボブス・ガナウェイ監督)

米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」外観
米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」外観
米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」
米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」
米ハリウッド「ディズニートゥーン・スタジオ」
制作期間は実に4年以上。その中で、いくつものセクションに分かれた900人超のクリエイター達と関わり、1つの作品を作る。気の遠くなる話だが、チームワークを保つために特に意識したことは?

「チームを作り上げる上で最も大切なのは、十分な信頼関係を築くことだと思う。この映画の製作には、900人もの人々が関わっている。さまざまなクラフトを手がけるグループを集めて、アニメーション映画を作るんだ。だから、上から下まで、彼らがやっていることを信頼したい。

ボブスと僕は、彼ら全員を見ている。ボブスはクリエイティブ・サイドを、僕はプロダクション・サイドをね。でも、彼らはみんな、自分の仕事をどうすれば良く出来るか、僕らよりもよくわかっているはずなんだ。だから最終的には、今作を作るにあたって彼らがやっていることは、彼らに任せるべきなんだ。そうすることによって、自然にチームが出来上がる。僕らが彼らを信頼し、同様に彼らも僕らを信頼しているということがわかっていれば、みんなでずっと良い仕事が出来るんだよ」(フェレル・バロン プロデューサー)

ビリヤードやゲームを楽しめるリフレッシュスペースもある
ビリヤードやゲームを楽しめるリフレッシュスペースもある
遊び心あふれるオフィス
遊び心あふれるオフィス
同じ志を持つ仲間との信頼関係。それは今作で描かれるテーマにも通ずる。最後に、「クリエイティブな作品を生み出す環境に必要な条件」を2人に聞いた。

「恐怖心から仕事をしない、ということだよ。僕らには、いろいろ試してみて、失敗し、また試して、失敗から学ぶことを支えてくれる素晴らしい、クリエイティブなリーダーシップがある。だから、リスクをおかすのが恐くて、模倣したようなものを作ってしまう、ということがないんだ。

リスクをおかすことは奨励される。クリエイティブに押し進めることは奨励される。ジョンたちの素晴らしいクリエイティブ・サポートによって運営されている環境があるから、僕らは協力しあって仕事を出来るし、ヘルプを求めることが出来るんだ。全体は、それぞれの部分を足したものよりも大きい、とか言うんだったっけ?(笑)。つまり、何か新しいものを作り出すには、みんなが一緒に仕事を出来るようにしないといけない、ということだよ」(ボブス・ガナウェイ監督)

ボブス・ガナウェイ(監督/共同脚本)、フェレル・バロン(プロデューサー)
「さっきも言ったように、僕らは、僕らの下で働いている人々を信頼している。でも、ウォルト・ディズニー・カンパニーは、映画を作る手段を僕らに任せている。それは大きな責任だよ。

彼らはクリエイティブ面、そしてプロダクション面において、僕らが最終的にちゃんと映画を作って届けることを信頼してくれていて、口出しをしない。彼らは映画を作ることを僕らに任せてくれている。そういう信頼があることは、作品作りに大きな情熱をもたらしてくれるんだ」(フェレル・バロン プロデューサー)

(モデルプレス)

「プレーンズ2/ファイアー&レスキュー」

2014年7月19日(土)ロードショー
<ストーリー>
レスキュー隊員になったばかりのダスティの武器は、チームワークと勇気。ある日、大規模な山火事が発生し、ダスティと仲間たちは絶体絶命の状況の中、命懸けの救出へ向かうが…。大型飛行機、ヘリコプター、パラシュート隊の車など個性的で愉快な“働く乗り物”キャラクターの活躍や、実写さながらの手に汗握るレスキュー・シーンは必見!「アナと雪の女王」のディズニーが贈る、この夏最高のアクション・アドベンチャー!

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