リスク増? リスク減? 真逆の情報に戸惑う患者さんも……関節リウマチとコーヒーの関係
【薬学部教授が解説】関節リウマチとコーヒーに関係はあるのでしょうか? 「発症リスクに関連する可能性がある」という報告もあれば、「影響しない」という報告もあり、多くの研究において結論は一致していません。分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)
関節リウマチとは? 女性に多い理由と自己免疫のしくみ
関節リウマチは「自己免疫疾患」の1つです。本来、細菌やウイルスなどの異物を排除するはずの免疫システムが破綻し、自分の体を攻撃してしまうことで発症します。主に関節に炎症が起こり、患部が赤く腫れ上がります。特に関節の内側を覆う「滑膜」と呼ばれる部分が侵され、強い痛みを伴うことが特徴です。進行すると骨や軟骨の破壊が起こってしまいます。
関節リウマチの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因が約30%、環境的要因が約70%関与していると考えられています。環境的要因として挙げられるのは、感染、ストレス、過労や、出産などに伴うホルモンバランスの変化、外傷、喫煙などです。喫煙以外にも、食事や飲料がどのように影響するかについて研究が進められています。
また、関節リウマチは全患者のおよそ70%が女性です。性差が大きい理由はまだ解明されていませんが、女性ホルモンと何かしらの関係があると考えられています。比較的高齢で、女性ホルモンが低下する閉経後の女性に多いことや、女性ホルモンレベルが高くなる妊娠中に症状が改善することがある点も、女性ホルモンとの関連性を示唆しています。
関節リウマチの人は飲んではいけない? コーヒーと関節リウマチの関係
先日、関節リウマチを悪化させたくない方から、「コーヒーは飲まないほうがいいのか」との質問がありました。コーヒーは関節リウマチに悪いという話を聞き、不安になられたようです。一方で、「関節リウマチ予防に効果があると聞いた」と、毎日コーヒーを飲むようにしている方もいるようです。
コーヒーは、世界中で親しまれている飲み物であり、関節リウマチとの関係についてもさまざまな研究が行われています。しかし結論を先に述べると、現状ではよいとも悪いとも断言できません。
例えば、2022年にイランのテヘラン大学の研究チームが学術誌『Frontiers in Nutrition』に発表した調査(Front Nutr. 9: 822557)では、カフェインを含む通常のコーヒーは関節リウマチの発症リスクに影響しないと報告されました。
一方で、意外なことにデカフェのコーヒーを飲んでいた人では発症リスクが高くなったというデータが示されています。コーヒーそのものではなく、カフェイン除去の過程で用いられる薬品が関係しているのではないかと考察されています。
また同じく2022年、イタリアの東ピエモンテ大学の研究チームが『Nutrients』(14巻8号: 1554)に発表した研究では、1日1~2杯のカフェイン入りコーヒー摂取が発症リスクを低下させる可能性が示されました。
その一方で、2023年にフランスのパリ=サクレー大学の研究チームが『Rheumatology(Oxford)』(62巻5号: 1814)に発表した調査では、1日3.5杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲む人で発症リスクが高いというデータも示されています。
他にも多くの報告がありますが、このように研究結果は一致しておらず、「まったく影響はない」とする報告も少なくありません。
結局どう考えるべき? 関節リウマチとコーヒーの上手な付き合い方
明言はできませんが、現時点では、「コーヒーが関節リウマチに大きな影響を与えるとは言えない」と考えてよいでしょう。関節リウマチの発症には、遺伝やホルモン、生活習慣など、さまざまな要因が複雑に関与しています。そのため、コーヒーを飲むか飲まないかだけを過度に気にしても、あまり意味がないと考えられます。
そして、ストレスも関節リウマチの環境的要因の1つです。コーヒーが好きなのに我慢したり、逆に嫌いなのに無理をして飲んだりするほうが、ストレスにつながってしまう可能性があります。必要以上に神経質にならず、日常の楽しみとして嗜むのが現実的でしょう。
すでに関節リウマチを発症していて不安が大きい場合は、主治医にも相談しながら、日常生活を上手に工夫していきましょう。
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)
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