「おばさんがダンスなんて痛い」陰口を笑って迎えた発表会当日、舞台袖で私は動けなくなった
先に始めたはずの私が、追い越されていた
私が彼女をダンス教室に誘ったのは、3年前のことでした。当時、私は教室に通って2年経っていて、ようやくセンターの位置で踊らせてもらえるようになっていたのです。
新しいメンバーとして来た彼女は、最初こそ振り付けに戸惑っていましたが、半年もすると驚くほど上達しました。楽しそうに踊る彼女に、先生が「動きがきれい」と声をかけている場面を、私は何度も見ていました。
私はずっと、自分の体型や年齢を気にしながら踊っていました。鏡の前で、自分にだけ厳しい目を向け続けていたのです。
休憩室で、私は確かにそう言った
発表会まで2週間という日、私は他のメンバー2人と休憩室で雑談していました。話題は「最近の教室の雰囲気」でしたが、内心、私は彼女のことばかり考えていたのです。
誘ったのは私なのに、いまや先生からの注目を集めているのは彼女のほうでした。気がつくと、私は「正直、おばさんがダンスなんて痛い」と口にしていました。誰のことを名指ししたわけではありません。
でも、その場の3人は誰のことを言っているか、わかっていたと思います。言ったあと、薄ら笑いをした自分の顔が、鏡の隅に映っていました。
舞台袖から見た、客席の景色
発表会当日、私は彼女が更衣室に早めに入っていたことに気づいていました。あの会話を聞かれたかもしれない。そう思いながら、舞台袖で衣装を整える彼女のそばを通った私は、つい「やっぱり、ちょっと浮いてるよね」と漏らしてしまったのです。
出番が来て、彼女がステージに立ちました。私の出番はその次だったので、舞台袖から客席をのぞいていました。そのとき、客席の真ん中あたりから、はっきりした子どもの声が響いたのです。
「ママ、最高だよ!」彼女の小学生の娘さんでした。
そして...
子どもの声に、客席から小さな笑いと温かい拍手が広がっていきました。舞台の上で、彼女の表情がふっと和らぐのが見えました。私は袖から見つめながら、自分が彼女に何を投げつけてしまったのかを、ようやく直視しました。
出番を終えて袖に戻った彼女が、私に穏やかな声で「ありがとう。続けようと思う」とだけ告げました。責めるでもなく、ただ確かに芯が通った声でした。
家に帰った私は、鏡の前で自分の体を見つめました。彼女を笑った私は、自分の人生で何ひとつ挑戦してこなかったのだと、ようやく思い知ったのです。
(30代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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