「おばさんがダンスなんて痛い」と言われた私→発表会で娘が放った一言
休憩室から聞こえた声
私がダンスを始めたのは、40歳になった年の春でした。出産後、体力が落ちていく自分が嫌で、何か続けられる運動をと思っていたところ、子どもの保育園が同じだったママ友に「一緒に行ってみない?」と声をかけられたのがきっかけです。
最初は振り付けを覚えるのも必死でしたが、教室の先生は丁寧で、同世代の主婦さんも何人かいて、楽しく続けられました。
発表会まで2週間というある日、私は早めに更衣室に入って着替えていました。すると、隣の休憩スペースから、こんな声が聞こえてきたのです。
「正直、おばさんがダンスなんて痛い」続いて、同調する笑い声が起きました。
40代の私を含む「痛い」だった
声の主は、私を誘ってくれた、あのママ友でした。誰のことを話しているのかは、すぐにわかりました。私のほかにも、40代でレッスンを楽しんでいる方は何人かいます。けれど、文脈や名前の挙がり方から、その「痛い」に私が含まれていることは明らかだったのです。
帰り道、ペダルを漕ぐ足が重く、声をかけられても薄く笑い返すのが精いっぱいでした。何のために続けてきたのだろう。下手な人がいると、隣で踊る人まで巻き込んで恥ずかしいのかもしれない。
発表会を辞退することも考えました。でも、娘に「今度、ママ踊るの見てね」と約束してしまっていたのです。
舞台で踊る私に届いた、まっすぐな声
発表会当日、舞台袖で衣装を直していると、あのママ友が私の前を通り過ぎながら小さく言いました。「やっぱり、ちょっと浮いてるよね」曖昧にうなずくしかないまま、出番が来ました。
客席の照明が落ち、音楽が始まります。覚えた振り付けを、ただ正確になぞるだけで精いっぱいでした。そのとき、客席の真ん中あたりから、まっすぐ届いた声がありました。
「ママ、最高だよ!」
それは間違いなく、9歳の娘の声でした。続けて、近くの席から小さな笑いと、温かい拍手が起きるのが分かりました。
そして...
演技を終えて舞台袖に戻ると、ママ友が黙ってこちらを見ていました。私はあえて穏やかに「ありがとう。続けようと思う」と声をかけました。
痛いと言われた40代の私を、「最高」と言ってくれた人がいる。それで十分だったのです。
翌週、私はいつもの時間にダンス教室に向かいました。鏡の前に立った自分の姿が、以前より少しだけまっすぐに見えた気がします。誰かの目に痛く映ろうと、娘に見せられる背中であるなら、それでいいのだと思えるようになりました。
(40代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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