「おばあちゃんの家なんか行きたくない」と玄関でこぼした中3の娘が、帰りの電車で握りしめていた小さな紙袋
玄関でこぼれた本音
駅から歩いて10分の義母の家。チャイムを鳴らすと、義母の声で「鍵開いてるよ」と返事が返ってきました。引き戸を開け、靴を脱ぎ始めた娘が、私だけに聞こえるような声でぼそりとつぶやきました。「おばあちゃんの家なんか行きたくない」
廊下の奥からは、義母のスリッパの音がゆっくり近づいてきていました。義母は台所から出迎えに歩いてきていたところだったようです。「来てくれてありがとうね。ご飯、たくさん作ったから食べてね」義母はいつもの柔らかい笑顔でした。けれど私には、その笑顔がいつもより少しだけ作り物に見えました。気のせいかもしれません。それでも玄関を入ってからしばらく、義母の目が娘を見ているのに、娘は義母と目を合わせませんでした。
空回りする時間
食卓には、娘の好きな唐揚げと、義母お手製のポテトサラダ、季節の煮物が並んでいました。前回娘が「美味しい」と言った卵焼きまで、おかわり用に大皿で用意されています。けれど娘は、唐揚げを2個食べたあと「お腹いっぱい」と箸を置いてしまいました。義母が「アルバム見る?」と古い写真を持ってきても、娘は「いや、いい」と短く返すだけ。スマホに視線を落として、画面をスクロールし続けていました。私は何度も「ありがとう、お義母さん」と言葉を挟みましたが、空回りしている感覚は消えませんでした。
玄関で渡された小さな紙袋
夕方になり、帰り支度を始めました。義母は玄関で見送りながら、ふと思い出したように小さな紙袋を取り出しました。淡い水色の紙袋で、上のほうに細い紐の結び目が見えました。「これ、お土産。家で開けてね」そう言って、義母は娘の手にそっと握らせました。娘は受け取ったまま、何も言わずにうなずきました。「ありがとうございます」と私が代わりに頭を下げると、義母は笑顔でうなずいてくれました。帰りの電車に乗ってから、娘がその紙袋をずっと握りしめていることに私は気づきました。
そして...
「お母さん、これ……」。娘が窓際の席で紙袋を私に差し出しました。中から出てきたのは、淡い藤色の合格祈願の御守り。そして二つ折りのメモ。広げると、丁寧なペン字でひとことありました。「むりしすぎないでね。おばあちゃんも、毎日応援しています」。娘は私の顔を見ずに、窓の外を見ながらつぶやきました。「あの神社、電車で2時間かかるって、お父さんが言ってた」。 玄関でこぼした本音と、握りしめていた紙袋。どちらも娘の本当の気持ちなのかもしれない、と思いました。電車のなかで、明日義母に電話をしようと心に決めました。あの御守りのことについて、ありがとう、と伝えたいから。
(40代女性・パート)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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