大好きな映画のチケットを彼が『一枚だけ』。私を置いていくつもりなんだと思った話
映り込んだ一枚のチケット
彼の部屋でくつろいでいたとき、テーブルのスマホがふっと明るくなりました。画面に出ていたのは、私がずっと公開を待っていた映画の、チケット購入完了の通知です。学生の頃から大好きで、彼にも何度も語ってきた作品でした。やっと一緒に観られると、心のどこかで当たり前のように思っていたのです。ところがそこに表示されていた枚数は、二枚ではなく一枚でした。何かの間違いかもしれない。そう思おうとしても、その表示が頭から離れませんでした。
『一枚だけ』という答え
平静を装って、私は彼に尋ねました。「ずっと楽しみにしてたあの映画、チケットもう取ったの?」。彼は少し間を置いてから、「うん、取った。一枚だけ」と答えました。一枚だけ。やっぱり、と思いながら、私は続けて「一枚だけ?私の分は?」と聞きました。
けれど彼はこちらを見ようとせず、「ごめん。今は聞かないでほしい」とだけ言いました。聞かないでほしい、とはどういうことだろう。私は彼の横顔を見つめたまま、次の言葉を探していました。一緒に行こうとも、別々に行こうとも言わない。ただ、私の一番好きなものから、そっと締め出されたような心地がしたのです。
分かち合えないのだろうか
家に帰っても、あの「一枚だけ」が耳に残っていました。付き合って一年、彼が私の好きなものに興味を示してくれたことは、正直あまりなかったように思います。前に二人で映画を観たときも、彼はどこか上の空でした。だからこそ、この作品だけは一緒に観たかった。私が大切にしてきたものを、彼にも知ってほしかったのです。それなのに、彼は一人分のチケットだけを手に、何も説明してくれませんでした。好きなものを分かち合えない相手と、これからどう歩いていけばいいのだろう。答えの出ない問いばかりが、ぐるぐると回っていました。
そして...
結局、私はそれ以上聞けないままです。問い詰めれば、きっと答えは返ってきたのだと思います。でも、それで出てくる言葉が怖かったのかもしれません。
彼が一枚のチケットに込めた意味を、私はまだ知りません。ただ、これだけ気持ちが揺れるのは、彼との時間を手放したくないからだと、自分でも気づいていました。次に会えたら、今度はちゃんと聞いてみようと思います。私の大好きなものの話を、彼の口からも聞きたいから。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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