「何もいらない」が口癖の俺→当日プレゼントなしの誕生日に、本音を漏らした結果
いつもの答え
ある夜、彼女からメッセージが届きました。「誕生日、何が欲しい?」と。即答で「何もいらないよ」と返したのは、いつもの癖のようなものです。実家でも友人にも、誕生日に何かをねだったことはほとんどありません。
「本当に?」と続けて聞かれたとき、ほんの少しだけ心がざわつきました。けれど「うん」と短く返してしまったのは、ここで「あれが欲しい」と言うのが急に気恥ずかしくなったからです。
誕生日当日は彼女と家で過ごす予定。それだけで十分だと、自分に言い聞かせた気もします。返信を送ったあと、なぜか妙にスマホを見つめる時間が長くなりました。
「ケーキだけ?」と言った自分
誕生日当日の夜、彼女がうちに来ました。玄関で手渡されたのはチーズケーキの箱です。「これ、好きなやつ買ってきたよ。お誕生日おめでとう」と笑う彼女に、俺は「ありがとう」と返しながら、無意識に「ケーキだけ?」と口にしてしまいました。
言ってから後悔しました。何もいらないと言ったのは自分のはずです。それでも、心のどこかで「でも何か用意してくれるかもしれない」と思っていた自分がいたのです。食卓を囲んでも、その違和感が消えませんでした。せっかく彼女が来てくれているのに、会話に集中できず、相槌ばかりが増えていきました。
口癖の正体
食事の終わりごろ、彼女が真剣な表情で「何かあった?気に障ること、しちゃったかな」と聞いてきました。隠そうとしたけれど、口が勝手に動きました。「いや……正直、ちょっとは期待してた」。
彼女は少し驚いた顔で「でも、何もいらないって自分で言ったよね?」と返しました。返す言葉がありません。「うん、わかってる。俺の口癖なんだよな。気持ちだけでいいって言うのが」と、自分でも初めて気づいたことを口にしました。彼女は一度部屋を出ると、新品のボールペンを持って戻ってきて、俺に差し出してくれました。シンプルで、いかにも俺が好きそうな一本でした。
そして...
「これ、よかったら使って。誕生日プレゼント、ちゃんと用意できなくてごめんね」。そう言って彼女が差し出したペンを、俺は「ありがとう」と受け取りました。
「気持ちだけでいい」「何もいらない」。俺はずっとそう答えてきました。でもそれは謙虚な姿勢ではなく、欲しいと口にするのが怖かっただけだったのかもしれません。期待を口に出して、それが叶わなかったときに傷つくのが嫌だった。だから先回りして「いらない」と言ってしまう。来年こそ、ちゃんと「あれが欲しい」と言える自分でいたいと思います。ペンを握りながら、それが彼女への、いちばんの誠実さなのかもしれないと思いました。
(20代男性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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