新築のシングルマザー宅を陰で噂し続けた私が、町内会で本人の口から聞いた現実
ふと湧いてしまった、小さな疑念
向かいに越してきた女性は、3年前にご主人を亡くしたシングルマザーだと聞いていました。可愛らしい娘さんと二人で、私たちの町内会の真ん中に、おしゃれな新築の戸建てを建てて引っ越してきたのです。
最初は「大変ね、頑張ってね」と素直に応援する気持ちでした。けれど、家の前に停まっている車は新しめのSUVで、子どもさんの服装も身ぎれい、家のインテリアも雑誌に出てきそうな雰囲気。同じ住宅地に暮らす私の暮らしと比べて、明らかに余裕がありました。
「母子家庭なのに、どうしてこんな家が建てられるんだろう」。一度浮かんだ疑問は、頭の隅から離れなくなりました。
仲間内で広がっていった噂
何人かの仲のいいご近所さんに、ふとした雑談で「あの家、不思議だよね」と話してみました。すると、思った以上に同じ感覚を持っていた人がいたのです。
「私もずっと気になってた」「いつも家にいるみたいだし、お仕事してるのかしら」「もしかして、誰かが援助してるんじゃない?」。話はあっという間に膨らみ、いつのまにか「母子家庭なのに新築って何か裏がある」というのが、私たちの間の共通認識になっていきました。
噂が子どもたちの耳にまで届いていることに、私は気づいていませんでした。自分の子どもが、何気ない場面で「あの家は何かあるんでしょ?」と口にしてしまっていることを、後から知ったのです。
町内会で投げかけた、あの質問
月例会の日、私は思い切って本人に尋ねてみることにしました。みんなも知りたがっている、代表して聞いてあげようくらいの、軽い気持ちでした。
「ちょっと聞きづらいんですけど、お仕事は何をされているんですか?」
すると彼女は、手元の資料をそっと置いて、私のほうに向き直りました。「ITのコンサルタントをしています。在宅で、自分で会社をやっているんです」。
続けて彼女は、こう言いました。「夫が遺してくれた保険金には、手をつけていないんです。あれは、娘の進学のために残してあるので。今の暮らしは、すべて私の仕事のお金で成り立っています」
集会所の中の空気が、変わりました。
そして…
帰り道、私はずっとうつむいていました。自分が、こんなにも浅はかな決めつけをしていたなんて。彼女は黙々と仕事をして、娘さんを育てて、亡くなったご主人の遺してくれたものまで守って暮らしていたのです。それを「裏がある」と言って噂していたのは、ほかでもない私自身でした。
翌日、彼女の家のインターホンを押して、頭を下げました。彼女は「気にしていませんから」と微笑んでくれました。その穏やかさが、かえって自分の小ささを突きつけてくるようでした。
私たちが「裏」だと決めつけたものの正体は、彼女が積み上げてきた努力でした。その事実を、私はずっと忘れずにいようと思います。
(40代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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