「実は私も悩んでて」と打ち明けるつもりだった私が、友人のカメラロールで自分の嘘に気付いた話
打ち明けるつもりで投げた話題
平日の夜、駅前のカフェで大学時代の友人と向かい合っていました。会うのは半年ぶり。本当はこの日、私のほうから話したいことがあったのです。最近、夫との関係がぎくしゃくしていて、新居の住宅ローンも思っていたより重く、SNSに載せている景色とはまるで違う毎日を抱えていました。
ひとりで抱えるのが限界で、友人に打ち明けたかった。でも、すぐに切り出す勇気はありません。私はコーヒーが半分くらいになったタイミングで、呼び水のつもりで切り出しました。「SNSでキラキラしてるけど実際どうなの?」。友人が「実は私も悩んでて」と言ってくれたら、私も話せると思っていたのです。
差し出された画面に並んでいたもの
ところが友人は、少し戸惑った顔をしたあと、こう言いました。「見せようか」。差し出されたスマホの画面には、私が一度もSNSで見たことのない景色が並んでいました。作り置きのお弁当のおかず、洗濯物が山積みになったソファ、終電前のオフィス、ピントの甘い猫、コンビニのパン。「SNSは月に2、3枚のいい瞬間の集まり。あとの300枚はこれ」笑いながらそう言う友人を、私はうまく見ることができませんでした。私のスマホのカメラロールには、こんな写真は1枚もありません。撮ったとしても、すぐに消してしまいます。SNSに載らない毎日まで、私はずっと「載るに値する」形に整えてきたのです。
「画面の裏側」を持っていたのは私のほうだった
画面を見つめながら気付きました。友人の本当は、SNSのキラキラから少しはみ出ただけの、地続きの毎日でした。一方で、私の本当は、SNSのキラキラからはるか遠いところにある別の景色です。本当に「画面の裏側」を抱えていたのは、聞かれた友人ではなく、聞いた私のほうでした。「私、本当のあなたを知らなかったんだね」。気付いたら、そんな言葉が漏れていました。声の裏側に、自分自身に向けたつぶやきが混じっていたのは、たぶん友人には気付かれていません。打ち明けようと思って投げた話題が、いつの間にか自分の正体をすくい上げる網になっていました。
そして...
カフェを出て10分ほど歩き、駅のホームで電車を待ちながら、友人に短いメッセージを送りました。「今度から本当の話もしようよ」。書きながら気付いたのは、私が一度も友人と本当の話をしてこなかったということでした。友人のカメラロールにあったあの写真の一枚一枚は、私からすれば「自慢にもならない毎日」かもしれません。
でも、誰かに見せられる真実を持っていることが、いまの私にはどれほど大事なものか、わかってしまったのです。次に会うときは、私のほうから「実は」と切り出してみようと思います。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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