「最近の若い子は席も譲れない」と言われた朝、本当は熱があった私が立ち上がった話
目を閉じていた朝の電車
朝、目覚ましの音で起きた瞬間から、頭が重く熱っぽさを感じていました。それでも休むほどではないと思い、いつもの通勤電車に乗り込みました。なんとか座席に座れた私は、目を閉じて発車を待ちました。次の駅で人がたくさん乗ってくる前に、少しでも体力を温存したかったのです。電車が動き出してからも、目を開ける気力がありませんでした。額の汗をハンカチで押さえながら、降車駅まで持ちこたえることだけを考えていました。
頭の上から降ってきた一言
3つ目の駅に止まった時でした。ふと、自分の前に誰かが立った気配を感じました。けれどそれを確認するために目を開けるのも、つらかったのです。そのまま十数秒が経った頃、頭の上から声が降ってきました。 「最近の若い子は席も譲れないのね」 聞こえるように、わざと言われた一言でした。私はとっさに目を開けて、慌てて立ち上がりました。目の前にはお年寄りの女性。 「すみません、気づかなくて」 そう言って席を空けました。女性は無言のまま、ゆっくり腰を下ろしました。
ドア際で揺れる30分
譲った席の前に立っているのは気まずく、私はそのままドア付近まで移動して、つり革に掴まりました。電車の揺れに合わせて視界がぼやけていきます。頭の中では、譲るのが当たり前という気持ちと、ひとこと声をかけてくれてもよかったのにという気持ちがぐるぐる回っていました。本当に気づかなかっただけなのに。今日はずっと立っていられないかもしれないのに。それでも、譲ったことは間違っていないと自分に言い聞かせました。降車駅までの30分が、いつもの倍くらいに長く感じました。
そして...
ようやく降車駅に着き、ふらつきながらホームに降りました。改札に向かおうとしたとき、後ろから「あの」と呼びかけられました。振り返ると、さっきのお年寄りの女性が立っていました。 「こっちこそごめんね」 そう言って、深く頭を下げてくれたのです。私は「いえ……」と返すのが精一杯でした。譲ってよかった、と思いました。同時に、あの一言がなければ、私はもっと素直にうなずけたのに、とも思いました。譲るのも、譲ってもらうのも、ひとことの掛け方ひとつで気持ちが変わってしまうのだと、改めて気づいた朝でした。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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