料理一つでキレた妻を父さんと母さんに通報した俺→妻が見せた写真3枚で立場が逆転した話
仕事帰りの最悪な機嫌
あの日、仕事で大きな失敗をしました。上司に怒鳴られ、後輩には舌打ちされ、頭を下げ続けた一日に苛立ちが収まりませんでした。玄関を開けると、煮物の匂いがしました。妻が作ってくれた夕食です。普段なら好物のはずなのに、その日は「こんなものか」としか思えませんでした。
誰かに当たりたかった、というのが正直なところです。椅子に座ると、口から「こんなの食えるか」と勝手に言葉が出ていました。妻が作ってくれた料理を、俺は手で払いのけたのです。煮物が床に散らばり、茶碗が転がりました。妻が立ちすくんでいる横で、俺はすでにスマホを構えていました。
父さんと母さんに「通報」した俺
ビデオ通話に父さんと母さんが出ると、俺は早口で「父さん、母さん、聞いてくれよ。料理一つで嫁がキレてさ」と話し始めました。床に散らばった煮物のことには触れませんでした。カメラを妻に向けて「ほら、こいつだよ」と言うと、父さんが「夫に向かってその態度はないだろう」と返してきました。母さんも「料理くらいで怒鳴るなんて、嫁としてどうなの」と続きます。
俺は心の中で勝った気でいました。職場で減ったプライドを、家で取り戻したかったのだと思います。妻はまだ一言も声を荒らげていませんでした。それなのに、画面の向こうではもう「キレた嫁」の話が出来上がっていました。
妻が見せた3枚の写真
妻が俺の手からスマホを取り、カメラを床に向けたとき、画面の向こうで父さんと母さんの表情がこわばりました。「義父さん、義母さん。これを見てください」と妻はそっと言いました。「私が作ったご飯です。息子さんが手で払いました」。続けて妻はアルバムから写真を画面に近づけました。割れた皿、ひっくり返った鍋、踏み潰されたサラダ。「これは先月、これは2週間前、これは先週です。ずっと我慢してきました」。父さんの視線が、ゆっくりと俺のほうへ移ってきました。子どもの頃に何度も浴びた、あの目でした。「お前、何やってるんだ」。低くて重い声でした。母さんは「嫁子さん、ごめんなさい。私たち、息子の言うことだけを聞いていました」と頭を下げていました。俺は床のシミから目を外せませんでした。
そして...
その夜、父さんと母さんは家まで来ました。床に膝をついて一緒に煮物を片付けながら、父さんは「これは俺の悪い癖だ。お前に移ったのは、俺が直してこなかったせいだ」とぽつりと言いました。横で聞いていた母さんが「私もずっと、同じことをされていたの」と妻のほうを見ました。覚えていない自分が、いつの間にか父さんと同じことをしていました。
俺はその夜、まず父さんと母さんに頭を下げました。妻にはまだ、ちゃんと顔を上げて謝れていません。許してくれと言える立場ではないと、ようやくわかったからです。妻が床にしゃがんで煮物を拭く後ろ姿を、これからは見ないで済むように。それだけのことを、俺はこの歳になってやっと自分に約束しました。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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