「比べてない」と答えるまで10分かかった理由を、彼女には言えなかった
なんでもないはずのメッセージ
平日の夜、自宅でくつろいでいると、彼女からメッセージが届きました。
「私と元カノどっちが可愛い?」
軽い文面でした。本当ならすぐに「君に決まってるじゃん」と返せばよかったのだと、今ならわかります。
でも、その瞬間、頭の中の時間がほんの一瞬、止まったような気がしました。比較系の質問は地雷だ、と過去の経験で知っていたからです。
文字だけのやりとりだからこそ、軽い絵文字付きで流すこともできたはず。なのに、軽く返してしまったら不誠実な気がして、一度ちゃんと考えてから返信しようと思ったのです。
既読をつけてから10分、頭の中で起きていたこと
画面に表示された彼女のメッセージに、既読だけをつけて、僕はベッドに腰かけて天井を見上げていました。
頭の中で彼女からの質問がぐるぐると回り続けていました。可愛いって、何を基準に。顔。雰囲気。一緒にいる時間の心地よさ。
正直に書くと、10分の最初の数分、ふと元カノの顔が頭をよぎった瞬間がありました。比べてしまった、というほどではない。ただ「思い出した」というだけ。
それでも、自分の中で「比べてない」と言いきっていいのか、急にわからなくなったのです。彼女に対して誠実でいたいからこそ、軽く嘘をつくこともしたくありませんでした。
送った答えは「比べてない」だった
最終的に、僕は「......比べてない」と打ち込んで送信しました。それは嘘ではありません。彼女の方が可愛い、元カノの方が可愛い、という比較の中に彼女を置いていない、という意味でした。
けれど彼女からは、「ずるい」とだけ返ってきました。
その瞬間、自分の答えが、彼女が欲しかった答えではなかったのだと気づきました。彼女が聞きたかったのは「比べたうえでの一位の宣言」だった。僕が出したのは「土俵から下ろす」答え。「比べてない」は嘘ではない。
けれど、彼女が欲しかったのはまったく違う種類の言葉だったのです。
そして...
僕は「ごめん」とだけ送って、それ以上のメッセージは送ることができませんでした。10分かけて選んだ答えが彼女を傷つけたという事実を、文章でどう説明しても言い訳になる気がしたからです。
翌朝、彼女から「昨日はごめん、聞き方がよくなかった」とメッセージが届きました。違う、と思いました。聞き方の問題じゃない。10分も既読をつけたまま黙りこくっていた僕の方が、よっぽど不器用だった。
次に同じ質問をされたら、迷わず「君が一番だよ」と返せる男になりたい。比べていないという答えが正しくても、彼女が欲しい言葉とは違うこともある。
あの夜の10分の沈黙を、ちゃんと言葉に変えていける関係になっていきたいと思っています。
(20代男性・IT系会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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