「正直に言うと、俺はたぶんまた立ち直ると思う」1時間かけて彼女に嘘のない返事をした話
寝る前に届いた一通
日曜の夜、布団に入る前にスマホを確認するのが、僕の習慣です。明日からまた仕事だ、と思いながら画面を眺めていたとき、彼女からの通知が届きました。
「ねえ、私がいなくなったらどうする?」
最初に思ったのは、軽い質問だな、ということでした。彼女は時々、こうした問いをかけてきます。普段なら数秒で「絶対に泣くね」とか、軽く返せていたはずです。
ところがその夜だけは、なぜか返信の言葉が出てきませんでした。画面に映る彼女のメッセージを、何度も読み返していました。
書いては消した1時間
「絶対に忘れない」と打ちかけて、削除しました。「立ち直れないと思う」と書いては、また消しました。どれも、自分の中で本当のことだとは思えなかったのです。
実は数年前、当時付き合っていた人と別れたとき、思っていたより早く、また普通に生活が回り始めた経験がありました。最初の数週間は確かに苦しかった。でも、半年も経った頃には、もう新しい毎日に馴染んでいたのです。
その記憶が、ずっと自分の中で消化しきれずに残っていました。自分は人を本気で好きになれない、薄情な人間なんじゃないか。そんな疑いを、誰にも言えないまま抱えていたのだと思います。
彼女の質問は軽いはずでした。それなのに、画面と向き合った時間は気づけば30分を超え、40分が経ち、それでも答えは見つからないままでした。
嘘のない返事
書きあぐねた末、僕は決めました。嘘で彼女を安心させるのは、結局、自分が薄情だと認めたくないだけのごまかしだ。だったら、本当のことを書こう。
「ごめん、すぐ答えられなくて。」と打ち始めました。「正直に言うと、俺はたぶんまた立ち直ると思う」書いた瞬間、本当にこれを送っていいのか、と何度も迷いました。
でも、その続きを書き足しました。「でも、今君と過ごす時間を一日も無駄にしたくない」
送信ボタンを押すまでに、画面を何度も見直しました。送ってから数分、彼女からの返信は「ありがとう」のひとことだけでした。
嫌われたかもしれない、重すぎたかもしれない、と不安が膨らみました。布団に入っても、しばらく目を閉じることができませんでした。
そして...
翌朝、彼女から電話がありました。彼女が朝早くに電話してくることは、ほとんどありません。通話ボタンを押すまでに、少しためらってしまいました。
「昨日のメッセージ、ありがとう。正直に答えてくれて、それが一番嬉しかったの」
電話の向こうの彼女の声は、わずかに揺れているように聞こえました。「よかった」とだけ、僕は返しました。
長年抱えていた「薄情な人間なんじゃないか」という不安は、消えてなくなったわけではありません。でも、嘘で取り繕った愛じゃなくて、不器用な正直さで彼女と繋がれたという感覚が、確かに残っていました。
悩んだあの夜のことを、これからも忘れないと思います。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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